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【書籍化・コミカライズ】偽聖女!? ミラの冒険譚 ~追放されましたが、実は最強なのでセカンドライフを楽しみます!~  作者: 櫻井みこと
第一部

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 兄のエイタス国王リロイドが、ロイダラス王国の王城に乗り込んでいるとも知らず、ミラは順調に旅を続けていた。

 何度か王城の騎士らしき軍団を見かけたが、彼らは魔物退治に没頭していて、誰かを探す素振りもない。

 そして魔物を何とか倒すと、即座に場所を移動している。

 どの騎士も疲れ切った顔をしていて、怪我を負っている者も多いようだ。

(私を探しているわけではなさそうね……)

 どうやらアーサーは、本気でミラを偽聖女と信じて、捕えようとしているのではなさそうだ。魔物が増えて討伐が追いつかないこの状況で、民衆からの不満を逸らすために、ミラを利用したのだろう。

(それはそれで、酷いわね……)

 思わず溜息が出てしまう。

 彼にとってミラなど、最初から都合よく使える道具でしかなかったということだ。それなのにミラは簡単に騙されて、優しく接してくれる彼のために、この国を守ろうと決意していた。

 過去の自分は、あまりにも世間知らずだった。それを改めて思い知る。

 だが、これならそんなに警戒しなくても大丈夫なのかもしれない。

 騎士が通りそうな道を避ければ、街道を通っても問題はないのではないか。それよりも、一刻も早く国境に急いだほうがいい。

 サリア達とも話し合い、そう決めて移動することにした。

(それにしても……)

 あのボロボロな騎士達を見てしまったミラは、複雑な心境だった。 

 アーサーに婚約を破棄され、偽聖女だと言われて追放されたあの時なら、この国がどうなろうと関係ないと言い切れた。町の人達も、今までこの国を守ってきたミラを罵っていた。

 最後には罪人として追われることになったのだ。

(思い出すと、今でもちょっと苛々するけど……)

 それでも、目の前で人が傷ついているのに、何もできないのはつらい。

 彼女の素質次第だが、マリーレが力を使いこなせるようになるまでには、かなりの時間が必要だろう。

 それまで、この国の状態は悪くなるばかりだ。

 アーサーが責任を取るくらいなら何とかも思わない……というか、むしろ当然だと思う。だが、こうして人が傷つき、町が襲われる様を見ていると、このまま何もせずに国を出てもいいのだろうかと思ってしまう。

 怪我人を癒すのは、目立ちすぎる。

 せめて、気付かれないように瘴気を浄化するくらいなら。

 そんなことを思い始めていた。

 迷いが生じ、注意力散漫になっていたのかもしれない。

 山道を歩いていたミラは、濡れた斜面に足を取られ、バランスを崩してしまう。

「きゃあっ」

「ミラ様!」

 前後にいた侍女とサリアが慌てて手を差し伸べるが、ふたりとも周囲を警戒していたため、あと一歩、届かなかった。

「!」

 踏みとどまることができずに、斜面を滑り落ちていく。

 何とか手を伸ばして木の枝に捕まろうとするが、ミラの身体は軽くて、落ちる勢いがあまりにも強すぎた。

 必死に伸ばした手が、運よく木の枝に引っ掛かり、ようやく減速する。手首に鋭い痛みが走ったが、何とか止まることができた。

 周囲を見渡してみると、ミラが滑り落ちた斜面は、そのまま崖に続いていた。このまま滑り落ちれば、その崖から転落してしまうところだったと知って、ぞくりとする。

(……よかった)

 ほっとして身体を起こそうとするが、身体のあちこちが痛む。

 上を見上げると、かなりの距離を滑り落ちてきてしまったようだ。

 今はかろうじて大きな木の間に身を置くことができるが、下手に動くとまた滑り落ちてしまう可能性がある。

 きっと仲間達が探しに来てくれるだろう。下手に動かないほうがいいのかもしれない。

 そう思って、周囲を見渡したとき。

「こっちだ。女の悲鳴が聞こえたぞ」

 どこからか、男の声がした。

「向こうか?」

「探している偽聖女かもしれん。あっちにいる兵も呼べ」

 複数の男達の声。

 聞こえてきた、ディアロ伯爵という名前。

「!」

 ミラはびくりと身体を震わせて、せわしなく周囲を見渡した。

 おそらく彼らは王城の騎士ではなく、ディアロ伯爵の私兵だ。

 彼の養女は、新しく聖女になったマリーレだ。自分の娘のために、呪いをかけたと言われているミラを探しているのだろう。

 だとしたら、彼らの優先は魔物退治ではなく、ミラを見つけて捕えることだ。仲間とはぐれてひとりでいるところを見つけられたら、逃げようがない。

(どうしよう……。ここから逃げなきゃ……)

 迎えを待っている余裕はないようだ。


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