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麗を待つ時にはご注意を

お久しぶりです、杞憂です


大変遅くなりました


感想待ってます

初めて幽霊と会話したその日は寝ないで学校へ赴いた。

徹夜なんて生まれてこれまでやった記憶が無いので正直今の状況が辛くてしょうがない。

授業も耳に入ってもすぐに外に抜けていく。

授業が退屈という風に勝手に判断してしまう位に睡魔が襲ってくる。

流石に授業中に寝るのは不味い……担任がなっちゃんだからだ。

だが今は黒板にチョークを走らせている。

仮眠をするなら今しかない…!

そうと決めたら腕を机上で組んで頭を伏せる。目は自然と閉じていきすぐに眠りに落ちた。

落下地点はこの前のあの夢だった。



?????????????



「…い……」


「ん?」


「お……そう…」

「おい!荘介!起きないか!!」


「ん……あっ、なっちゃん。」


「うむ。私だと分かるのだな。なら今がどのような時間かも分かるよな?」


「はい……」


あまり寝れていたという感覚は無かったのだが教室の掛け時計を見てみると長針は半周していた。周囲のクラスメート達は俺に注目しており、ニヤニヤした野郎やただ此方を見ているだけの女生徒のみだ。

皆とは目を合わさずに先生にうなずく。


「後で反省室に来るようにな。原稿用紙に文庫本作家並みに書かせてやろう。」


「はぁ…分かりました。」


「?どうした、体調不良か?なんなら保健室にでも……」


「いえ、大丈夫です。」


やや心配そうな表情で見ていたなっちゃんが切り替えて授業に戻っていく。

頬杖をつきながら窓に描かれた風景を眺める。

グラウンドにはサッカーボールを追いかける生徒がいる。

平和で何一つ変わりのない風景

いつも通りの変わりのない教室と授業。

そんな中変わってしまった俺の日常---


%%%%%%%%%%%%%



この時間だけはどうにも好きになれない。

寝まぐるしく、怖くて……

冷や汗が出て今日は何されるかという恐怖がつのっている。

目だけを動かし何処に居るのかを確かめる。今日はまだ姿を見せていない。辺りにも居ない。

この前は包丁、その前はジャーマンや絞殺……

次は一体何で殺しにかかってくるんだ?


すると階段をゆっくりフラフラと上がってくる音が聞こえてきた。

ベッドから立ち上がりカラーテーブルにおいて置いた清めの塩(食卓用)を手に取った。

テーブルの上にはお茶とお茶請けのまんじゅうも置いてある。

何故か?

幽霊の撃退方法『幽霊には清めの塩をかけて万事解決!!』を考え着くまでに必要だったからだ。

バカだと思ってるんだろ?

なぁ、おい読者さん。

ふ、あぁ!バカさ!!

この前なんてゆでタマゴ作ろうとして鍋にゼラチン入れたらモザイクかかりそうなヤバさになって出来たと思ってタマゴ割ったら『グシャ!!』って言いやがって、まだ生でしたぁ~状態だったんだよ。


「確かに、あれは酷かったわね。あ、ちゃぶ台だ!なつかしぃ~~」


「いや、カラーテーブルだし。てか、見てたんならタマゴ処理するの手伝ってよ……」


「えぇ~。やだよ。面倒だし。おまんじゅうもあるぅ♪ 食べちゃうね。」


「うん、いいけど…………ん?」


「いただきまぁ~って何すんのよ!!」


「うわぁぁぁああ!!!悪霊退散んんんん!!!」


俺は手に持っていた塩をどっからか現われた幽霊に夢中になって撒いた。

これで消えてくれるか?

それか何かしらダメージが与えられたか?


「んん!!」


「お!利いてる!」


「甘いおまんじゅうに多少の塩…美味なり!!」


逆効果だった!!??


「あ、ねぇ~、私にもお茶ちょうだいよぉ~~。」


何か急にゆっくりしだした!?


「ねぇ~、まだ……って何お茶してんのよ!!」


セルフツッコミしやがった!?


「あんたを殺しに……っキョウコソ、コロシテ…ヤル。」


「急に声色を変えるな!さっきの女の子っぽい声はどうした、おい包丁を構えるな!」


いつもの『怖い女性の幽霊』のどす黒い声に戻していた。

いつ見てもこの幽霊は乱れた白装束を着ている。しかも血がべっとりついた。

もう怖くて仕方が無いね。映画とは違ったリアルの怖さがある。


「コロシテ、コロシテ、ヤルぅ~~。」


ノソノソと床を這いながらこちらに近づいてくる。

爪を思いっきり立たせ床を傷つける。

ぎこちない動きは逆に恐怖さえ感じ俺の動きも鈍く制限された。

体は恐怖に支配され、目は幽霊に魅入られ出来る事が無い。

唯一出来る事は、この状況からどのようにして逃げ出すかだけだ。

でも頭では考えられても実行に移せない。


幽霊は俺の両足首を脇に挟むと身体をスゥッと今までのぎこちない動作が嘘の様なまでの流れで立ち上がり、幽霊を軸とした円運動を始めた。

つまり―――


「ジャイア〜ントおおぉぉ〜スイ〜ーーんぐ!!!??」


「ホラー、ホラー、シニタクナッタダロウ!ハッハッハッッっ、おええぇぇぇおぉ〜〜!!?(吐)」


コイツ、自分が目回して吐きやがった!


「おい……大丈…夫か?」


「おえぇぇぇ、おええええ!!!!」


お前どんだけ吐くんだよ!

