海流は気まぐれ
「この部屋は何だろう?」
「何かユラユラ揺れてるな」
スザク達はウニボンの部屋から海の中でユラユラと揺れている花のような海藻が群生している部屋へと泳ぎ着くのだった。
「鑑定したところ、これはウミユリのようじゃ。無害で何もしてこないそうじゃぞ」
「へぇ〜、こんなのもいるんだな」
どうやらここには危険はないらしく、ユラユラと不思議に揺れるウミユリを触りながら泳いで通り抜けていく。
「あれ、道が二つに分かれてる」
「やはりダンジョンは一本道と言う訳にはいかんか」
次の部屋にも危険なモンスターなどはいなかったが、ある意味ではモンスターよりも厄介な分かれ道が立ち塞がった。
「どっちだろう?」
「こっちか?」
こう言う場合は大抵はどちらかが安全でどちらかが危険と言うのが相場だ。だからこそここは慎重になるべきだが、情報がない以上は当てずっぽうになってしまう。
「待て待て、ここは儂に任せろ。パッシブスキル『フォーチュン』!」
「あ、アンロスの街でスザクちゃんを見つける時にやったあれ?」
しかし情報が無ければ得れば良いだけであり、ユウキュウは目を瞑ってどちらが安全か占ってみる。
「ふむ…どちらにも危険な気配はするが、左の方は比較的安全のようじゃな。左じゃ」
『…!』
三人は左の通路を泳いでいくと選ばなかった右の通路からは不気味な眼光と忌々しそうにのたうち回る触手が覗いていた。
「今度は穴だらけの部屋じゃな」
「何の穴?」
先へ泳いでいくと今度は所々に腕一本分の穴が開いた部屋に辿り着いた。
「何か入ってんのかな?」
「スザクちゃん!危ないよ!」
下手に触れない方が良いのだが、スザクは好奇心が勝って穴の中を覗いてみる。すると案の定、中から長くて黒い何かが飛び出してビキニを広げるように胸の谷間に潜り込む。
「わっ!何だ!?」
「蛇…!?」
「いや、アナゴじゃなあれは」
スザクの胸の谷間に潜り込んだのは蛇のような長い身体に大きな目玉をしたアナゴのようなモンスターだった。
「おおっ、何かくすぐった…はうあっ!?♡」
突然の訪問者に驚いているとアナゴは電撃を発して、彼女のビキニの下の無防備な果実を痺れさせる。
「うあああ…♡何だか、身体…ビリビリしてくる…♡」
「何じゃ此奴は…ぬあっ!?し…尻尾に…くうん…!?」
胸に流れてくる電流にスザクは蕩けそうになっており、唖然としているユウキュウの狐の尻尾にも同じアナゴが巻き付き電撃を流してくる。
「うわわ!もっと集まって来て…ひゃん!?止め、くすぐったい!?アーマービキニの下に入らないでぇ!?」
「あばばばば…♡そんなとこに入っちゃダメぇ…♡おかしくなっちゃうぅ…♡」
「これ!?止めんか!?」
穴から出てきたアナゴ達は表面がヌルヌルの粘液で覆われており、スザク達のアーマービキニの隙間から潜り込んで出たり入ったり、或いは電撃を流してアーマービキニの下の無防備な身体を痺れさせてくる。
これは『カンデンチンアナゴ』と呼ばれるモンスターで、大きなモンスターや人間の身体に特殊な粘液を擦り付け、その摩擦で体内に電気を蓄える性質を持ったモンスターで、その名の通り乾電池としても使われることがあるのだ。
「ひあああ♡骨の髄までぇ…痺れちゃううぅぅ…♡」
ただし野生種は捕食対象にされることが多く、特に基本的に無害である人間であれば一斉に充電しようと一斉に群がってくる性質がある。死ぬことはないが女性に取っては強烈な責め苦になるだろう。スザクを除いては…。
「ぐうう…好き放題しおって…いい加減に…むお!?」
「な…何!?」
