表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/53

異変は自ずと誘ってくる

「皆〜!朝だぞ〜!」


教会に朝日が差し込むと同時にニーナの元気な呼び声が響き渡る。


「ん〜!ミスティーユの朝ってこんなに清々しいんだ〜!」


「ずっとここに住んでて気が付かなかったけど、確かにこんなのはパズレインスクールの寮じゃ味わえないな!」


あの後で教会で寝泊まりしていたルアーネはミスティーユの爽やかな空気を受けて気持ち良く伸びをしており、レイラも久々の里帰りでリフレッシュした様子だった。


「昨日は楽しかったね〜」


「あんなに飲んで食べて騒ぎ立てた宴会は久しぶりじゃったしのう、きゅほほ…」


昨日は温泉の復活をお祝いして、倒したマンタイトの丸焼きを囲んでミスティーユ全体で宴会騒ぎをしていた。今でも興奮が冷めないのかミエナとユウキュウは余韻でウズウズしていた。


「リュクウちゃんもよく寝れた?」


「うん、おはよう。昨日のケーキは美味しかったね」


温泉の復活もだが新しく教会の仲間に加入したリュクウのお祝いも一緒にやったのだ。彼女もとても楽しかったらしく、寝起きながら満面の笑みを浮かべていた。


「ふぁ〜…あ、失礼しました。スザクちゃんとアメジスちゃんは?」


「あー、多分二人は…」


大きく欠伸をしていたが慌てて口を塞いで恥ずかしそうにするニナはまだ起きていないアメジスとスザクのことを話題に出す。そんな中で見慣れた様子のメイナスは苦笑いしながら彼女らのベッドの方を見る。


「はうあ…♡幸せ…♡」


「あう…♡根こそぎ吸われたぁ…♡」


布団を捲るとスザクとアメジスが裸で抱き合っており、しかも二人は幸せそうに快感に浸った様子を見せており見慣れない人や子供には刺激的な光景だった。


「はわわ…これは…!?」


「スゴい光景だね…少し羨ましいかも…」


見慣れないニナは顔を真っ赤にして両手で顔を覆うも興味があるのか指の合間からチラチラと二人を見ており、ルアーネはスザクに責められて以降変な扉が開きっぱなしなのかうっとりした様子を見せていた。


「君達またかい?スザクはともかくアメジスは吸血鬼(ヴァンパイア)夢魔(サキュバス)の力に目覚めてからは積極的過ぎないかい?」


「前までは鼻血出しまくってマットレスを真っ赤に染めてたのによ」


裸になったスザクに抱かれて毎晩鼻血を出してベッドを赤く染める光景は、もはや教会のメンバーに取っては見慣れた物で騒ぐ様子を見せずにスルーしていた。


しかしドラグングニル帝国に捕らわれた際に偶然にも両種の力が覚醒したことで、アメジスは開き直ったかのように鼻血を出した後に寝込みを襲ったのか、スザクの身体の至る所にキスマークが見受けられマナミナや血などを摂取された痕跡があった。


「ミック!グリー!朝だよ!」


『ポポ!』


『グルルル…』


ヤトラは教会の窓からミックススライムのミックと、ミスティーユに住まうことになったドラゴンを起こしていた。名前はトトの提案で種族名から『グリー』と名付けられ、基本的に教会は外の庭を寝床として与えられたのだった。


「まさかあのドラゴンがここに住むことになるなんてねぇ」


「世の中どうなるか分からないね。まあ、勉強や知識だけで全てが分かる訳じゃないからね」


「おい、それは当てつけか嫌味っぽいぞ」


全員が席について祈りを捧げた後に食事と談話を始める。話題としては先程起こされて、近くの森で仕留めた獲物を食べるグリーのことに付いてだった。


「ところでルアーネ。君は昨日、何か話をしようとしていなかったかい?」


「あ、それ?昨日は楽しげな雰囲気を壊す訳にもいかなかったしね」


スクールから戻って来たルアーネはマンタイトがいることにさほど驚く様子は見せず、寧ろ当然のような口振りをしていたためメイナスは落ち着いた今ならどう言うことか聞けるだろうと訊ねる。


