事実は諸説より奇なり
「ううん…ここは…」
朝日が窓から差し込み、眠りから目を覚ましたアメジスは教会のベッドであるとすぐに認識した。
「そっか、マリナル王国で一日過ごして帰ってきたんだった」
リュクウを改めて家族として迎え入れ、マリナル王国で一日楽しくもてなされながら過ごした後に、帰りはグリーに乗せて貰い、教会に着いたのは夕暮れだったのだ。
「リュクウちゃん、ニーナ達と寝ちゃうまで遊んでたっけ…」
リュクウと別れずに済み、これからも家族として過ごせると知って教会の子供達と大はしゃぎし、やがて眠ってしまうまで皆で大騒ぎしていたことにアメジスは思い出し笑いをしていた。
「そろそろ起きない…え?」
「かー…こー…」
起き上がろうとするがこれで何度目か、アメジスの手に柔らかな感触がしたかと思えば、ベッドに一糸纏わぬ姿のスザクが寝ていたのだ。まさかとは思い自分が触っている物をドキドキしながら確認すると同時に優しく揉んでみる。
「すぅ…ふへぇ…くすぐったい…」
「って、リュクウちゃんだった!?」
しかし触っていたのは同じくアメジスのベッドに潜り込んでいたリュクウの柔らかい頬だったことに驚きの余りベッドから転げ落ちてしまう。
「んあ?何だよぁ…ふぁ〜」
「くぁ〜…」
騒ぎに気付いてスザクも生まれたままの姿を惜しげもなく晒すように伸びとあくびをする。窓から差し込む朝日によってきめ細やかな肌が輝いている中でリュクウも同じく可愛らしいあくびをしていた。
「今日は鼻血を出さなかったな」
「血って落としにくいからねぇ。これもリュクウが帰ってきてくれたお陰かな」
「もう…レイラ姉さんとメイナス兄さんの意地悪」
朝食の準備をする中で何があったか理解したレイラとメイナスはからかうようにアメジスに話し掛けてきたために彼女は膨れっ面になる。
「あれ…火が着かないぞ」
「灯りもなんかおかしいよ?」
朝食の用意をしようとしたレイラは火の魔石で動くコンロに火を着けようとするが火花すら上がらず、照明も点いたり消えたりを繰り返したりとトトも困惑していた。
「実はここ最近エレメントやエレメントに由来する魔石を使った魔道具の調子が悪くなってるのよ」
話によると火や水などのエレメントが上手く扱えない事象が発生しており、風の噂ではミスティーユだけでなく多くの地域でも起きていると言うのだ。
「最近かの?しかしコバルトラビリンスではさほど変わった様子はなかったが?」
「エレメントは自然の力そのもの、だから由来する場所に囲まれているとその影響を受けなくなるんだ。水のエレメントが最も強まる海とかね」
自分達には何の影響もなかったが出向いていた場所がエレメントの強い場所と言うのが幸いしていたようだ。
「逆に汚染されたり、環境が変動したりすれば弱まる場合があるからね」
「変動って、ミスティーユの環境はそこまで悪く変わってないんと思うけど何でそんなことに?」
しかしアメジスの返しにはメイナスも口をつぐむ。温泉が枯渇したとは言え、これまでエレメントはさも当然のように使っていたし、逆に使えなくなる理由として環境変動もあるだろうが今のところ極端な変化は見られなかった。
「それは多分『シンフォニーフォレスト』に原因があるんだと思う」
代わりに何が起きたか、そして異常が起きている場所をノーヒントでを答えたのはルアーネだった。
「シンフォニーフォレストって?あれ、ルアーネ?」
「どうしたんだい、頭でも痛いのかい?」
言い当てたことで詳しいことを聞こうとするがルアーネは何処か頭が痛そうにしていて少し辛そうにも見えた。
「ボクの賢者の書はどうやら他の植物の悲鳴を察知することが出来るらしいんだ。そのシンフォニーフォレストで木々が伐採されているらしいんだ」
ルアーネの持つゴッドプレシャス『賢者の書』は神樹イグドラシルから創られている。別格であるとは言え同じ植物の危機を感じ取ることが出来るらしく、そのせいで頭が痛そうにしているようだ。