痺れる身体に鞭を打ってカンデンチンアナゴを振り払おうとするが、周りの海水が急に動き出し引っ張られるような感覚を味わう。
「ひゃああ!?また海流が…!?」
「な…流れるぞ!?」
「ふあああ♡気持ち良くて…動けないよぉ…♡」
タイミングが良いのか悪いのか、ダンジョンに入った(?)時と同じように海流が発生して痺れと快感に身動きが取れない三人はあっさりと押し流されてしまう。
「ぬう…何処まで流されるのじゃ…」
「海流で上手く動けない…」
先程よりも長い時間流されているが、脱出したくともあまりの水流の強さにされるがままだった。
「うわ!何かくっついてくる?」
その間に同じく海流に流されて来たのか、星型の物体がスザクの胸の谷間に入り込む。
「わわ…!いっぱいくっついてくる!うひゃっ!」
「な…何じゃ…弄ってくるぞ!?」
スザクだけでなくアメジスやユウキュウにもくっつき、更に裏面には繊毛のような毛のような触手が生えているのか這い回ってて妙にくすぐったいのだ。
「あはは!な、何だよこれくすぐったいぞ…♡」
「何じゃこれは…まさかモンスター…いたっ!?」
「痛い痛い!?何か噛み付いてくる!?」
最初はくすぐったさを感じていたが、肉を食べようとしているのか次第に牙を食い込ませてくるのだ。
「思い出した!これは確か『ヒトデビル』って言うモンスターだよ!集団で纏わりついて噛み付いてくるモンスターだよ!」
「早く気付かんか!」
星型の物体の正体はヒトデビルと言うモンスターだったのだ。見た目は普通のヒトデと変わらないが貪欲な食欲を持ち、集団になるとイナゴのように取り付いた相手を骨になるまで食らいつくす恐るべきモンスターなのだ。
「振り払うのじゃ!パッシブスキル『旋回』!」
「氷魔法『アイス』・フルスキン!」
ユウキュウはスキルで高速回転し、アメジスは氷魔法を全身に巡らせてヒトデビルを振り払う。
「ううん…♡はうん…♡あたしの身体ぁ…♡齧っちゃ…♡」
「そろそろじゃな…」
蜂の群れに襲われるだけでも苦痛だと言うのに、小さな肉食の生き物に群がられ身体を貪り食われる痛みは想像を絶する物だろうが、やはりスザクに取っては想像を絶するほどの快感に変わっていき、次第に身体が熱を帯び始めていく。
「あ…♡あああ…♡気持ち良いいいぃぃぃ♡」
あらかじめ離れていたが、それでもスザクの絶頂を表すような炎と熱波はしっかりと伝わり、水中にいても温もりが伝わって来てまるでお湯に浸かっているかのようだった。
「おお…温いのう」
「お風呂みたいだね…」
「はふぁ…♡これも刺激的ぃ…♡」
炎と熱波が止まると恍惚の表情を浮かべるスザクが漂っており、彼女の周りには熱で衰弱したヒトデビル達も浮かんでいた。
「あれ、ところでここは?」
「いつの間にか海流が止まったようじゃな」
騒ぎに夢中で忘れていたが今は海流に乗っていたはずだが、ふと気が付くと今は流れが穏やかどころか、自分達はまた異なる部屋の中に止まっていた。
「…しかしここは何やらヤバそうな場所じゃのう。見ろ」
「うん…?何でこここんなに骨があるんだ…?」
快感の余韻に浸るかのように漂っていたスザクはユウキュウに言われ部屋を見渡すと、周囲に骨がたくさん散らばっているのに気が付いた。
「どうやらここには危険なモンスターがいるようじゃな」
「うん…あの穴に何かいる!」
この部屋の不気味な光景は奥の穴の中に潜む、強力なモンスターが作り出したようだ。そしてご希望に沿って姿を見せるかのようにその全容が露わになる。
『ギエエエエ!』
「デッカい…エビ?」
姿を現したのは迷彩柄の巨大なロブスターのようなモンスターだった。
