アンデッド誕生は狂気の研究成果
「おい、これは何だよ…!?」
「断言は出来ないけど…間違いない!」
イタマエンペラ達を退けてカウンターの奥にある扉に向かったが、その先にはニナが警戒したように厳かな神殿の祭壇と思わしき場所があった。
ここまで来るのに何度か驚くことはあったが、彼らの目の前に鎮座している物を見れば全て些細なことでしかなかったと言えるだろう。
「ドラゴンの…骨!?」
と言うのもアメジス達の目の前には祭壇に身体が蛇のように長い竜の遺骨が死んでも圧倒的な威圧感を放ちながら鎮座していたからだ。
「今にも動き出しそうで不気味…」
「それに何だか恐ろしいです」
生き物の骨だって見たら見たで恐ろしいが、この竜の遺骨は恐怖とは別の得体の知れない恐ろしさが伝わって来る。
「すぅ…すぅ…」
「あれ?いないと思ったらそんなとこで眠ってたのリュクウちゃん」
こんな殺伐とした雰囲気に似つかわしくない可愛らしい寝息が聞こえると思ったらリュクウは遺骨に寄り添うに眠っていたのだ。
「おい、起きろ。骨を枕にすんな」
「パパ…」
レイラが起こそうとするが親と出会う夢を見ているのか、リュクウは幸せそうに微笑んでいるのを見て起こすのを躊躇うのだった。
「それにしてもこのドラゴンさん、身体が長いですね」
「これは龍かな」
「竜?そう言えばリラがこのダンジョンには古竜がいるとは聞いていたけど…」
メイナスがドラゴンの骨を見て『龍』と言った途端にミエナは古竜のことを口にするが、次第に言葉が続かなくなり他の面々も同じく絶句しながらドラゴンの遺骨を見つめる。
「まさかこの骨って古竜?」
「骨になってもこの迫力はそう思っても良いだろうね」
もう動かないと分かってても恐ろしくて動けないと言うのに、見ているだけで押し潰されそうなプレッシャーが伝わる辺り、この骨がリラの言っていたダンジョンに巣食う古竜なのではと満場一致に至る。
「古竜じゃからのう。年老いて息絶えてもおかしくはないかのう……逝ってしまったか」
「ユウキュウちゃん?」
そんな遺骨を見ていたユウキュウは手の甲で目を擦っており、アメジスは何か様子がおかしいと首を傾げていた。
「…少なくとも戦争の火種にはならないようじゃな」
「そうだね。でなきゃトンデモないことになってただろうね」
ダンジョンの異変や異常気象が古竜の引き起こした現象だったら自分達の手には負えなかっただろうが、今や迫力のある遺骨となってしまって脅威とは言えなかった。
「だとするのなら異常気象の原因は別にあるのか」
「ああ…あるさ」
ルアーネが考え込んでいると、聞いたことのないぶっきらぼうな声に誰もが耳を疑う。
「おい、今誰が喋った?」
「レイラじゃ…ないよね」
この中でぶっきらぼうな話し方をするのはレイラぐらいだが、先程の声色は彼女の物とは思えなかった。
「もしかして、ステラちゃん?」
「悪いか」
もしやと思い振り返ると、ここまで無口で通してきたステラが初めて口を聞いたのだ。しかも静かそうなイメージとは真逆のがさつなギャラにアメジスでなくとも唖然となる。
「ねぇ、さっきボクの話に同意したけど、どう言うことなの?」
「…あたしは知ってんだ。こんなことをしでかした奴らのことをよぉ」
彼女は腹の底からこみ上げる怒りを抑えているのか、どうも声色や口調が強くなっていく。
「まさか…ドラグングニル帝国かい」
「ああ、そうさ。これは全部あいつらの仕業さ」
やはりと言うべきか、あのきな臭い帝国がダンジョンの異変や異常気象に関わっていたようだ。
「何でそんなことを知ってるの?」
「あたしはな…っ!」
しかし一番気になるのは何故ステラが事の成り行きや起承転結を知っているかだった。彼女は何か答えようとするが憎しみを込めた視線を聞いてきたアメジスに向ける。
「…ステラちゃん?」
「あら、誰かと思えば研究所を壊した子達じゃないの」
何か恨まれるようなことをしただろうかと考えていると、アメジスの背後から聞き覚えのある声がして、振り返ると白衣の下に藍色のアーマービキニを着用したアルノが歩み寄ってきたのだ。
「あなたはラウイちゃんと一緒にいた…」
「何でここに…」
ラウイの策略でスザクと共にアルノの研究所に運び込まれたニナとアメジスは、マナミナを吸われ続けて苦しめられたことがあったため二度と顔なんて見たくなかった。