「木を切るぐらい訳ないだろ。薪にしたり家を建てる材料とかにしたりとかさ」
「あたしも詳しくはないけど、木々を育てるのに他の木を切ったりするとかあるけどな」
しかし言ってみればその辺の雑草を踏んでも植物の危機にもなる訳だし、建築材料や間引きなど人々の生活や自然環境を良くしていくためにはある程度の伐採をするため、それだとルアーネは常に頭が痛そうにしていてもおかしくないはずだ。
「ある程度は悲鳴を挙げたりはしないさ。でも、これは明らかに異常だよ…シンフォニーフォレストの環境が変動するほど木々が伐採されてるんだ」
「確かにそれは異常、と言うよりも違法じゃないか」
しかしながら伐採にも環境に悪影響を与えない取り決めやルールが存在するため、植物がルアーネに危機を訴えるほどとなると穏やかな話ではなかった。
「しかしのう、それが何故エレメントに影響するのじゃ」
確かに聞き捨てならない話ではあるが、シンフォニーフォレストで起きている違法伐採とエレメントの不調が何の関係があるのかは定かではなかった。
「シンフォニーフォレストには…妖精族がいるんだ」
「妖精族って、ニナちゃんみたいな?」
「それってつまりニナの故郷ってことか?」
そこにはニナのような妖精族が住んでいると聞き、スザクはシンフォニーフォレストがニナの故郷なのかと彼女の方に視線を移す。
「はう…そう…なんです…」
彼女はバツが悪そうな顔をしており、しどろもどろしながら肯定した。
「妖精族はエレメントとも強い関係…と言うよりもエレメントから誕生するともあるから、密接な関係にあることは間違いないんだ。実際のところエレメントは昔は『精霊魔法』とも呼ばれていたんだ」
「精霊魔法…精霊って?」
「木や火、水や岩などの自然物やあらゆる物質には人間には到底あり得ない不思議な力を持ち、肉体を持たない幽霊のような存在である精霊が宿ると言われていてたんだ。実際のところ精霊を神の使いとして崇めたり、信仰したりする地域もあるんだ」
八百万の神とあるように、この世界にはあらゆる物質や自然物には魂のような存在である精霊が宿っており、自然を愛する人には滅多に見せない姿を現して寵愛や加護などを与えるため人々の信仰心に深く根付いていた。
「まだ魔法と言う存在があやふやだった昔は精霊と契約すること…つまり精霊に見定められた人はエレメントを行使することが出来たとも言われるんだ」
精霊の寵愛や加護とはつまり精霊魔法…エレメント魔法の最初の型であり、それぞれのエレメントを司る精霊から力を借りることで確立させていた。
「それまでは精霊魔法を扱える者はそんなに多くなかったから精霊魔法を巡って拉致事件や暗殺…更には国家間の戦争まで起きていたぐらいだからね」
「そう言えば私の地域でも精霊を信仰する教団があったけど、昔はそう言う事件が後を絶たなかったって言ってたっけ」
ミエナの故郷にも精霊を崇める教徒があるらしく、当時の暮らしや信仰、更にはそれによってもたらされる戦火の爪痕などは実際に歴史に残されていたようだ。
「でも実際のところ精霊はあくまでもエレメントから生み出された生物種であり、エレメントそのものではないと言うのが分かったんだ」
「どう言うこと?」
「精霊は精霊と言う生物種であり、火や水のエレメントではないと言うことだよ。フェニックスだって火の鳥だなんて言われるけど、あくまでも生物であって無生物である炎ではないと言うのと同じさ」
ところが精霊の誕生は確かにエレメントではあるが、だからと言ってそのまま火や水と言った自然物ではなく、あくまでも人間と同じ生物種であることが判明したことで変革期が訪れたのだ。
「確かに契約することでも行使は出来るけど、時代の流れと共に身体の中にあるマナミナをエレメントに変化させることで今のようになったんだ。いわゆる簡略化ってところだね」