「こいつは海の暴れ戦車『ロブスパンツァー』じゃ!」
今度はユウキュウがこのモンスターのことを知っていたらしく、その名前の通りまるで戦車のような武骨な甲殻と大砲顔負けの巨大なハサミが一番の特徴だった。
『ギエエエエ…!』
「気を付けろ、此奴は雑食で目に付く物を餌にするから気を付けろ」
解説された通りロブスパンツァーは自分の縄張り内に侵入したユウキュウ達を威嚇すると同時に捕食しようとハサミを互いに擦り合わせ金属音を奏でる。
「それと気を付けるのはハサミじゃ」
「あれで切り裂くの?」
やはり一番気にするべきことはロブスパンツァーの身体の大半を占める、あのギロチンのような大きなハサミだった。まるで十人の首を切り落とすことが出来るようなサイズと切れ味に見ていてゾッとする。
「それもじゃが、問題は…」
『ギエエエエ…!』
他にも問題があるようだがロブスパンツァーはハサミの先端を三人に向け、大きく開いたかと思えば一気に閉じる。
「はうあっ!?」
「えっ!?スザクちゃん!?」
何が起きたか分からないが、ロブスパンツァーがハサミを開閉した瞬間にスザクが部屋の壁に叩きつけられていたのだ。
「あう…♡今何が…強烈な一撃が…♡」
「ロブスパンツァーはハサミの開閉をすることで人工的に水流を作り出し、それを弾丸のように撃ち込めるスキルがあるのじゃ!じゃから接近戦はもちろん距離を取って戦う場合も油断ならないのじゃ!」
水弾を身体に撃ち込まれ壁にめり込んでいるスザクは新感覚の激痛にヒクヒクとした笑顔を浮かべていた。しかしよくよく考えてみればアーマービキニをしているのにスザクが絶頂している以上、それ相応のダメージを受けていると言うことになる。
そんな攻撃をまともに受ければ、そしてスザクでなければ大ダメージは免れないだろう。
『ギエエエエ!』
「氷魔法『アイス』・ウォール!」
再びハサミを開閉して水弾を放ってくるが、アメジスが氷の壁を魔法で作り出して防御する。
「弱点はあるの?」
「奴の甲羅は硬くて物理攻撃はほぼ不可能じゃ。魔法で攻撃すれば幾ばくかは通じるはずじゃ」
確かに甲殻類は骨格を持たない代わりに、体の表面を頑丈な甲羅で覆っているため、ちょっとやそっとの物理攻撃ではビクともしないだろう。だからこそ物理攻撃とは異なる魔法による攻撃が有効打になるようだ。
『ギエエエエ!』
「きゃあ!?氷の壁を壊してくる!」
水弾だけではキリがないと判断したロブスパンツァーはハサミを氷の壁に突き刺して、まるで缶切りのようにこじ開けようとしてくる。
「海中で何処まで使えるか分からんが…ほれ!」
『ギュイ?』
氷をこじ開けて身を乗り出してきたロブスパンツァーが目にしたのはユウキュウの投げた丸いアイテムだった。
「爆炎魔法『ボム』!」
呪文を唱えた瞬間にアイテムは破裂し爆炎でロブスパンツァーを包み込む。
『ギエエエエ!』
「やはり硬いな。おまけに小規模の爆弾と海中ではまるで話にならんか」
ダメ元で爆弾を使うも、硬い甲殻を持つロブスパンツァーには歯が立たなかった。
『ギュイ〜!』
「いたたたっ!?シャボン玉!?」
今度は口から無数のシャボン玉を放ってくるが、綺麗だと言う前に何かに当たると爆竹のように弾けてくるのだ。
『ギエエエエ!』
「きゃあ!?離して!?」
「しまった!アメジス!」
怯んだところでロブスパンツァーのハサミがアメジスを掴み上げ、口の中で不気味に動く小さな無数のハサミを見せつける。
「もう…ダメ!?」
このままだと生きたままあの無数のハサミで身体をズタズタにされ挽き肉にされると思い目を瞑る。だが、痛みがない代わりに周りの水が妙に温かくなる。