「順を追って説明するとね、報告は無事に完了したよ。まあ、学園長には本当のことを話したけどね」


「学園長は何か言ってた?」


「どうやら学園長はリッチのことは知っていたけど、リッチが帝国の研究施設を目指してたらしくてね。その因果関係を遠回しから調べて欲しかったらしいんだ」


今回のクエストの依頼者であるルアーネの師匠である学園長は、リッチのことはもちろん帝国の施設があることも知っていたようだ。そしてその二つがどう言う関係にあるかスザク達に調べて欲しかったようだ。


「でも危なかったんだよ。列車の人達も全員帝国の人達だったし…」


「今回ばかりはもう本当にダメかと思ったぞ。アメジスもスザクもニナも捕まったんだからな」


ところがダンジョンに向かう列車の同乗者が帝国の手先の者達で構成されていたために三人は捕まってしまった。クエストには危険がつきものとは言え、今回ばかりはもう終わりだと思ってしまうぐらいに絶望的だった。


「そこは本当に想定外だったんだ。学園長が言うには帝国は鉱夫達に施設を建設したり、ケンタウロス族達を追い払ったりする用心棒兼労働力として雇ってたみたいなんだ」


あれだけ大きな研究施設を建てられる軍事国家なら、鉱夫達を組織丸ごと雇えるだけの資金は潤沢にあってもおかしくないだろう。


「でも、それならラウイちゃん達は何でスザクちゃんのことをフェニックスって知っていたのでしょうか?」


「検討は付いているよ。きっとアメジスを襲ったあのAランク冒険者達がそのことを事前に話していたんだろうね」


そこで気になったのは鉱夫達やラウイがスザクの正体がフェニックスだと知っていたことだが、そこは帝国お抱えの冒険者達が周知させたのだろうとメイナスが推察する。


「結果的に(わし)らのことを知る連中はほとんど葬り去られた。施設も爆破したため奴らにも甚大な被害を与えられたしのう」


「これで暫く大人しくしてくれると嬉しいんだけどね」


「出来ることなら金輪際(こんりんざい)あたしらの目の前に現れて欲しくないがな」


リッチとローパーム、更に土地を奪い返そうと奮起したケンタウロス族達が暴れたことで職員は葬られ、更には秘密を守るために施設を爆破したため帝国に大打撃を与えたため暫くは大人しくしているはずだ。


「取り敢えず帝国はこれでひとまず問題ないだろうね。それでここからが本題なんだけど、ルアーネは何でミスティーユにマンタイトがいたことに違和感を抱かなかったんだい?」


既に解決した事案の話はそれくらいにして、メイナスはルアーネがマンタイトのことを何の疑問も持たず涼しい顔で見ていた理由を聞こうとする。


「それなんだよ。学園長から新しいクエストを預かったんだ」


「あん?それとマンタイトが何の関係があるんだよ?」


聞きたいのは理由なのに何故かルアーネは学園長から新たなるクエストを授かったと話し始めるため首を傾げる。


「大ありだよ。知っての通りマンタイトの生息地は海だ。けど、こんな内陸に来る理由は一つしかないよ」


「…どんな理由だ?」


「生息地を追われた。と考えた方が自然だね」


スザクには答えられなかったが代わりにメイナスが答えを述べたのだった。


「生息地を追われたって…確かマンタイトは海に生息するBランクモンスターなのにどうして?」


「逆に追い込む側じゃと思うがのう」


追われて迷い込むのは低いランクのモンスターばかりだが、相手は明らかに高いランクのなのに生息地を追われるなんて前代未聞の事態だった。


「それってマンタイトより強いモンスターが現れたからじゃないのか?」


「確かにそれしかないよね。もしかしてそのクエストって、そのモンスターの討伐なの?」


考えられるとしてBランクよりも上のランクのモンスターが出現したのではと、スザクらしいシンプルな考えにアメジスも賛同し、そのクエストの内容がモンスター討伐なのかと訊ね返す。


