I treasure you.
柔らかい朝日がカーテンから滲み、まだ肌寒い朝の空気にロディは身を震わせるとゆっくりと意識を浮上させる。
そう言えば、昨日は飲んだまま寝てしまったのかと少し体を起こして机を見ると案の定酒瓶が2つ3つと転がっていた。そのまま机の上の時計を確認すると丁度6時を差していて、ロディはいつものように胸の中で規則正しい呼吸音を立てる真っ赤な髪の彼女の肩を揺らそうと手を伸ばしふと止める。
そういえば彼女は今日休みをもらっていたはずで、ベッドサイドの卓上カレンダーを確認するとやはり休みの丸印が記してあった。
学会というものが近いらしく連日深夜まで紙と睨めっこしては机で寝落ちていた彼女だったが、ようやく落ち着いた様で昨晩は久しぶりに二人で酒を楽しみ、ベッドで眠ることができたのだ。
ロディは全く起きる気配の見せない彼女の顔をそっと覗き込み、まだ濃く残る目の下の隈を親指の腹でゆっくりとなぞる。
自分が置き手紙だけを置いて彼女の前から消えたあの日から暫く。もう居ないだろうと彼女の部屋に戻ると随分と痩せて濃い隈を作った彼女の姿があって、自分を見るなり泣き崩れた彼女の姿に酷く動揺した事を思い出すとロディは泣き袋をなぞりながら自嘲する。
「…んぅ」
小さな声を漏らして、少し寝返りを打った彼女に起こしたか、と思い指を離す。しかし、彼女が起きる気配はなく、代わりにロディのシャツを着て肌蹴た胸元から赤い印が一つ目に入る。
室内仕事が多いせいかやけに白く見える彼女の肌によく映える赤。それに魅入られたかのようにロディは唇を近付けると、その赤を濃くするかのようにもう一度ゆっくりと胸元に吸い付く。
憎まれてもいい、否憎んで欲しいと望んで出て行ったロディを、ずっと一人で待っていてくれた彼女を他の男には渡したくないと無意識に思ってしまうのだから、もう末期だと苦笑しながら起こさないように顔をあげる。
まだ眠り続ける彼女の隣に転がり直し、しっかりと抱き寄せる。いつもより熱い彼女の温もりを全身で感じ入りながら、ロディは再び目を閉じた。