「それに研究所と一緒に死んだと思ってたけど」
それでなくとも脱出する際に研究所は吹き飛んだため、もう二度と会わないだろうと思ってたのにこうやって再会したことに戸惑いを隠せない。
「運が良かったわ、あの時たまたまあなた達が開けた穴の中に落ちたから爆発から免れることご出来たわ」
「そうか、あの時ボクが開けた穴か」
研究所でリッチとローパームをやり過ごす際にルアーネが床に穴を開けたのだが、アルノはそこへ逃げ込んで難を逃れていたのだ。
「アメジスとニナ、それとスザクが世話になったみたいだね。しかしこんな所にまで来て何かしてるなんてまだ彼女達を狙っているのかい」
「いいえ、ここへ来たのは研究所を吹き飛ばされてしまった埋め合わせのためよ。だから厳密には帝国の命令を受けていないわ」
あの研究所は帝国の所有物でもあった。それなのに研究対象に逃げられた挙句、木っ端微塵に吹き飛ばされたとなれば極刑を言い渡されてもおかしくないだろう。
「教えろ。ここで帝国は何してんだ。それにさっきの人間みたいなモンスターもなんなんだ」
「質問が多いけど、今言えるのは私はこのことに直接関係している訳じゃないわ。確かにここには元々帝国の研究所が密かに建てられていたの」
アルノが言うにはコバルトラビリンスは確かに人魚族の住処でもあった。しかしダンジョン内には陸地と変わらないスポットも存在し、しかも今も昔も人が滅多に近寄らないこともあって密かに研究所が建てられていたのだ。
「イタマエンペラ達は研究の副産物で今の今まで帝国の人間の帰りを待っていたのよ」
「やはりお前達、帝国が生み出したのか」
案の定、イタマエンペラに知恵を授けたと言う人物の正体は今よりも前にここへ来ていた帝国の人間だったようだ。
「イタマエンペラだけじゃないわ。ここには他にも先人達の手によって生み出された人造モンスターがいるわ」
「他にも…わひゃっ!?」
「ミエナちゃん!?」
不意に気配を感じ取ったミエナだったが、背後から迫る粘液で濡れた触手が彼女を捕らえて棺桶のような物に押し込める。
『ギギギ…!』
「あれは貝?ううん、カタツムリ?」
棺桶のような厳かな見た目をした二枚貝かと思えば、貝の繋ぎ目の部分はカタツムリに似た軟体生物の背中に繋がっていた。
「『メイデンデンガイ』…とある研究で生み出されたモンスターです。侵入者を捕らえ、『コーティング』のアクティブスキルを持たせてあります」
その正体はアルノの話にあった先人の研究によって生み出された人造モンスターだった。
「コーティング…ってことはここへ来る途中で見つけた、あの真珠の像はこのモンスターの仕業か」
「冒険者の人達をあんな風にするなんて…と言うかミエナちゃんは!?」
不穏な単語を聞いて、あの真珠の像も全て帝国の仕業だと知り嫌悪感を露わにするも、そのメイデンデンガイにミエナが取り込まれたことにハッとなって視線を移す。
「ぷはっ!?何なのよこれ!ヌルヌルして気持ち悪かった!?」
しかしミエナは咄嗟にアーマービキニを脱ぎ、ファントムハートで貝殻をすり抜けたのだが、中の触手の感触を気持ち悪がっていた。
「そう言えばあなたはファントムハートのゴッドプレシャスを持っているのね。あなたを捕らえて身体の隅々を調べてみたいわぁ…」
「ちょっ…怖いんだけど!」
スザクのこともだが、ミエナのゴッドプレシャスも研究材料として興味が尽きないのかアルノは熱い視線を送るも彼女からは怖がられてしまう。
「それにしても何で冒険者の人達をあんな風にしたの!酷いじゃない!」
「あれは私が命令した訳では無いわ。メイデンデンガイはあくまでもここへ侵入した人間を捕えるために真珠にコーティングしたのよ。それにあれは仮死状態になってるだけで、別に死んだ訳ではないわ」
真珠の像になったとなれば死んだものだと思っていたが、どうやら仮死状態になっているだけのようだ。
「せっかくの被験体や実験体を殺すだけじゃ芸がないわ。せっかくだから儀式の実験に使うのよ」
死んでないだけまだマシだと思っていたが、やはり彼女も帝国の人間と言うだけあって背筋がゾッとするような冷酷な考えを持っていた。
