表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化・コミカライズ】偽聖女!? ミラの冒険譚 ~追放されましたが、実は最強なのでセカンドライフを楽しみます!~  作者: 櫻井みこと
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/121

30

 そして、翌朝。

「んっ……」

 ミラは目を覚ますと、横たわったまま手足を伸ばす。

 カーテンの隙間から見える太陽は、随分高い位置にある。少なくとも、昼近くなのはたしかだ。

「ちょっと、寝過ごしてしまったかしら……」

 ゆっくりと起き上がり、カーテンの隙間から窓の外を見つめる。すでに多くの人が、忙しそうに歩き回っていた。

 こんなにゆっくりと休んだのは、神殿を追い出されてから初めてのことかもしれない。信頼できる仲間が守ってくれていたとはいえ、野営ではぐっすりと眠ることは難しい。誰もいない隔離された空間を作ってくれたラウルに、今では感謝していた。

(ああ、でも彼は立て替えてくれているだけなのよね。一泊いくらなのかしら……)

 考えてみれば、働いてお金を得たこともないが、自分で買い物をしたこともない。この宿一泊の値段が、どれほどの労働となるのだろう。

(私は本当に、世間知らずだわ)

 こんな状態で、よく自分で支払うなどと言えたものだ。我ながら呆れてしまうが、知らないならこれから学べばいいと思い直す。

 ラウルが言っていた、疲れているときは余計なことを考えてしまうというのは、真実だった。

「うん、頑張ろう」

 声に出してそう言うと、ベッド際に置いておいた水を飲み、ラウルが渡してくれたパンと果物で朝食にすることにした。

 それからゆっくりと身支度を整えて、ラウルを待つ。

 しばらく町の様子などを興味深く見つめていると、慌ただしく扉が叩かれた。

「おい、大丈夫か?」

「ラウル?」

「ああ、俺だ」

 声は間違いなくラウルのものだ。すぐに扉を開けようとしたが、用心したほうがいいと思い直す。

「入って。ラウルなら、問題なく入れるはずだから」

「……」

 戸惑ったような気配を感じたが、そのうちゆっくりと扉が開かれて、ラウルが姿を現した。

「ごめんなさい、寝過ごしてしまったみたい」

 起きるのが遅くなってしまったことを詫びると、ラウルはやや警戒したような面持ちで、ミラを見つめる。

「無事、のようだな」

「ええ。何かあったの?」

 確かめるような口調に、首を傾げる。

「ああ。部屋の鍵が壊されていた。それに気付いた宿の者が、お前の無事を確認しようとしたが、扉は開いているのに何には入れなかったそうだ」

 鍵の壊れた扉は開いたのに、中の様子はまったく見えず、入ることもできない。困り果てた宿の者はラウルに連絡をして、それを聞いた彼は慌てて駆けつけてくれたようだ。

「そうだったの。ごめんなさい」

 事情を知り、ミラは謝罪する。

「結界を張っていたから、そのせいね。まさか、鍵が壊されてしまうなんて」

 咄嗟の判断だったが、結界を張っておいて本当によかった。

 自分の危機管理能力もなかなかのものだと思っていると、ラウルは訝しげにミラを見つめていた。

 何かおかしなことを言ってしまっただろうかと、首を傾げる。

「どうしたの?」

「部屋に、結界を張っていたのか?」

「ええ。一応、用心のために」

 頷くと、ラウルは考え込むような顔をした。

「俺だけが入れたのは?」

「そう設定したからよ」

「つまり、俺だけが入れるように設定して、結界を張った。そういうことか?」

 ミラはこくりと頷いた。

 ラウルは呆れたような視線で、そんなミラを見つめる。

「そんな結界を、寝ながらあっさりと張るとは。お前、何者だ?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