「んー、ちょっと違うかな。何もモンスターが原因とは限らないんだ」


「モンスター以外の原因があるってのか?」


「実はここ最近、海辺の国で異常気象が発生しているんだ。ひょっとすると原因はそこにあるんじゃないかって思ってるんだ」


「異常気象か…確かにマンタイトは海と空の両方に生息するモンスターだから、きっとその異常気象で海にも空にもいられなくなったんだろうね」


マンタイトがミスティーユに迷い込んだ原因はより強いモンスターの存在もあるだろうが、海沿いの国で異常気象も原因の一つだとルアーネは見解を述べ、メイナスもマンタイトの生態を述べながら同意していた。


「先輩、モンスターの討伐ならまだ分かりますけど、相手が異常気象では…」


「そんなのどうにか出来るのは魔王や幻獣ぐらいじゃ。儂も全盛期ならのう…」


モンスターなら直接触れられるし倒すことも出来る。しかし異常気象は自然の力そのものであるため倒す以前に触れないし、そもそも人間にどうにか出来る代物ではない。


そんなことが出来るのは絶大な力を持つ魔王や神の(たぐい)、或いは気象に由来する力や概念を持つ幻獣やゴッドプレシャスぐらいだ。


「学園長が言うには異常気象はどうやらダンジョンで起きているらしいんだ。それを解決するのがボク達の次のクエストだよ」


「ダンジョンで?それって気象を操れるようなゴッドプレシャスがあるってこと?」


「かもしれないよ。ボクらはそれを調べる必要があるんだ」


新しいクエストの全容は海沿いの国で起こる異常気象の解決だが、詳細はその国のダンジョンにある原因がの調査であった。それはつまり前述の通り、気象を操れるだけのゴッドプレシャスや幻獣などが待ち構えていると言っても過言ではないだろう。


「だからルアーネはマンタイトを見ても何ら疑問に思わなかったんだね。それで僕らが調査に行くそのダンジョンの名前は?」


「『マリナル王国』の海底ダンジョン…『コバルトラビリンス』だよ」


「コバルト…ラビリンス?」


海沿いの国の名前とダンジョンの名前が明らかになると話を聞いていたリュクウが反応を示す。


「リュクウちゃん、何か知ってるの?」


「そこ…知ってるかも…」


「そう言えば君は人魚族だったよね。コバルトラビリンスは人魚族の住処と言うらしいし、もしかして君の故郷って…」


リュクウはダンジョンの名前に反応し尚且(なおか)つ既視感がある様子を見せ、その上で彼女と同族である人魚族の住処となれば考えられるのは一つ。


「もしかしてリュクウちゃんのお家はコバルトラビリンス?」


「考えられるね。この子がママと呼んでいた人は明らかに人間族だった。恐らく何かの目的でこの子をコバルトラビリンスから連れ去ったとしたら…」


「可能性はありそうだね。もしかするとリュクウの本当のパパとママが今もいるかも」


孤児となり教会に預けられることとなったリュクウだが、何処から連れ去られたか判明した今、彼女を両親の元へと送り返すチャンスかもしれない。


「え…まさかもうリュクウとお別れするの!?」


「やだー!?」


メイナスが両親の元へリュクウを返すと聞いて、せっかく家族になったばかりなのにもうお別れすると聞いて子供達は駄々をこねる。


「まだそうと決まった訳じゃないよ…」


「でも見つかったらリュクウとお別れするんでしょ!?」


「リュクウちゃんと…もうさよならをするの?」


「…皆、まだそうと決まった訳でもないのにあれこれ決め付けない方が良いわよ。けど、リュクウちゃんを探しているパパとママがいるのならキチンと会わせるべきよ」


何とか宥めようとするが子供達は別れるのが辛く嫌がっているが、シスターの優しくもそれでいてリュクウと彼女の両親の気持ちを尊重すべきだと諭すのだった。


「しかしそれ以前に問題があるぞ。海底のダンジョンとなるとあたしらは呼吸が出来ないぞ」


「あたしは…あの冷たく息が出来ずに溺れる感覚は…堪んないんだけどなぁ…♡」


「お前と一緒にするな。けどどうやって攻略する気なんだ?」


リュクウは人魚族であるため水中は問題ないし、スザクは不死身であるため息が出来なくとも一応は活動出来るが、それ以外のメンバーは水中では無力に等しいため海底ダンジョンを攻略する寸前に入口に到達出来るかどうか怪しかった。