「儀式…何をする気じゃ。まさかそのドラゴンの骨と何か関係があるのかのう」
「鋭いわね。まあ、これだけこれ見よがしにあるか気付いてもおかしくないわね」
きな臭い帝国故にロクな事はしないだろうと思っていたが、よく知る手術や解剖と言った実験ではなく、より危険で悪い噂が絶えない魔法や錬金術を使用する儀式と聞き、その上でドラゴンの骨となれば悪い予想は幾らでも出来る。
「私の目的はドラグングニル帝国を頂点に導く史上最強の不死身のドラゴンを生み出すこと。そう、この古竜『青龍』をアンデッドにしてね!」
この部屋に鎮座するドラゴンの遺骨。それは『青龍』と呼ばれる古竜の遺骨であり、アルノはアンデッドに変えて帝国の戦略兵器にしようと考えていたのだ。
「青龍…そうか、何処かで聞いたことがあると思えば天候と水を司るドラゴンとして『龍』の称号を持った最強のドラゴンのことか」
「龍?称号?」
「詳しいわね。地方によってドラゴンは龍とも呼称されているわ。その理由は人間には制御出来ない絶大な力は、あらゆる生態系の頂点に君臨するドラゴンに相応しいとされたからよ」
かつて人々は天変地異や天候などあらゆる自然現象のことを『龍』と称していた。そんな中でただでさえ強力なドラゴンの中に、自然現象を操り司る個体も現れるようになり、人々は畏敬の念を込めて『龍』と呼称するようになったのだ。
「この遺骨はその青龍の中でも長く生き、コバルトラビリンスはもちろん海に長年君臨したとされる二つ名の青龍『リュウグウ』の物よ」
「だからこんな気迫がするのか…」
ドラゴンとして自然現象や天変地異の証である『龍』の称号を持ち、しかもその中でも頂点に君臨した二つ名となれば骨だけでも圧倒されるのも当然だった。
「さて、そろそろ始めるとしましょうか。『サモナス』!」
話はこれぐらいにしてアルノは召喚魔法を使う。すると遺骨の上に魔法陣が展開され、そこから真珠の像がバラバラと落ちて骨の隙間から祭壇の上に落ちていく。
「なんで真珠の像をここに…?」
「ふふふっ、どうせこれから見るのだから教えてあげるわ。これから無機物を使った錬金術を使うのよ」
そう言うとアルノは白衣の中からアンロスの街で見かけたのと同じ錬金術の本を取り出した。
「あれはアンロスの街にあった本!」
「あら、あそこへ行ったのね。確かにあそこでも同じ錬金術の書を使った実験をやったわね」
「よくやったって、まさかあの街のアンデッドを生み出したのも…!」
「そうよ。あのアンデッド達も私達が生み出したのよ」
アルノが錬金術の書を手にしたまま自身の功績を思い出すように呟くため、あの街のアンデッドのことにも関与しているのではと思っていたが本人の口から間違いないと告げられたのだった。
「錬金術の書を知っていると言うことは私の昔の研究所に行ったのね」
「ってことは、私達が隠れたあの場所はあなたの…」
そもそも錬金術の書を見つけた家には白衣や不死鳥の絵があったがアルノの昔の家だったようだ。
「当時は何とか手に入れた『不死鳥の灰』を触媒に、生命力の強いキノコ型モンスター『マタンゴ』をベースにしたアンデッドやデュラハンを生み出したけど感染力が強過ぎたのが問題だったわね」
「時系列が合わないな。アンデッドが大量発生して封鎖されたのは数百年も前だ。そのアンデッドを生み出したなんてあなたは何者なんだ」
アンデッドを生み出す経緯を話せる辺り、彼女がアンロスの街のアンデッドやデュラハンを生み出したのは間違いない。
しかしそれが要因で街は封鎖されたのだが、発生したのは数百年前なのにアルノは年老いた様子がないし、それ以前に長命の種族でなければ今もこうやって生き長らえることは出来ないはずだ。
「それはこの話とは関係ないわ。とにかくこれから行う無機物を使った錬金術なんだけど、既に物体と化した遺骨をベースに真珠の像にされた人々のマナミナや生命力を触媒にすればきっと…」
「死者を冒涜するのも大概にするのじゃ!」
いずれにしてもアルノは錬金術を使って青龍のアンデッドを生み出そうとするが、ユウキュウが珍しく声を荒げたことに誰もがギョッとする。
「錬金術を成功させる前に遺骨を吹っ飛ばしてくれるわ!」
「あら、私が戦力を用意してないとでも?」