「アメジスを…離せ!」
『ギュイ!?』
「スザクちゃん!」
壁から這い出たスザクは腕をフェニックスの翼にしてロブスパンツァーに組み付いたのだ。
『ギエエエエ!?』
「ひゃあ〜!?」
基本的に温度が変わらない海中にいるため、スザクの炎でいきなり水温が上がったことにロブスパンツァーは驚いて暴れアメジスを乱暴に放り投げる。
「よっと!大丈夫か?」
「あ…ありがとう…」
水中だから落下することはなかったがスザクはアメジスをお姫様抱っこし無事であることに微笑み、対するアメジスも顔を赤くしてお礼を言う。
「バカ者!乳繰り合ってる場合か!」
「うわっ!?」
そんな二人の世界に浸っているとロブスパンツァーのハサミが今度はスザクを捕らえた。
『ギエエエエ!』
「うぐっ!?」
よほど温度を上げられたのが気に入らなかったのか両腕のハサミでスザクの両腕を挟んで羽交い締めのようにする。
『ギュイ〜…ギエエエエ!』
「あうあ!?」
意を決したようにロブスパンツァーはスザクを頭から口の中に捻り込み、口の中の獲物を細かく刻むためのハサミを口に押し込んだスザクに群がらせる。
『ギエエエエ!』
「うあああぁぁぁ…!?」
更に口の中を火傷しないように羽交い締めした両腕をハサミで切り落とす。これでもう自身の身体に火傷を負わせることは出来ないと確信し、口の中に放り込んだスザクの肉体をバラバラに刻んで味を堪能するだけだ。
『ギエエエエ!ギエエエエ!』
「さっきはアメジスとスザクに油断するなと言ったが…今度はお主の番のようじゃな」
「もう手遅れだと思うけど」
勝利の雄叫びを挙げていたロブスパンツァーだが、ユウキュウとアメジスは仲間が食べられたはずなのに平然としており、寧ろこちらを気の毒そうに見ていた。
『…!?』
ユウキュウとアメジスのことで違和感を抱いていたが、次第に自身の肉体の方の違和感に注目が集まる。激しい運動をしていないのに関わらず、全身が妙に熱を帯びているようだった。
「良かったのう、お主が食ったのは不老不死の火の鳥…『フェニックス』じゃ。一生に食えるかどうか分からん鳥じゃ。よく堪能すると良い、生きが良過ぎるかもしれんがな」
元々本能的な行動しか出来ないロブスパンツァーに言葉を理解出来るかどうかは不明だが、体の違和感の正体は先程捕食したスザクで間違いなかった。
「あ…♡うん…♡あたしの腕…切られちゃったぁ…♡それに…こんなにいっぱい…あたしの身体ぁ…♡細切りにされちゃう…♡」
口の中を小さなハサミで身体を切られていくスザクに取って、全身を小さくも鋭い快感が四方八方から突き抜けていくも同然であり、腕を切り落とされた激痛もまた快感の一つとなり、呑まれる道すじはさながら絶頂への前座も同然であり、全身から再生の炎が出てロブスパンツァーの体内を焼いていたのだ。
『〜!ギエエエエ〜!?』
「うあああ♡あたしの炎…掻き消されちゃううぅぅ♡」
体内のスザクの炎を消火するつもりか、或いは吐き出すためかは不明だが体の奥から高圧水流を出して押し流そうとする。
しかし所々を刻まれたが、再生の炎で再生しかけていたスザクの魅力的な身体が引っ掛かったのか、押し流せず高圧水流はスザクに集中的に浴びせられることとなった。
「ダメぇ…♡来ちゃううぅぅ♡もう…気持ち良過ぎてぇ…♡逝っちゃううううぅぅぅぅ!♡」
『ギエエエエエエ!?』
遂に絶頂を向かえたらしくロブスパンツァーの体内でスザクの再生の炎が爆発的に膨れ上がり、高圧水流とぶつかっていたこともあり水蒸気爆発を引き起こしコバルトラビリンスが震撼するのだった。