当時は精霊に認められ、更に精霊を介してエレメントを使っていたが結局のところわざわざ契約しなくても、マナミナを変質させることで扱えることが判明し、今では精霊魔法ではなくエレメント魔法と呼称されるようになったのだ。
「やがて精霊も長い年月と共に他の生物種と同じく肉体や繁殖能力を持ち、人間のような複雑な思考を持つように進化したんだ。それが妖精族の始祖達さ」
「よく分かんないけど、精霊は妖精族のご先祖様ってこと?」
長くはなったがとにもかくにも妖精族はエレメントとは切っても切れない間柄であり、しかも昔は魔法に当時の種族名が使われたぐらいだった。
「けど、妖精族の故郷であるシンフォニーフォレストの異常が何でエレメントに悪影響を与えているんだよ?そしてこの事に妖精族が関係しているのも解せねぇな」
「そうじゃのう。違法伐採は要するに住む家を奪われているだけで、それが何故このような異常事態を引き起こしておるのじゃ」
結局のところエレメントの異常が何故にシンフォニーフォレストの違法伐採と妖精族のことに繋がるのか納得がいかないと言うステラの意見にユウキュウも同意していた。
「だからこそだよ。エレメントに影響を与えることが出来る存在と言えば妖精族や魔族ぐらいだ。単なる違法伐採だけなら自然のエレメントだけが悪影響を受けるはずなのに、離れた国々の他のエレメントにまで異常をきたしているとなると…」
「妖精族自体にも何かしらの異常が起きたと言うことか」
思えば違法伐採だけなら影響を受けるのは自然のエレメントだけで、その他の離れた地域にある全く関係のない火や水のエレメントにまで不調をきたすなんておかしな話だ。
それもこれも自然環境の変動だけでなく、エレメントに影響を与えることが出来る妖精族にも何かしらのトラブルが起きて、それが巡り巡って離れた国々やミスティーユにもしわ寄せが来たのだろうとルアーネとメイナスは結論づける。
「ニナ、シンフォニーフォレストや妖精族のことについて教えてくれないか。出来れば何が起きているのかも」
「ここからずっと北へ向かった山奥に確かに妖精族の住まうシンフォニーフォレストがあります。あそこは人が足を踏み入れることが少ないため妖精族の聖地とも呼ばれているんです」
ニナが言うには精霊魔法を扱う者を巡って戦争が起きたように、妖精族も精霊と呼ばれていた時代から好事家から征服者まで多くの欲深い人間達に狙われた歴史があるため、人里離れた山奥にあるシンフォニーフォレストへ隠れ住んだと言う。
「そんな所に人間が踏み込んでこんな事態を招くなんて」
何かしらの事情で自分の生まれ故郷を追いやられたニナもまさかそんなことになっているとは思わず、それほどまでに人が踏み入れるのが難しい場所だったらしく、その分ショックが大きそうにも見えた。
「時代の流れだろ、いつまで隠し通せる訳じゃねぇんだ。あたしがダークエルフだったみたいにな」
ダークエルフのことを父親から秘密にされていたステラは確かに当時ならば攻略不可能だっただろうが、文明や技術の進化によって難攻不落とされた城やダンジョンを攻略されることはそう珍しくもないし、シンフォニーフォレストだって例外ではないと告げてくる。
「だったらどうするんだ?シンフォニーフォレストに向かうのか?」
「近々学校側からも何かしら連絡してくるはずだよ。それにコバルトラビリンスやマリナル王国から帰ってきたばかりなんだし、もう少し様子を見よう」
帰ってきたばかりと言うこともあるが、今回の異常事態の全容や難易度などハッキリしていないことが多く、このことは学校や国も把握しているだろうから何かしらの対処を告げてくるはずだ。
「そうね、最近はあなた達はあちこち忙しく行き来してるもの。たまにはゆっくりしたらどうかしら?」
「スザク姉ちゃん、一緒に空を飛ぼう!」
「アメジスお姉ちゃん、また本を読んで」
「レイラ姉ちゃん!あたしとも遊んで〜!」
シスターリラはたまにはゆっくりしたらどうかと提案するも、ここぞとばかりに教会の子供達は遊んで欲しいと集まってくる。
