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プロローグ
日曜日の午前十時から正午までの二時間が私の全て。
それはコンビニのイートイン・スペースだったり、市立図書館だったり、ファストフード店の中だったり。たまに小洒落たカフェやファミリーレストランの中だったり。彼の気分とお互いの財布の中身に合わせて場所は変わるけれど、そんなことはどうでもよかった。
私と、彼。二時間の間、誰にも、何にも邪魔されずにふたりが同じテーブルを挟んで、向かい合って。そして時折飲んだり食べたり談笑を楽しんだりできれば、場所なんて何処だってよかった。
「三藤、お前ほんと賢いのな。尊敬する」
「褒めてもなーんにも出ないよ。ほら、口じゃなくて手と頭を動かしたらどうなの」
「えー、俺、数学って嫌いなんだよなあ」
「いくらでも教えてあげるけどまずは自分で頑張ってみなくちゃ。あと三ページできたら、そうだね、おやつにしようか」
「まじで?やった、じゃあ俺頑張る!」
「うんうん、ファイトだ佐々浦」
きらきら、と。眩しい彼の笑顔につられて微笑む。
この幸せがいつまでも続きますように。