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偽りの妻
素体をつくった。
カラダがダメなら新しくしつらえればいいのではないか。
人造生物をつくる技術はあるのだから妻が目を開ける素体をつくろう。
違う。
違う。
どうして違うんだ!
私は妻のためだけに箱庭を作り維持していると言うのに。
煩わしい外敵を排する技術も箱庭を守るエネルギー循環もすべて妻が笑っていられる時間のための必要コスト。あくまで副産物だ。
これでは、ダメなんだ。
『娘さんもお母様を亡くされて悲しいでしょうね』
秘書のその言葉で私は娘を思い出した。