爆弾を取り出すユウキュウだが奥から白いトゲのような物が飛んできて爆弾を串刺しにする。
『『『ケケケケ!』』』』
「魚…いいえ、人魚さんの骸骨!?」
尾ひれの骨が暗がりから見えたため最初は魚かと思うが、その上半身は人間の骨格であり、どう見ても人魚の骸骨であった。
「人魚のスケルトンか…また悪趣味だな、人魚達の墓場まで掘り起こしたのか?」
スケルトンとはアンデッドと同じ不死身になった人間のことを指すのだが、最大の違いは見て分かる通り肉体があるかないかと言う問題だ。人魚のスケルトンとなるとコバルトラビリンスに埋葬されていたのを動かしたのだろうと嫌悪感を露わにする。
『ケケケケ!』
「こいつら、骨だから動きが速いぞ!しかも割と頑丈だ!」
レイラが『瞬足』のスキルを使ってナイフで斬りつけようとするも、それよりも素早く動いて回避する人魚スケルトン。
『ケケケケ!』
「きゃあ!?骨を武器にして攻撃してきます!」
身体の骨を外して刺したり、投げたりして攻撃してくる。先程ユウキュウの爆弾を貫いたのも骨による攻撃だった。
『ギエエエエ!』
「メイデンデンガイも襲ってくる。捕まったら一貫の終わりだよ!」
敵は人魚スケルトンだけでなく、メイデンデンガイも触手や殻を開閉したりして襲ってくる。捕まれば錬金術を使用しているアルノの触媒にされてしまう。
「あれ、待って…あそこ!スザクちゃんじゃない!?」
人魚スケルトンの骨を氷の壁で防いでいたアメジスが触媒に使われようとしている真珠の像の中に、快感で蕩けた顔を浮かべながら固まっているスザクの姿に気が付く。
「いないと思ったら真珠の像にされてたの!?」
「それよりもこのままだとスザクまでアンデッドに取り込まれて大変なことになるよ!」
何処に行ったと思ったらまさかアンデッドの触媒にされようとしているとは夢にも思わなかった。しかしこれでなんとしてでも儀式を止めないと、スザクのフェニックスの力まで取り込んでしまう恐れがあった。
「あれ、リュクウちゃんは?遺骨で寝ていたんじゃ…」
「あー!そうだった!リュクウちゃんまで取り込まれちゃうよ!?」
アンロスの街の真実や遺骨の正体など衝撃的な内容が目白押しでリュクウのことも忘れてしまっていたことに気が付く。
「だったら早く突破するぞ!」
「スケルトンはバラバラになってもすぐに復活するよ!だから…自然魔法『アンバー』・ショット!」
爆弾を投げて人魚スケルトンをバラバラにし、その上でルアーネが琥珀を放ってカチカチに固める。
『ギエエエエ!』
「ぬおっ!こいつはどうやって攻略すれば良いのじゃ?こいつの殻には儂の攻撃は通用せんぞ」
倒してホッとするユウキュウをメイデンデンガイは捕らえようと触手を伸ばしてくる。彼女は何とか避けるもこのままではいずれ捕らわれてしまうだろう。
「貝柱を切断するんだ!貝は殻を開閉する際は貝柱と呼ばれる筋肉を収縮させるんだ!」
「だったら…えーい!」
メイナスから貝の弱点を聞いたミエナはファントムハートを発動したまま再び貝殻を透過して侵入する。
「貝柱、貝柱…これね!」
殻の中に入ったミエナは二枚の貝殻を繋ぐ分厚い筋肉のような物を見つけ、収納ボックスから勢いよくデスサイズを引き抜いて真っ二つにする。
『ギャアアアアア!?』
悲鳴と共に貝殻がバカンと開き、中のグロテスクな見た目が露わになる。
「これならば…爆炎魔法『ボム』!」
『ギエエエエ!?グエエエエェェ…!?』
貝殻で守っているためにいざ無防備な中身を攻撃されると脆いらしく、小規模の爆破でも触手や内臓が飛び散り、メイデンデンガイは暫く焼かれる苦痛に藻掻き苦しんでいたが、やがて触手とカタツムリの部分は動かなくなる。
「僕とレイラとニナとで彼女を止める!アメジス達はスザクとリュクウを助けると同時に遺骨を壊すんだ!」
「スザクちゃん!リュクウちゃん!」
二人を助けることはもちろん青龍のアンデッドを生み出さないためにも、錬金術を使用するアルノを止めると同時にベースとなる遺骨を破壊するために役割分担する。
「きゃあああ!?雷!?」
「なんで室内で雷が起きるのよ!?」
ところが遺骨に辿り着く寸前に落雷が落ちてきて、アメジス達の進行が妨げられる。
「……!」
遺骨を守るように全身を鎧で固めた猿の獣人が、身の丈を越える長さの棒を振り回し構え彼女らの前に立ち塞がる。
