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みじかい小説

『みじかい小説』056 / 夫はつらいよ ~1000文字にも満たないみじかいみじかい物語~

掲載日:2025/12/22

日曜の朝のことだった。

いつものようにリビングのソファでごろごろしていると、妻が掃除機をかけはじめた。

妻が掃除機をかけやすいように、俺はソファの上に両足をあげて、身を小さくしてスマホをいじっていた。

すると妻が、「いつまでだらだらしてんのよ!ちょっとは手伝ってよ!」といきなり声をあらげた。


俺は若干引き気味に驚いて、「ああ」と返事をしてソファから降りてとりあえず着替えた。

すると今度は「またパジャマを洗濯かごに入れ忘れてるんじゃない?」と問いただす。

慌ててパジャマを洗濯かごに入れると、「やっぱりね。私、何度も言ったよね?なんで1回でできないの?ねぇ、なんで?おかしくない?」と妻が詰め寄ってきた。

俺はさすがにいらっとして、「ちょっと、待て」と妻を制した。

そして、「どうした、なんかいらいらしてるみたいだけど、なんかあった?」と聞いてみた。

すると妻は「は?ふざけてんの?馬鹿にしてるの?」と怒鳴ってきた。

会話が成立しないことを悟り、歯を磨いて顔を洗ってから、俺はひとり、家を出た。


行く当てもないので一駅ぶん歩いて、駅前の喫茶店に入った。

クリスマス間近ということもあって、店内には専用のBGMがかかり、店員はトナカイのカチューシャを頭につけている。

二人とも今年五十になる俺たち夫婦だが、クリスマスを祝うのなんか、子供が独立して以来していない。

完全に他人事としてのクリスマスを対岸で眺めるような心持で、とりあえず頼んだブラックコーヒーに口をつけた。

なんとなく、「更年期」というワードで検索をかける。

するとそこには、更年期を迎えた女性が抱きがちな不安や悩みがずらっと並んでいた。

めんどくせぇなぁ、と、内心では思う。

でも、一緒に子育てをしたパートナーでもあり、ある程度信頼関係も築かれている。

そんな妻の不調ひとつ対処できなくて、なにが夫だ、という気持ちもある。

俺は続けて、「妻 更年期」と打ち込んでみた。

すると、予測変換で「妻 更年期 対応」という文字が飛び込んできた。これだ、と思い、すぐさまタップする。

すると対応策として、「コミュニケーションをとる」「理解する」「寄り添う」「新たな信頼関係を築く」などといった言葉が並んでいた。

め、めんどくせぇ……。

とは思いつつ、とりあえず、気持ちをなだめて優しさを全面に出しながら聞くだけ話を聞いてみるかと思い、俺は覚悟を決めて家路についたのだった。


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