「…リュクウはお風呂入りたい」
「あら、まだお風呂は早いけど水浴びをしたいかしら?」
そんな子供達に影響されたのかリュクウはまだ朝だと言うのにお風呂に入りたいと口にするが、リラはくすくす笑いながら水浴びを提案してくる。
「きゃははは!」
「ふふふっ、気持ち良いかしら?」
井戸からの水を頭から浴びせて貰いリュクウは喜んでおり、シスターリラも嬉しそうにしていた。
「今日は何処まで飛んでく?」
「そうだなぁ」
ハーピーであるトトとフェニックスの炎の翼を両腕に展開したスザクも自由気ままに空を飛んでいた。最初は翼が治ったばかりのトトのリハビリのためにやっていたが、今ではスザクもすっかり空の旅を満喫することとなった。
「大丈夫かい?」
「はふぅ…だいぶ良くなったよ」
すぐに出発をしなかったのはルアーネが賢者の書を通して環境の変動や悪影響が伝わって辛そうにしているからだった。今はベッドに寝かせてメイナスが看病をしていた。
「ルアーネお姉ちゃん、大丈夫?」
「ヤトラくんとアメジスちゃんか…どうしたんだい?」
頭痛薬を飲もうと起き上がると側に本を抱えたヤトラとアメジスがいたことに気が付いた。
「あのね、お姉ちゃんのために本を読んであげようと思って」
ヤトラの腕にはだいぶ読み古したであろう絵本が抱えられていた。背表紙のタイトルには『願いの妖精ニナ』と描かれていた。
「ニナと同じ名前の妖精が主役の本か…読んでみてよ」
「うん…えっとね」
遊び半分で両目を潰された過去を持っていたヤトラだが、スザクのお陰で目が見えるようになり今では文字の読み書きはもちろん、こうして絵本を読めるまでになっていた。
▷▷▷
昔々、ある所に妖精が仲良く暮らす平和な国が森の奥深くに存在していました。そこでは様々なエレメントから妖精が生まれ、自然やモンスターと共に仲良く協力し合っていました。
「ここは素晴らしいけど、この森の外はどうなってるのかしら?」
ある時、ニナと呼ばれる好奇心旺盛な妖精は森の外に探検に出てしまいました。
「わあっ!森では見かけない美味しそうな食べ物!それにこっちは木や石とは違う物で出来た工芸品!」
そこには見たことも聞いたことない食べ物や目新しい物がたくさんあり、ニナは時間を忘れてどんどん森から離れてしまいました。
「ここは…?」
その結果案の定道が分からなくなってしまい、おまけに夜になってしまい途方に暮れてしまうのでした。
「きゃあああ!?助けてぇ〜!?」
森の外の夜の世界はとても危険がいっぱいです。猫や犬、更には獰猛なモンスターや悪い人間がたくさんいて妖精であるニナからすれば周りは敵だらけでした。
「妖精…?大丈夫かい?」
「あなたは…」
逃げるのに疲れ果てていると心優しい人間の青年に拾われ手厚く看病されたのでした。そして暫くお世話になる間にニナはその人間に特別な感情を抱くようになりました。
「私はあなたのことが誰よりも…好き」
そう、ニナは妖精でありながら人間の青年に惚れてしまい添い遂げたいと願うようになった。
「さあ、君は妖精だ。一緒にいると悪い人間に悪用されるよ。君の故郷にお帰り…」
しかし無情にも別れの時は訪れてしまった。青年はニナの恋心に気が付かぬまま、彼女のためを思って故郷である森の奥へ帰そうとするのだった。
「私が妖精であるから…そうだわ!」
無事に帰されるもニナは青年への恋心や想いを忘れることが出来ず、添い遂げられないのは自分が妖精であるからこそと考えたニナはとある方法に行き着いた。
「私を…私をあの人の側で添い遂げられる存在にして!」
その方法は妖精族に伝わる禁忌の術だった。その術を使いニナは自身を妖精とは異なる存在へと変えたのだった。
「妖精族の掟を破り、更に妖精ではなくなったお前は追放とする!」
やがて無断で森の外へと出たことや、禁忌を犯したことでニナは妖精族から追放されるも、全ては想い人と添い遂げるため何の躊躇いもなかった。