「何じゃお主は」
「顔はよく分からないけど、猿の獣人みたいだね」
「そこを退いて!メイナス兄さん、もう少しだけ時間を稼いで!」
得体が知れないが少なくとも敵であり戦わざるを得ないことは間違ないため、アメジスはメイナス達に時間稼ぎを要求する。
「「「……」」」
「どうしたのさ!なんでボケッと立ってるの!」
ところが三人はアルノを前にしても何故か手出しせずにその場に立ち尽くしていた。
「…先輩、すみません。遅かったようです…」
「え…それって…」
ニナが今にも泣き出しそうな顔で最悪の事態を謝罪する様子にミエナは透明ながら表情が青ざめる。
『……!』
真珠の像が光り輝き液体のようになったかと思えば、蛇のようにクネクネと宙を舞いながら遺骨を呑み込むと眼光が怪しく光り出す。
『グオオオオォォォン!!』
その直後に先程まで骨しかなかったはずなのに、気の弱い者が耳にすればショック死するほどの咆哮を放ち、コバルトラビリンスと天候と海を支配したと言う経歴を証明するような凄まじい覇気を放つ。
「ふふふっ…あはは!成功したわ!アンデッドドラゴン…いいえ、アンデッドリュウグウの誕生よ!」
「嘘でしょ、これは本当にドラゴンなの…!?」
「並大抵のドラゴンではないとは聞いていた…けど、こんなの想定外過ぎる!?」
アルノが歓喜に打ち震えて笑う中で、ミエナ達はこの世の終わりを目にしたかのように恐怖で震えてしまう。古竜なんて滅多に見れないだろうが、正直知らない方が幸せだったと思えるほどだった。
「それにスザクちゃんとリュクウちゃんが…取り込まれちゃった!?」
更に悪いことにスザクとリュクウまでもがアンデッドリュウグウに取り込まれたことで絶望感に襲われてしまう。
「さあ、降参するなら今の内よ?今なら研究材料として迎え入れてあげるわ。さもなくばアンデッドリュウグウのテストとして餌食になるだけよ?」
完全に優位に立ったアルノはそんな提案を持ち掛けてくるがどっちもお断りだった。
「けっ、またそうやって自分の思い通りに動かす玩具を作るのかよ?」
そんなメイナス達の言葉を見抜いたのかステラが唐突に話し掛けるが、まるで初対面ではないような話し方だった。
「あら、あなた初めて見た気がしないけど、何処かで会ったかしら?」
「これを見れば納得か?」
ところがアルノもまた見覚えがあるのか首を傾げており、それを見たステラはフードを取ると顔の側面から水平に伸びた尖った耳が露わになる。
「その耳は…もしかして君はエルフなのかい?」
フードを被ってて分からなかったが、驚いたことにステラはエルフ族だったのだ。
「いいや、エルフじゃねぇ」
「え、でもどう見てもエルフ族の人では…」
特徴的な長い耳を見れば誰がどう見てもエルフ族だと言うだろうに、何故かステラはそれを否定してくる。
「信じられないだろうな。あたしは元々ダークエルフだからだ」
と言うのもエルフはエルフでも、ダークエルフ族だとステラは述べたのだ。
「ダークエルフって、耳の他に褐色肌と白髪の特徴があったはずよ」
エルフとダークエルフとの違いは魔族の持つマナミナ、ディアマナミナによって褐色肌と白髪になっているのが特徴なのに、ステラの場合は白髪は当てはまるが肌は透き通るような白色をしていた。
「まだ思い出さないか?これを見れば…分かるかぁ!シャアアアァァァ!!」
ステラは甲高いしゃがれた鳴き声と共に舌がチロチロと伸び、肌に白い鱗が浮かび上がったかと思えば、身体がクネクネと長くなっていき姿が変容していく。
『ギシャアアアアアァァァ!!』
ステラの姿はエルフでもダークエルフでもなく、巨大な白い蛇の姿に変身したのだ。
「白い蛇…いいえ、白いバジリスク!?まさか白い死神リッチなの!?」
その姿は間違いなく蛇型モンスターのバジリスクであり、しかも白い体色となれば思い当たるのは『白い死神』の二つ名を持つリッチしかいなかった。
「ステラ…まさか君が白い死神リッチだったのかい!?」
『思い出せ!あたしに何をしたのかを!』
「…!思い出したわ、あなたのことを!」
まさかステラがリッチだとは思わなかったが、アルノは彼女との因縁を思い出す。果たして二人の間に何があったのだろうか?