「そう言えば海沿いの国や街には水中で活動するための衣服や装備があるって聞いたことがあるけど」


冒険者の中には見てくれやファッション性を重視している者もいるらしく、このメンバーの中でそのことに興味がありそうなのはミエナだった。そのため水中活動用の装備のことに付いて熟知しているようだった。


「しかしミエナが何故そんなことを知っておるのじゃ?」


「ファッションの本にその装備が載ってたんだよ。可愛いんだけどスゴく印象的でね…」


ミエナが意外にも重要なことを熟知していたことに感心するも、彼女は何処かその装備に付いて躊躇う様子を見せていた。


「とにかくそれがあれば水の中でも問題なく活動出来るはずだよ」


「なら行く他ないな。けど、こう言うのは国とかが何とかするんじゃないのか?」


「そうじゃのう。国には在中、もしくはお抱えの冒険者もいるからのう。そやつらが何とかするんじゃないのか?儂らはこれでもナウな学生じゃぞ?」


ふと気になったのが、学園長からのクエストとはあるものの、それは曲がりなりにも学校に依頼として届いたことだ。異常気象を止めるにしても専門の者や冒険者の方が適任なのに学生に頼むなんて世も末とも言えるだろう。


「君の口調でナウな学生って…まあ、これにも理由があるんだよ。実際のところ学校に依頼として届く前に冒険者が出向いたんだそうだよ」


「そうなの?だったらどうして…」


「最初は単に異常気象の原因の調査だったんだけど、コバルトラビリンスに何かしらの異変があると突き止めるまで大勢のケガ人が出たんだ」


学校に届け出られる前に冒険者達は調査を進めていたようだが、よほど天候が荒れているのか原因がダンジョンにあると判明するまでの過程で多くのケガ人が続出したようだ。


()せぬな。それだけならば儂ら学生に頼む理屈が分からん」


「そうですよね。ケガしても代理で別の誰かが行けばよろしいのでは?」


ケガや負傷は冒険者に取ってはつきものだし、細かい役職などは色々あれど冒険者は他にも星の数ほどいるためそれくらいで学生を頼るなんておかしな話だ。


「実際のところ他の冒険者を募ってコバルトラビリンスの捜索をしたんだ。けど、誰一人として帰って来てないんだ」


「誰一人も…!?」


「そう、生き残りも生き証人もいないんだ。だから他の冒険者達も尻込みしてしまってるんだよ」


無論、他の冒険者も命懸けで突き止めたダンジョンに捜索に乗り出したが今だに誰一人として帰還していないことに言葉を失う。


ケガ以外にも命を落とすような危険と隣り合わせの冒険者とも言えど…いや、その道を知る冒険者だからこそ敢えて危険な橋を渡るほど無謀ではないらしく、誰一人として帰還しないダンジョンに誰も近寄ろうとしないのだ。


「ん〜、話を聞く限りそれって他の冒険者が危ないって思うほどのクエストなんだろ?あたしらってその冒険者のことを()()()()()なのにそんなの受けて良いのか?」


「そうだよね。尚更学校に届けられるのはおかしいんじゃないの?」


自分達が冒険者見習いであり、このクエストが熟練の冒険者の先輩達が(さじ)を投げるほどの物なのに自分達が受けて良いのかスザクは疑問に思い、アメジスもこのクエストが学校にあるのはおかしいと考えていた。


