表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

第6話「考える吸血鬼」

第6話「考える吸血鬼」


 石造りの部屋に、静かに時計の針が鳴る音が響いていた。

 吸血鬼は椅子に腰をかけ、薄暗い照明の下で紅茶を口に運んでいた。

 目の前の机には、開かれたままの記録帳。だが、彼の視線はその上をさまよい、ページの文字を追っているようで、追っていなかった。

 エリセ――あの名前。

 夢の中で見た光景。あれは本当に夢だったのか?

 彼女の視点で自分を見ていたことが、妙に頭から離れなかった。

 (……あれは、恐怖だったのか?)

 僕は短く息を吐くと、椅子の背もたれに身を預けた。

 「いや……与えていたのは、僕か」

 静寂。誰も返事はしない。だが、この場所に言葉を投げることが、時折必要になる。

 考えてみれば、彼女が記録帳に記されていた時点で、あの任務は記録帳に記された時点で“完了”していた。なのに、なぜ――夢の中で、あんなにも無意味に剣を振り上げていたのか?

 恐怖を与えるため? エリセは生きているの……か?

 何か違和感が残るが分からない。

 僕はそっと立ち上がり、部屋の隅にある本棚を眺めた。  ……彼女が記された記録帳。

 取り出そうとはしなかった。ただ、そこにあることを再確認するだけで十分だった。

 「……何をいまさら……エリセは死んだはず……」

 だがそのつぶやきは、僕自身を納得させるためだった。


読んでいただきありがとうございます。

感想いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