「ううっ…どうなったの?」
「さすがのロブスパンツァーも、体内からの熱と爆発には耐えられんかったようじゃな。見ろ、甲羅と身がそこら中を漂っておる」
あらかじめ避難していた二人はどうなったか確認すると、ロブスパンツァーは全身が茹で上がったように赤くなり、背中の甲羅が破裂して中の美味しそうな赤いエビの身が剥き出しになっていた。
「スザクちゃんは?」
「エビの中じゃろう…まだ詰まってるのかもしれん」
泳いでロブスパンツァーの口を見てみると快感の余韻でピクピクと痙攣しているスザクの下半身が見えた。
「何かセンシティブ」
「何じゃそれは?とにかく引っ張り出すぞ」
思わず生唾を呑むアメジスを尻目にユウキュウはスザクの足を掴む。
「おおっ!?何じゃ、また海流か!?」
「こんな時に…!?」
ところがまたしても海流が発生する。押し流されないように思わずロブスパンツァーにしがみつくが…
「いかん!死んでいるから踏ん張りが効かんのか!?」
「流される!?」
苦戦させられたが今やエビの剥き身になってしまったロブスパンツァーでは、海流には持ち堪えられず共に流されてしまうのだった。
「今度は何処へ流されるのじゃ?」
「危ない!?」
もはや流れに逆らうことは止めて何処かへ辿り着くまでされるがままだったが、石柱が目の前に迫ってくるのを見てアメジスは慌ててユウキュウを抱き寄せる。その直後にロブスパンツァーの身体が石柱にぶつかり胴体と尻尾の部分で分かれてしまう。
「あ…スザクちゃんー!?」
尻尾の部分にはアメジスとユウキュウがいたのだが、胴体の方にはまだ口の中に入ったままのスザクがいたのだ。しかも石柱にぶつかっていることで海流も二つに分かれて互いに離れ離れになってしまう。
「あう!?今度は何処に…」
「アメジス?ユウキュウ?」
「む?メイナスか?」
流されるままにロブスパンツァーの尻尾に掴まっていたら、次第に流れが弱まり何処かに落ちるのだが、そこにはメイナスがいたのだ。
「良かった!二人は無事だったんだね!」
「ユウキュウちゃんも無事で良かったです!」
「これ、ニナよ。苦しいぞ…」
そこにはミエナとニナもいて二人の合流を喜んでおり、リュクウは疲れているのか眠っていた。
「本当はスザクちゃんと一緒だったんだけど…離れ離れになっちゃって」
「そうだったのか。とにかく無事で良かったけど、この尻尾はもしかしてAランクモンスターのロブスパンツァーかい?よく仕留められたね」
メイナス達は他に途中までスザクが一緒であったこと、Aランクモンスターのロブスパンツァーと一戦交えたことを知るのだった。
「ずっと気になっておったが…周りにあるこの不気味な像はなんじゃ?」
「確かに…何だか生きているみたい」
再会を喜び合うのも束の間、自分達がいるこの広間にはまるで本物の生きた人間を思わせるような不気味な像が立ち並んで異様な空気を作り出していた。
「それなんだけど実は…これは僕達の憶測でしかないけど…もしかすると…この像は…」
「何じゃ歯切れが悪いの。言いたいことがあるのならハッキリせい」
像に付いては何か分かったことがあるようだが、言いづらい内容なのか中々切り出せず、痺れを切らしたようにユウキュウが結論を急がせる。
「…!実はこの像は元々…本物の生きた人間なんじゃないかって思うんだ」
一呼吸置いてメイナスは自分達が辿り着いた結論、この像が実は自分達と同じ生きた人間なのではないかと言うことを述べたのだ。
「何を言っておる…これが人間じゃと?」