「学校には通されたけど、学校内では(おおやけ)にされていんだよ。これは学校に届けられた後に学園長から直接ボクを通して依頼したんだ」


「つまり儂らだけに届けられたクエストと言うことか」


手続きや公式上では確かに学校に依頼されたが、学園長は他の生徒達には公表せずにルアーネ達だけに届け出たようだ。


「何であたしらに?」


「これまでのことを考えてよ。入学してから短いスパンでBランクまで駆け上がり、国際的に問題になってたアンロスの街の問題解決や帝国の魔の手を防いだ訳だしね」


色々必死にやって来たためあんまり実感はなかったが、これまでにやって来た功績や業績は生き馬の目を抜くほどで並大抵の冒険者よりも冒険していると言っても過言ではないだろう。


「それに学園長はボクらの事情を知っている訳だし、今回も何とかなるだろうとお達しなんだ」


「それって良いのかよ?」


「まあ、僕らはそんじゃそこらの冒険者よりも一癖も二癖もあるからね」


スザクはフェニックス、ルアーネは賢者の書、アメジスは吸血鬼(ヴァンパイア)夢魔(サキュバス)のハーフ、ミエナはファントムハートなどゴッドプレシャスや魔族や幻獣と言った精鋭や戦力が揃っているため学園長が頼りにするのも分からないでもない。


「それにリュクウちゃんのこともあるし、挑まない理由はないんじゃない?」


「…そうだよね。学園長はそのことを分かった上で僕らにクエストを依頼したんだね」


「じゃあ、行くんだな?コバルトラビリンスってダンジョンに!」


行くと分かっているからこそこのクエストをルアーネに託したのだろうが、案の定全員が同意を求める前に共に頷き合っていた。


「でもマリナル王国はここからだと遠いよ。また列車を使うの?」


「さすがにまた列車に乗るのはちょっと…」


海沿いの国となるとミスティーユからはそこそこの距離がある。列車などの公共の移動手段もあるだろうが、あんなことがあって日が浅いため暫くは利用したくないだろう。


「それならヒッチハイクをしよう」


「ヒッチハイク?何だそれ?」


「簡単に言うと乗り物の相乗りをする代わりに護衛をすることだよ。海沿いの街となると魚などの海産物を運ぶ行商人も多く通るだろうから、モンスターや野盗から身を守るために僕ら冒険者の力は必要なはずだよ」


護衛のサイクルには大まかに二種類存在している。


一つはギルドや学校などを通してクエストとして依頼されることだ。これは護衛される側に多くあり、一定の明確な距離を護衛して貰い代価や報酬を支払うと言うサイクルだ。


二つ目はクエストのように依頼ではなく、道に迷ったり、食糧が尽きたり、目的地までの足掛かりや野盗などの襲撃を解決するために護衛をする・される側が提案を持ち掛け利害が一致した場合だ。


メイナスは二つ目の方法を考えており、ヒッチハイクならば帝国の息が掛かった者との接触は少なくなるし、ついでに何かしらのコネや情報が手に入るかもしれないと考えていた。


「最短距離だと…この『ゼリータウン』って所を通って三日ってところだね」


「ゼリータウンって、何だか美味しそうな名前ね」


ルアーネが本を広げて地図でマリナル王国までの道のりにゼリータウンと言う街があることを指し示す。


「出発はどうする?」


「…二日後にしよう。場合によってはリュクウと別れることになるかもしれないからね」


今すぐにでも出発すべきかもしれないが、今回のクエストはリュクウの両親と出会う可能性もある。それは早くも彼女と別れることを意味するため、教会の子供達に少しでもリュクウとの思い出を作るためにも二日後にするのだった。


「…そうだね。じゃあ、思いっ切りリュクウちゃんと遊ぼうよ!皆!」


「そ…そうだね!?」


「いっぱい思い出を作るんだからね!」


「よーし、やるぞー!リュクウちゃん!」


「…うん!」


そうと決まれば時間を無駄にしないためにアメジスはリュクウと子供達と一緒に遊ぼうと誘い、こうなったら後悔しないように嫌と言うほど楽しい思い出を作ろうと子供達もリュクウの手を引いて遊び始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