1人ぼっちのお婆さんの話
いつものように窓際の揺り椅子に腰掛け、壊れて砂あらししか流れないラジオをかける。
廂が真夏の太陽を遮り、網戸からはぬるい風が入り込んでくる。
いつからそうしてるのか、連絡のつかない息子の帰りを、ぼんやりと待つ。
いなくなった息子には、嫁がいなければ子供もいない。
いなくなって悲しむ人は、私1人だった。
息子はどこでどうしているのか、そんなことばかり考えている。
父のところにいるのだろうか?
飛行機に乗って飛んでいるのだろうか?
セミの鳴き声が騒がしくて、窓を閉める。
椅子から立つとラジオを止めて、いつも通りに畑へ向かう。
お婆さんの眺めていた窓の向こうでは、たくさんの小さな太陽が、空に輝く大きな太陽を見上げていた。