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人助けをしています。  作者: 蒼凪
1/3

プロローグ

これが処女作になります。楽しんでもらえたらうれしいです。

 (はぁ……何でこんなことになったんだろ。俺はいつもと同じように助けただけなのに)


 まず最初に言えることは東條勇気は不幸である。この不幸というのは例えば財布を落としたり、テストの時に筆箱を忘れたりするうっかり系ではなく、‐まあ、それもよくあるのだが‐彼の場合は対人関係の不幸である。


勇気は赤ん坊の時に孤児院に捨てられていた。あともう少しのところで死んでしまう状態でだ。この時点で大体の人間は同情するだろう。だが勇気の対人関係の不幸はこれだけではない。勇気を拾ってくれた孤児院にいる大人は国から貰っている運営費を自分たちの私利私欲に使って、孤児院を運営する最低限必要な金しか使わない、孤児院の子供たちにむかって暴行をする‐傷は見えないようなとこを重点的に‐などのことを行っていた。

勇気はまだ小学生になれる年齢ではなかったため一度も孤児院を出たことがない。だからか彼の頭の中ではこれが普通なんだと認識していた。だがある程度物事を考えられるようになると、今まで兄や姉のように感じていた人たちが暴力を振るわれているところを見ると胸のあたりが痛かった。


(何なんだろうこの痛み……わかんない、いつもとおんなじのを見てるだけなのに胸のところが苦しいよ……けど、おにいちゃんやおねえちゃんが泣いているとこをもう見たくないな……)


次の日孤児院の大人達はまた子供達に対して暴力を振るい始めた。それを隠れながら見ていた勇気の胸がまた痛くなった。


(まただ……本当に何なんだろうこの痛み……)


勇気がその痛みについてまた考えていた時も大人達の暴力は止まらない、いやどんどん悪化していった。

ドンという音をがなり勇気は考え事をやめてまた見始めた。そこにはまだまだ殴り足りないといわんばかりの表情をしている大人たちと赤い液体を出しながら横たわる子供たちがいた。


(え……なに、これ……)


勇気の頭の中ではこの光景を理解できないでいた。昨日までは大人達に暴力などをされてもまるで何事もない素振りでいた人たちが今はまるで死んでしまったかのように動かずに横たわっている。昨日まで一緒に過ごしていた人たちが赤い何かを流しながら倒れている。そんな光景を理解できないではなく理解したくないとも考え始めた。そう思っていた時、


「おい、早く起きろガキども!!まだ俺達は満足してねーんだよ!!」


と大人たちの一人が言ったのを勇気は聞いた。いや聞いてしまった。この言葉を聞いた勇気は自然と頭の中にこれはやってはいけない事ではないのかという考えが浮かんだ。勇気から見ても子供達は酷い状態なのにまだ自分達が満足してないからという理由で殴るなんておかしい。そう勇気は思った。だが思っただけでは何もならない。行動にうつさなければ意味がない。普通の人ならここで思ったことを行動にうつさないだろう。なぜならそのあとが怖いからだ。だが、勇気はまだ小学生にもなっていない子供だ。このころの子供は良くも悪くもすぐに考えたことを行動にうつす。したがって、


「やめてよ!!これ以上したらみんな死んじゃう!!」


こういうことになる。


「あぁ!!誰のおかげで生きていけてると思ってるんだこのクソガキ!!てかなんでてめぇはなんともねーんだよ!さてはオメェかくれてただろ!」


「まあまあ、落ち着いて」


「けど、ムカつくだろこんなサンドバック位にしか役に立たないガキに指図されて」


「だったらその子を殴ればいいじゃないか。結局はここの孤児院にいるサンドバックと同じものですし。それにみんな死んじゃうということは自分はまだ死なないから自分を殴れということにもとれます」


「え……」


「なるほど、ならそうしますか」


「いや……やめっ……」


その後の勇気は大人達全員からの暴行をうけて気を失った。


数時間はたっただろう。勇気は暴行をされたところで目を覚ました。周りを見渡すと他の暴行された子供達はおのおの自分のケガを治療していたり、床にこびりついた血を掃除していたりしていた。その手つきは迷いがなく適切でもう慣れてると言わんばかりだった。


「あっ気が付いたんだね」


「大丈夫?痛いところない?」


勇気が起きたことに気が付いた子たちが勇気に心配そうに声をかけた。けれど勇気にとっては自分より声をかけてくれた人たちのほうが心配だった。自分は他の子が倒れるまで隠れていたし、なにより血なんて出していないからだ。


(自分達のほうが僕より痛たそうのに、つらいのに心配してくれるのはなんでだろう?)