とりあえず幽霊の背中をさすってやる。暫くすると幽霊の吐き気も止まって肩で息をしていた。

落ち着いたのか此方に振り返って頭を俺の胸に預けてきた。

その姿を見ているととてもじゃないが邪険には出来ない……。

せめて元気になるまではこのままでいてやろう。いやでも、元気にさせても良い事は無いか………。

お互いに言葉は交わさず幽霊の呼吸音とカチカチカチと時を刻む音しか耳に入ってこない。

さすってる手は暖かく温もりを感じる。摩擦熱とかではなく人肌に触れている様な温もりを。


「はぁ、はぁ、……あ、ありがと……」


「いいよ、べつに。それより大丈夫か?」


「うん。私はもう大丈夫だけど、その……君の服をその……心配してあげた方が良いかもね……」


はい?何言ってるのか良く分からなかった。

幽霊から自分の服へ視線を落とすと寝まきのシャツに黄色いモザイクがかかっていた。

コイツはただ頭を預けていただけじゃなくて、顔を服に押し付けて口周りの御見せ出来ないモノを拭い取ってやがった。


「ちょ、お前!!」


「私はその、あの、………ごめん。」


「まぁ、洗濯すれば良いから大丈夫だけど……。お前は一体何者なんだよ…。」


「え?幽霊だけど?」


は?何言ってんの?的な顔をしてくる。

それは分かってんだよ、その格好とか行動とかで!


「そうじゃなくて、………俺は壮介だ。お前は?」


「あぁ、名前ね。私は…………………、え?」



幽霊は自分の名前を言おうとしているのだが、いつまで待ってもそれらしい単語が幽霊の口からは出てこない。



「まさか、お前記憶無いってオチか?」


「待って!………そんなハズ……そんなハズないもん!!」


予想よりかなり取り乱してる。


「ここに来る前だってちゃんと覚えてたもん!」


「聞いた話なんだが、人間は死ぬと記憶が一度消えるんだと。だから記憶喪失は仕方が無いんじゃないか?」


「………」


「それに幽霊になる事は難しいんじゃないのか?」


「え?」


「幽霊は生前の最も心に残ること執着念を持って現世に具現化されるって聞いた事があるから……」


「だったら何だってのよ!」


「つまりお前は何かやる事があってこの世に戻ってきたんだろ?」


「うん……たぶん…」

「確か、誰かに何かをしないといけなかった気がしたんだけど……何か良くわかんない。」



この幽霊はこれから一体どうするのだろうか…?

そんな事俺が知るわけない。

なんせ俺を殺そうとしている相手だぞ?

このままコイツを野放して置いたら俺の命が幾つあっても足りゃしない。

だが、コイツは幽霊だ!

俺が好きな幽霊だ!!

お祓いして追い出すか?

コイツの記憶喪失を治すのに手伝うか?

…………

クッソ!!

選べねぇ~~


「もう、いいよ。」


「ん?なにが?」


「これ以上私の殺す相手に色々話しても意味ないし……」


「何だよ、それ。」


「だからアンタを殺そうとしてる私は邪魔者じゃない!だからこれ以上話しても何にも無いの!それにアンタには無関係じゃないの!!」


「ふざけんなよ!!!」


「っ!?」


叫んだせいで喉元がヒリヒリする。

だが、今はそんな事は些細な事だ。

コイツの態度が気に入らない!


「何が無関係だ、がっつり俺にも被害出てんじゃないか!」


「それは私が殺そうとしているからじゃ……」


「じゃあ、何で俺を殺そうとする?」


「えぇっと……何でだっけww?」


「オイこら!!」


「あはははは。」


いかん。ペースが乱されてきている。

だが、嫌じゃない。

それに放っておけない。

『だから』という訳では無いが俺は決めた。


「よし、俺もお前の記憶取り戻すのを手伝うよ。」


「え、え?えぇ!?」


「よし、決まりだな。じゃあこれからは…」


「何勝手に話進めてんのよ!!だいたい私はアンタを殺そうとしてんのよ?」


「何をいまさら言ってんだ?」


「だったら…」


「これは俺が決めたんだ。お前なんかが簡単に覆せる《くつがえせる》訳ないだろう。それに、危なっかしいんだよ、お前。だから、俺がしばらく一緒にいてやるよ!!」


幽霊は俺の話を静かに聞いていた。前髪が邪魔でその表情は隠されていて良くは分からないが口元に手を当てて困った様なそぶりを見せる。


「まぁ、それなら…仕方ないわね。でも!、仕方なく、仕方なくだからね!そこんとこ、夜露死苦!」


「キャラのブレ幅が大きいなぁ……、じゃあこれからよろしくな、ええぇっと、『れい』で良いかな?」


「麗?」


「そう、いつまでも『お前』とか言われるのは嫌だろ?でも名前も思い出せないんなら俺が付けてあげようかと思ったんだが、どうかな?」


「良いじゃない、麗って!何か外国のお嬢様見たいな名前ね!」


良かった、気に入ってくれたみたいだ。

でも、名前の由来がホントは幽霊の『霊』だからだ。そのまま言ってみろ、絶対文句言うに決まっている。だからボヤカスために当たり障りがなさそうな『麗』にしてみたが、これは正解の様だった。


「麗かぁ、えへへ、麗、麗お嬢様……麗御嬢……麗様…バリエーション豊富ねぇ。」


凄いよろこんでくれて嬉しい。


「まぁ、これからよろしくな麗。」


そう、これから始まるんだ……幽霊の麗と人間の俺の話が。


「麗さん……麗殿………」


あぁもう、全然しまれねぇーじゃないか!!

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