「ああ…ようやく、果たせる!」
やがてニナはその青年の元へと辿り着くと姿と身分を偽りながら共に暮らし、時折魔法を使っては忘れ物を届けたり、病気を治したり、温かい料理を用意したり、時として側に寄り添い癒したりして青年のちょっとした望みを叶えてとても幸せでした。
「お兄さん…お兄さん…どうして目を覚さないの」
しかし人間と妖精が結ばれない理由が突如としてニナを襲いました。それは人間と比べて妖精族は長寿であり、ニナも例に漏れず末永く元気でしたが青年はやがて老いていき、やがて永遠の眠りに就くのでした。
「お兄さん、私はいつまでも想っています…」
天命を全うしたかつての青年は手厚く葬られ、追放された身であるニナは森へと帰らず想い人を守るかのようにずっと墓守りをし、彼のことを弔う人が来れば小さな願いを叶えて幸せにすることから『願いの妖精ニナ』と呼ばれるようになりました。
▷▷▷
「おしまい」
「うん、よく読めていたよ」
読み終えたヤトラが本を閉じ、メイナスは彼の頭を優しく撫でて褒めるのだった。そんな中でルアーネはベッドは何かを考える素振りを見せていた。
「どうしたの?」
「願いの妖精ニナがニナと何か関係があるんじゃないかって考えているのかい?」
確かに絵本の内容事態は明るいと言うよりも少し切なかったため思う所があるのだろうかと考えるアメジスだが、メイナスは仲間のニナが絵本の妖精ニナと関連性があるのではと考えていた。
「実はニナと出会ったのは学校の行事でシンフォニーフォレスト付近の国々に向かった時だったんだ。その日は酷い嵐だったんけどね、その日の翌日に裸で倒れているのを見つけたんだ」
彼女はコクリと頷くと話にあったシンフォニーフォレスト付近の国へ行き、そこで初めてニナと対面したと話をするのだった。
「例の妖精族の故郷のところで?ニナちゃんは何でそこに?」
「最初は聞いてみたけど何も覚えていなかったらしいんだ。ただある程度の知識は覚えていたらしく、保護した後で学園長の図らいでボクが暫くお世話していたんだ」
その時はニナは記憶喪失になっており、二人は先輩と後輩と言う間柄ではあったが、馴れ初めはかなり特殊でどちらかと言うと姉妹のようにも思えた。
「その絵本の話を聞いてどうも他人事とは思えないんだ。ニナもその時の記憶を失っていたとしたら尚更ね」
当時のニナは記憶喪失で状況的に保護する必要があったとは言え、あの場所は彼女に取って何か意味があり、曲がりなりにもそこから連れ出したしまったのではと今になってそう考えるルアーネ。
「こんなことを言うのもなんだけど単なる偶然ってことは?」
以上のことはあくまでも推測や疑念の領域でしかないため、絵本に出てくる妖精ニナが仲間のニナであるかどうかは確証がなく、アメジスは全ては偶然起きたことが重なっただけではと疑問に思う。
「物語や神話は現実に起こったことを題材にしている場合だってある。ただあまりにも現実離れしているために作り話で終わってしまうことが多々あるからね」
だが、全否定が出来ないことも確かだ。有名な物語や歴史に刻まれた伝説など現実に起こった出来事を伝承として語り継ぎ、多少手を加えられたり曲解されたりすることで様々な絵空物語として残されているから全て作り話では片付けられないのだ。
「じゃあ、やっぱり落ち着いたらシンフォニーフォレストに向かうかい?」
「そうだね。学園長からも何かしらの通達もないし、君の提案通りもう暫く様子を見るよ」
多少の心配や疑念は残るものの当面は様子見のために教会で待機し、タイミングを見て学校へと向かうことにするのだった。
「綺麗な夕暮れだね、スザクお姉ちゃん」
「ああ、アメジスともこうやって夕日を見たっけ…ん、何だあれ」
夕焼けをトトと見ていたスザクは夕日を背にグンカンドリのようなモンスターがこっちに向かって飛んでくるのを目にするのだった。