「ガーゴイルとかなら分かるけど、人間や異種族にはこんなことを出来る人なんて早々いないんじゃ…」
身体を無生物や無機物に出来る存在はそう多くはいない。出来るのは一部のモンスターやその力を持つ者ぐらいだ。それ以前にそんなことがあったら恐ろしいため、幾らメイナスの言葉でも信じられなかった。
「この像の素材…真珠で出来てるんだ」
「真珠って…貝から採れるあれのこと?」
「そう、真珠の作り方は貝の中に真珠の核となる物を入れ、後は時間が掛かるけど貝が体内でその核を溶液のような物で包み込んで真珠にするんだ」
「作り方事態は単純そうじゃが…待てよ、真珠はもっと小さいじゃろ。おまけにこんなリアルな造形だと言うのに削ったり研磨した後が見られないぞ」
真珠が出来るまでの過程をメイナスから聞くも、それだとここまで大きい上に今にも動き出しそうな出来栄えの真珠が自然に出来るとは思えないし、人の手が加えられたとしても形跡が見受けられなかった。
「それに何だか苦しくて何かを訴えているような顔をしているよ」
「そうだろうね…きっと生きたまま真珠の像にされたんだから」
どの像も苦痛に歪んだ顔を浮かべており、中には絶望の余り真珠の涙を流している像もあった。
「ちょっと待つのじゃ!仮にお主の話を鵜呑みにするなら、この像は元々は人間だと言うことになるがこいつらは何者じゃ?」
もしも人間が真珠の像になると言うのなら、この像は元々何者かと言うことになる。
「マリナル王国で行方不明になった冒険者が大勢いたでしょ?その人達は今やこの像になってるんだよ」
「そんな…一体誰がこんなことを…!?」
確かに行方不明者が大勢出ているとは話には聞いていた。冒険者稼業となれば生きて帰ってこれる保証がある訳でもないのは知っていた。それでもこんな惨い結末を迎えれば誰だって報われないだろう。
「僕の知る限りでは魔法やスキルにこんな状態異常を引き起こす物はない。そもそもさっきはああは言ったけど、人間をそのまま真珠に変えるモンスターや生き物は聞いたことがない。けど、二つハッキリしたことがある」
先程歯切れが悪かったのは博識な彼でも、予想外の事態が起きていて断言出来なかったからだが、二つだけ確かなことがある。
「このダンジョンには人工的に強化されたモンスターがいるってことだよ」
「人工的じゃと…」
「アンデッドと同じさ。自然に存在しない、だから自然の摂理や理から外れたようなことが出来るんだ」
確かにアンロスの街のアンデッド達は人の手によって不死身にされたモンスターだった。人間を真珠の像にした犯人も人間とは思えないし、自然のモンスターとも考えられない。それもこれも人の手が加えられているのなら辻褄が合う。
「そしてもう一つ分かったのが…僕達もだけど、まだ合流していない仲間達が真珠の像にされる危険に晒されているってことさ!?」
二つ目に分かったことは最悪の事態だった。もしもメイナスの考えが全てその通りなら、まだ合流していないスザク、レイラ、ルアーネが同じ末路を辿る可能性があり、最悪自分達も同じようになるのではと言う内容だった。
「ううん…?ここは?」
そのスザクは海流に流される内に見知らぬ場所に一人で漂っていた。
「くぁ〜…参ったなぁ…ここ何処だ…?」
『…!』
快感の余韻から覚めたスザクは伸びとあくびをしながら辺りを見回していたが、頭上から窄んだ長い口が伸びてくることに気が付かなかった。
「ふむぐ!?」
その瞬間にスザクの頭は丸呑みにされ、次の瞬間には快感を感じる前に凄まじい吸引力で吸い上げられ、ボックンと言う音と共に爪先まで丸呑みにされるのだった。




