2章<朱雀>
2章<朱雀>
次に僕が目を覚ましたのは真っ白な部屋だった。
窓の類いは一切無く、壁や床、天井、ドアまでもが白く妙な圧迫感がある。
ガチャ・・・とドアが開く。向こうから来たのは先ほどのエルフだった。
「気絶させて悪かったわね」
そこで僕は驚く。
「(スタイルがいい///)」
目のやり場に困った僕は目を逸らしながら聞くべき事を聞く。
「僕はこの後、どうなるんですか?」
するとエルフは
「そうねぇ・・・簡単に言えば戦争の駒、こっちの事情を含めて言うなら”止める者ーペインーになってもらう。・・・さてこの世界の状況は聞く?」
「長そうなので簡単にお願いします」
「分かったわ。まず、この世界は化学と魔法によって発展しているわ」
「ま、魔法!?」
「これは見てもらった方が早いわね」
そう言うとエルフは立ち上がり虚空に手をかざした。
するとそこから弓が出現した。
エルフは弓に矢をつがえ、放った。その矢は電流を帯びてうねり、龍のような形になり辺りに轟音と衝撃波を撒き散らした。
「こんなところかしら」
「・・・・・・は?」
僕は呆然とする。
しかしエルフはそれを許さない。
「ちょっと?話、続けるわよ?」
僕は気を取り戻す。
エルフはこう続けた。
「さっきあなたの前にいた方は皇帝レイ・ユージン様。そして今、戦中と言ったわね。その相手が魔王エルマ・カインとその手下、五百万人」
「ごっ・・・」
再び驚く。
「それに対してこちらの軍勢はせいぜい三百万人ってところだわ。このままでは押し切られるのも時間の問題だわ」
「だから”神隠し”を・・・」
僕は納得・・・しなかった。
「そっちの状況は分かったけど・・・千人じゃ少なくないか?」
ニュースで被害者は約千人と聞いていた。
「千人?ああ、確かにあなたたちの世界からは千人位しか連れて来てないけど、何もこの世界とあなたたちの世界しか無い訳じゃないのよ。他の世界もいくらでもあるわ。連れて来た人の合計は大体、百五十万人位ね」
「そんなに・・・」
僕はふと気付いた。
「でも、僕みたいな戦闘未経験者なんて使えるの?まして魔法なんて皆無ですけど・・・」
するとエルフはポケットから真っ赤な丸い石(賢Oの石じゃないよ!)のようなものを取り出した。
「これは”魔力増幅薬”。これであなたの魔力を底上げするわ」
僕は妖しく輝るそれを受け取った。
「それを飲むとあなたは暴走する。その暴走を押さえ込めばあなたの勝ち。だけど暴走に負ければ・・・死ぬ」
半ば投げやりな僕は
「どうとでもなれ!・・・(ゴクン)」
それを飲み込んだ。
ドクン!
「ぐ、ああ・・・熱い。身体が灼ける・・・!」
ドクン!
意識が飛ぶのはかろうじて耐えた・・・けど
「ガアアアアアッ!」
「(身体が言うことを聞かない!)」
エルフはすぐさま後方へ飛び、今度は鞭を出現させた。
「はっ!」
体勢を立て直し攻撃に移ったエルフは鞭をしならせ僕を襲う。
僕の身体はそれを容易に避け拳を振りかざす。
エルフは流麗な動きでそれを受け流す。
「(早く、抑えないと!)」
そのとき僕は意識の中でもう一つの声を聞いた。
「(お前は何故、この世界へ来た?)」
女性の声だ。しかし聞いたことがない声。
「(あなたは誰ですか?)」
「(私の名は朱雀ーすざくー。お前が”扉”にいたとき光を与えた者だ)」
「(ああ、あの時はありがとうござーー)」
「(そんなことはどうでもいい。それより、何故お前はここへ来た?)」
「(何故・・・ここへ・・・?)」
考えてみるとその通りだ。確かに自慢の材料になるとは思っていたが・・・本当は・・・?
「(まさかお前、偶然来たわけではあるまい。”扉”から来たのだから何かしら理由があったのだろう?)」
「(どういうことだ?)」
「(先程、エルフが言っていただろう?”連れてきた”と。しかしお前は”入って来た”この差のことだ)」
僕がここへ来た理由・・・”扉”へ入った理由・・・僕は・・・僕は!
「(僕は向こうの世界に飽きていた。向こうの世界の”ルール”に苛立っていた。このまま何でもないような生活を送るのが嫌だった!僕は何か変化を求めていたんだ!)」
すると朱雀は
「(ふははははっ!自分の世界に飽きて異世界に飛び込むか。少なくとも変化を恐れる弱者では無いようだ・・・面白い。この朱雀、お前の為に”力”を貸そう。思う存分、世界に飽きぬようもがけばいい!)」
ゴウッ!
その瞬間、僕を中心に朱い奔流が起こる。
「!!・・・きゃあっ!」
その衝撃でエルフは吹き飛ばされた。
その流れは収まり、僕は右手に刀を持っていた。
「朱雀・・・か?」
すると刀はその言葉に呼応するように朱く輝く。
「・・・どうやら抑えられたようね。おめでとう。これであなたは”止める者ーペインーの仲間入りだわ。これから長い間戦ってもらうけど、今更文句なんて言わないでよね」
「ああ言わないさ。退屈させてくれるなよ」
今、僕の眼に曇りなど無い。
「(これから僕の新たな物語だ・・・!)」
エルフのスタイル・・・想像して下さい・・・いいですねぇ(すいません)
キャラ不足だって声が聞こえそうで怯えています。
次回には新キャラ+エルフの名前を出します!・・・いや出せるように頑張ります。次回、見てくれないと食べちゃうぞ「(O#O)「