疑問が頭の中に浮かび気になったので心配してくれた子に聞いてみた。何で心配してくれるの?おにいちゃんたちのほうが痛そうなのにと。


「僕たちを助けてくれたんだもん心配位はするよ」


「……助けた?……僕が?」


「うん!僕たちが痛くて困ってる時に君が助けてくれたんだ」


「けど僕隠れてたし……」


「それでも僕たちは嬉しかったよ。だって僕たちより小さいし怖いはずなのに僕たちを庇ってくれたもん。本当にありがとう!」


「「「ありがとう!」」」


"ありがとう"という言葉を初めて言われた勇気は胸の中から暖かく嬉しい気持ちになる何かを感じ、あの時動いてよかったと自然と思えた。


(……決めた!僕これから困ってる人や悲しんでる人の味方になろう!)


 それは子供の時誰しも考えていた特撮ヒーローみたいに正義の味方になろうとする純粋な気持ち。普通の子供なら大人になるにつれ無くなってしまう気持ち。けれど勇気はこの純粋な気持ちをを忘れずに成長していった。人を助けるため一生懸命努力した。だが勇気の周りの人たちはその気持ちを利用し、自分だけ得をしていた。例えば困っている振りをしパシリに使ったり、金を巻き上げたり悲しい振りをして勇気をいいように傷つけた。そして運命に日がやってくる。

 その日勇気は学校の帰り途中いつものように困っている人はいないか確認しながら帰っていた。


(今日も学校でいっぱい人助けできたし明日も頑張って困ってる人を助けよう!……あれ?なんかあそこおかしくないか?)


勇気は歩いている時にふと見えた路地裏から一人の女性が男性に襲われそうになっているのが見えた。


「ちょっと!なにするんですか!離してください!誰か助けてください!」


(!?早く助けに行かないと大変なことになりそう!助けなきゃ!!)


勇気は女性の悲鳴と体勢からからこれ以上進んでしまったら女性の身に大変なことが起こってしまうことと今まで自分がしてきた人助けの精神から急いで女性を助けにいった。


「そこまでだ!!それ以上するなら俺にも考えがあるからな」


「貴方は……」


勇気は女性に暴行をはたらいていた男を押し飛ばし男と女性の間に立ち男ににらみながら威嚇した。その後ろから女性が希望が見えた声で名前をたずねてきた。


「もう大丈夫。安心してく……え?」


「もう超ラッキー今時こんな方法で人来ないと思ってたけどまさか来るなんて私ついてる~」


「マコちゃんもう大丈夫?」


「うん!アキラもお疲れ!すごく良かったよ!」


「マコちゃんのほうが上手かったよ。それより早く金とって逃げよう」


「そうだね」


勇気は女性を背にして守っていたはずなのにその女性から刃物に刺され、暴漢だった男と親しげに話して勇気の財布を持ってどこかに行ってしまった。

訳が分からなかった。何で助けたはずの人に刺されたのか、何で人を刺した後あんなにも楽しそうに話せるのか、何で二人の目線があんなにもバカを見たようなかんじだったのか。


(俺……このまま死ぬのかな……)


勇気は刺されたところが悪く大量に出血していた。手足の感覚などはもうなく、体は冷えてきている。このままなら確実に命はないだろう。


(こんな形では死にたくなかったな……けど人助けをしようとして人生が終わるならそれもいいか……

ああ、もし次産まれてこれたなら今度はもっと優しい世界でありますように……)






                ーその願い私がかなえましょうー


優しく言われた気がした。













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