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ゴッドキル・ザ・メサイア ~カミゴロシの救世主~  作者: 蒼露 ミレン
第二章 『竜と巨人とシカと』
31/66

2-13 『解釈』

「私は飛ぶことに集中しますので、どうか、巨人を見つけてください」


「分かった」


 どこに巨人がいるか分からない以上、ここから先は闇雲に探すしかない。


 クイムに突き落とされた場所に戻るという手段もあるけれど、きっと彼らは同じところにとどまってはいない。そんなことはせず、僕たちを必死に探しているはずだ。


 空から見れば、巨人たちの身長は嫌でも目立つ。巨人たちは空を飛ぶ手段がないから弓矢しか使えない。上空ではこちらのほうが有利だ。


 巨人たちをいち早く見つけ、子どもたちの居場所を見つける。それが僕の役割だ。


「さあ、飛びます!」


 一つ、翼を打つと、竜の巨体は持ち上がり、二つ目に翼を打った時には、既に洞窟から外へ出ていた。


 無事に洞窟から出られたということは、この近くに巨人はいないということ。僕たちはまだ見つけられず、待ち伏せされてもいないことに安堵している間にも、竜はぐんぐん上へと飛び上がって行った。


 弓矢すら届かないほど上空へ来ると、僕は世界を見下ろした。


 視界の限り広がる大森林。遠くに白い建物群が見え、小さく狭い道が森の中へと向かっていっていた。人通りはあまりなく、ただ、その建物群の方から大きな音が聞こえてきていた。

 慰労祭前日ということもあり、大はしゃぎしているらしい。


 視線をあちらこちらへと向けていると、ぽっかりと、穴が空いたように木が生えていない場所がいくらかあることに気づいた。そこに馬車を止めて休む人もいれば、火を熾して数人で囲んでいる様子も見えた。


 しかし、肝心の巨人の姿は見えない。


「木に紛れて移動しているのかな?」


「どうでしょう。確かに、森の中にいれば、あの巨体もいくらか隠せるとは思います。ですが、隠せたとしても、動きがあれば、少しは分かりそうなものですが……」


 あの巨体だ。自分たちが動けば、木にぶつかり、木が揺れることだろう。上空から見れば、それが分かると思ったけれど、それすらないなんて……。


「巨人たちも、警戒してるってことかな」


 たとえ、人質を取っていても、巨人たちは竜が怖いんだ。


 神と同等の力を持つ竜。本気を出さなくとも、巨人たちはその力の前になす術もなくひれ伏すことだろう。今は子どもたちが人質に取られているから何とかなっているものの、子どもたちを取り返すため、竜が何をしでかすのか、彼らには予測できていないんだ。


「……もう少し、近づいてみましょうか?」


「いや、やめておいたほうがいいと思うよ。待ち伏せされている可能性もある」


「自分たちで動いて見つからないなら、相手に動いてもらって見つける、ということですか。あまり賢いやり方だとは思えませんが、まあ、神に信奉するバカたちです。私の考えには当てはまらないことでしょう」


「……ねえ。神と竜って、そんなに仲が悪いの?」


「ええ。まあ」


 竜は翼を一つ、はばたかせる。


「仲が悪いというよりは、私たち竜は、神と対抗するために作られましたから。世界をうまく統治できなくなった神を、私たち竜が正しい道へと導くのです。それが、人間たちにとっては、私たち竜が悪い存在という解釈になっているのです。もちろん、それに便乗して、自分の命を守るために竜を殺そうとする神もいますけれどね」


「あの巨人の主が、竜を殺そうとしている神って可能性もあるのか……」


「そうですね。竜を殺そうとしている、もしくは、神同士の戦いに、竜が干渉してほしくないだけなのかもしれませんね。要は、ただの嫌がらせです」


「嫌がらせでここまでするのは、やりすぎだと思うんだけど」


「もし、あの巨人たちに神が命令したのなら、ですよ。彼らが自主的に私を殺そうとしているのなら、彼らは浅はかな知識の上で、私を敵と認識しているに過ぎないのです」


 どうせ何もできませんがね、と、竜はため息を吐いた。


「……理不尽だ」


「え……何がです?」


「だって、それじゃあ竜が殺されて当たり前みたいじゃないか。神に頼って生きることが正しいなら、その神の敵である竜が間違いみたいな……でも、違うだろ。竜の生きる意味は、ただ神と敵対することなんかじゃないだろ。そんなのおかしい……理不尽だ」


「……仕方ないのですよ。これは運命です。それに、そこまで真面目に神を殺そうだとか考えている竜はいないですよ。みんなひっそりと暮らしています。それが一番平穏ですから」


 それは……人間が竜を殺そうとするから、そう思っているだけなんじゃないのか?


 つまりは、人間に隠れて生きることが、何より平穏だ、と言っているような気がする。


 浅はかな知識で、短絡的に、安易に竜を殺そうとする……だから、人間に会わないように生活しているって言っているようなものだろ。


 僕は拳を握りしめる。


 もし、僕が竜を助けられるなら。


 もし、僕が間違った神を殺すなら。


 僕が望んでいるのは、そういうことなのかもしれない。


「……まあ、大半の竜は人間に交じって生活しているのですよ」


「今日、街に来た時みたいに?」


「はい。表面だけでは分かりませんが、私たち竜同士なら分かりますよ。あの街の中にも幾人か、そうやって生活している竜がいました」


「マジか……」


「はいはい。たまに会って情報交換したり、困ったときにはお互い助け合ったり……私たち竜は、そうやって生きてきたのですよ。実は、私もよく街に行くのです。以前は住んでいましたが、子どもが出来てからは今のあの湖畔に住んでいます」


「街の中にいる竜に知り合いいるの?」


「いますとも。明日には慰労祭ですから、神がはっちゃけすぎないように監視するのもわたしたちですからね。あ、ちなみに神もあの街にはいますよ」


「神が人間の恰好をして?」


「いえ。神はもともと人間の恰好をしていますから。それに、神は人間の中に入ることが出来るのです。まあ、それが出来るのは上級の、要は偉い神だけですが」


 僕の妹の中には神がいた。


 つまり、妹の中にいた神は、上級の神だった、ということか……。


 僕はその神を殺そうとしているんだ。上級の神……どれほどの力を持っているのかは分からないけれど、師匠よりは確実に強い。そして、この竜よりももしくは……。


 その時、竜が翼を打って停止した。振り落とされないように首をつかんだ僕に、竜は険しい表情をして言った。


「さて……見えますか? あそこにいる下郎どもが」


「……見えるよ」


 森の中に突如としてぽっかりと空いた崖の下に、巨人たちはいた。


 二十人ほどの巨人があちらこちらへと歩き回り、彼らの背後には、白いプレハブの建物が建っていた。その中から巨人が出入りしている。


「外にいる巨人たちは卵持ってなさそうだから、あの中にあるんだろうな」


「そうですね。ですが、このまま地上へ降りても姿をさらすだけです。少なくとも、彼らは私を殺すことを諦めていないようですね。そのあきらめの悪さを別のところに遣えばいいのに……まったく、私の大切な大切な子どもたちを、よくもよくもよくもよくもよくも……」


「ま、まあ、早いとこ助けに行こう。子どもたちが心配だし」


 そうですね、と竜は頷いて、翼を一つ打ち、巨人たちから離れた場所に着地した。


 竜から下りると、ふらふらしている少女を支えながら、作戦会議をする。


「正面突破」


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