表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化・コミカライズ】偽聖女!? ミラの冒険譚 ~追放されましたが、実は最強なのでセカンドライフを楽しみます!~  作者: 櫻井みこと
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

121/121

2-48 (第二部 完)

「わたくしも、ジェイダー様のお気持ちがわかります」

 ふと憂い顔になったオーリアは、そう言って目を潤ませる。

「わたくしもマリーレも、ミラ様と離れるのはつらいですから」

「オーリア様」

 ミラは、マリーレがもう逃げ回らなくてもよいように、彼女を一度王都に連れてきて、ジェイダーとオーリアに事情を説明した。

 彼女はディアロ伯爵に利用され、聖女であると思い込まされていただけ。そう説明したミラに、ジェイダーとオーリアも納得してくれた。

 それに彼女を罪人として投獄したアーサーは、自分が国を混乱させた張本人として、地方に幽閉されている身であり、ディアロ伯爵は王都が魔物に襲われた際に、命を落としている。

 オーリアは、新しく聖女となったマリーレにあまり良い感情を抱いていなかった。

 けれどその話を聞き、最後の聖女クリスティーと似たような境遇にすっかり同情したらしく、彼女を庇護することにしたようだ。それに聖女ではなかったが、治療師としての彼女は優秀であり、オーリアの助けとなってくれるだろう。

 そしてふたりとも、ミラを姉のように慕ってくれている。姉しかいなかったミラも、まるで妹がふたりできたようで、楽しかった。

「ミラ様と、もう簡単に会うことができないなんて……」

 俯くオーリアは本当に寂しそうで、抱きしめたくなる。

「大丈夫。もしふたりに危険が迫ったら、すぐに助けに行くわ」

 ミラも寂しくはあったが、いつまでもここにいるわけにはいかない。母も姉も心配しているだろうし、兄もエイタス国王として、あまり長く国を空けることはできない。

「ミラ様。ひとつだけお聞きしてもよろしいですか?」

「ええ。何でも聞いて」

 寂しそうに俯いていたオーリアが、ふと何かを思いついたように尋ねてきた。

「ミラ様とラウルさんって、恋人同士なのでしょうか?」

「!」

 優雅に紅茶を飲んでいたミラは、その瞬間、控えていたシスターが慌てて飛んでくるほどむせてしまった。

「まあ、ミラ様。大丈夫ですか?」

「え、ええ。……大丈夫」

 ラウルとの関係。

 ミラは自分の中にある答えを探して、じっくりと考えてみる。

 恋人同士では、ない。

 でも、もちろんただの護衛でもない。

 魔物からこの世界を守りたいというミラの目的を理解して、それを支えてくれるかけがえのない存在だ。

 ラウルが傍にいてくれると、ミラはもっと強くなれる。

 ふたりで、これからも旅を続けていくつもりである。

「これからの人生をともにする、大切なパートナー、かしら」

 そう告げると、オーリアだけではなく、慌てて駆けつけてきたシスターも、悲鳴のような歓声を上げて、頬を染める。

「恋人どころか、もう将来を誓い合って……。素敵ですね」

「え? ええ」

 何だか盛り上がりすぎてて気になるが、深く追求はしなかった。

 そして、とうとう王都を出発する日が来た。

 ジェイダーは兄に何度も頭を下げて礼を言い、ミラはオーリアとマリーレに左右から抱きしめられて、どうしたらいいかわからない状態だ。

 ラウルというと、騎士や衛兵達に肩を叩かれ、何やら激励されているようだ。

 聖女を射止めるなんてさすがだと言われ、ラウルが困惑した目でこちらを見ているが、ミラもどう答えたらいいのかわからない。

「そろそろ出発するぞ」

 兄に声を掛けられて、ミラはオーリアとマリーレをひとりずつ抱きしめてから、馬車に乗り込んだ。

 ここからは、ジェイダーが用意してくれた馬車で、エイタス王国の国境まで向かう。

 たくさんの人達に見送られ、馬車はゆっくりと王都を後にする。

 ラウルと初めて出会った町を通り過ぎた。

 エイタス王国からギルド員が駆け付け、ギルドを不法占拠していた男達は、一人残らず捕らえられたようだ。あの受付の女性は、ギルドの再建で大忙しらしい。

 氷漬けになったドラゴンの傍を通り過ぎる。

 あのドラゴンは、本当にロイダラス王国の復興のシンボルになるようだ。

 馬車は山道を通らずに、大きく道を迂回していく。

 道中、いくつもの町を経由し、復興が確実に進んでいることを見ることができて、安堵する。

 この国は滅びの手から逃れ、蘇ろうとしている。

 そうして、ジェイダーが守っていた町に帰る。

 別れた頃よりもしっかりした子ども達におかえりなさいと言われ、ミラはひとりずつ抱きしめた。

 魔物の襲撃もなく、平和だったようだ。

 兄の護衛騎士達は、兄が無事に戻ってきたことに安堵していた。この兄の護衛騎士は、本当に大変な仕事かもしれない。

 町で一泊し、ひさしぶりに子ども達と一緒に料理をして、それから町を立つ。

 今まで町を守っていた護衛騎士がいなくなってしまうが、町の人達に不安はないようだ。

 ジェイダーがきっと、この国を立て直してくれる。そう信じているようだ。

 こうしてロイダラス王国での旅は終わりを迎え、ミラはラウルとともに、ようやくエイタス王国に帰還する。

(お母様とお姉様を、どうやって説得しようかしら……)

 そんなことを考えるミラの瞳は、懐かしい故国を映していた。


6/24に2巻が発売されます!

書籍版はミラが祖国に帰ってからの出来事を加筆しています。

電子書籍には特典もつく予定です。詳細は情報が出次第、お知らせいたします。

どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