危険な旅は道連れ情け無用
「な…何だよこれは!?大っきくて長いな!?」
スザクは目の前で白く熱い蒸気を吹き、ドッシリと身構えるように駅で停車している蒸気機関車を見て驚きの声を挙げていた。
「何かのモンスターなのか?」
「これは蒸気機関車って言うんだよ。火魔法と水魔法を利用した乗り物なんだ。」
「ふむ…儂も初めて見たのう。」
「てか、あたしら全員見るのは初めてだろ。」
スザクはもちろん他のメンバーも蒸気機関車は初めて見るらしく、圧倒的な迫力に誰もが言葉を失っていた。
「それよりも私達が向かうダンジョン…『デザードライキャニオン』はこれに乗っていかないとダメなんだよね。」
「あまりにも暑く乾燥した砂漠のダンジョンだからね。馬車の馬も参ってしまうほどなんだ。」
これから向かう場所は砂漠のダンジョンであり、普通の馬車で行っても道中で馬が力尽きてしまい、最悪道半ばで行き倒れなんてこともあるのだ。
「先輩、そんな所にリッチがいるんですか?」
「目撃情報があったけど、今回のクエスト内容はリッチの存在の確認だよ。前みたいなことがあっては困るからね。」
今回はクエストを持って来たルアーネもパーティーに加わっており、その内容はリッチの目撃情報が本当かどうかの確認だった。
それと言うのもマンゾアスの密林で目撃情報があったのに、ダンジョンの最奥にいたのは全く異なるモンスターだったからだ。
「なあ、少し気になったんだけだよぉ。賢者の書は全知全能なんだろう?それで情報の真偽を確認出来ないのか?」
全知全能の書物の所有者であるルアーネなら真偽を確かめられるのではとレイラがこっそりと話し掛けてくる。
「確かに賢者の書は全知全能を授けるよ。けど、知性が与えられるだけで常に変わりゆく森羅万象を逐一周知出来る訳じゃないんだ。」
しかしながら賢者の書で素晴らしい知性を得てもその知識を全て扱えたり、この世の理を周知してもその先の未来の変動を完全に予測出来る訳では無いのだ。
「だからボクでもその目撃情報が本当かどうかまでは余り自信はないかも…。」
「まあ、自分達の目で確かめた方が良いってことだね。」
「それに列車の旅なんて面白そうじゃない?行ってみようよ!」
結局その目で目撃情報を確認する必要があるのだが、道中は滅多に乗る機会がない機関車に乗って行くため満更でもなかった。
「おい、そこを退け!」
「そんなところでペチャクチャ喋ってんじゃねぇよ!」
「きゃっ、何なのよ!」
ミエナを押し退けて屈強な男達が割り込むように列車の客車にドカドカと乗り込んで行く。
「何だあいつらは…ミエナにぶつかっても悪びれないで。」
「彼らはこの先の鉱脈が目当ての冒険者だろうね。」
「冒険者?そう言うのって坑夫の人がするんじゃ…。」
鉱脈で仕事をするのは基本的に坑夫なのだろうが、ルアーネの見立てだと自分達と同じ冒険者だと言う。
「この先のダンジョンには珍しい鉱石などが手に入るんだ。その価格は入手した鉱石や相場によって変動するけど、普通のクエスト報酬額の十倍になる時もあるんだ。」
「そんなにするんですか!」
「一攫千金が目当てか。」
クエストを受けるよりも安易に高額報酬を手に入れられるのだから、坑夫や冒険者でなくとも鉱石を手に入れようとする者は多いだろう。
「まあ、最高額だとそうなるけど必ずしもそうなるとは限らないんだ。」
「どう言うことだ?」
「そこら辺の石拾いとは訳が違うからね。鉱石の知識がないと苦労して手に入れても二束三文…単なる石ころを収集して徒労に終わるってことはまあまああるんだ。」
十倍の報酬額とは言うがそれはお目当ての鉱石が手に入った場合だ。単純にそこら辺を掘れば手に入ると言う訳でもないし、掘り当てたとしても価値のある物かどうかは判定や鑑定するまで分からない。
何の苦労もなく手に入れば万々歳だろうが、死に物狂いで手に入れた鉱石が実は何の価値もない石だったら誰だって発狂してもおかしくないはずだ。
「だから鉱脈目当ての冒険者は一攫千金を夢見て挑むけど、中々上手く事が運ばずに浪費するだけで終わることに苛立って心がささくれる場合があるんだ。」
「それで八つ当たりって訳?いい迷惑だよ!」
気持ちは分からなくもないが、だからと言って八つ当たりされては困り物だ。
「人それぞれさ。さあ、僕らもそろそろ列車に乗り込もう。」
「待ってください、あそこでお弁当を売ってますし少し買ってきますね。」
「おう、頼む。」
乗り込もうとしたがニナは近くで美味しそうな駅弁の匂いを嗅ぎ取り、気を利かせせて全員分の駅弁を買いに向かう。
「海遊シーサペント弁当…これ美味しいんですよね。」
「なあ、最近の噂を聞いたか?例の犯罪組織。」
「魔王を崇拝している過激派クラン『ウィスパーデーモン』だろ?最近じゃ何かを必死に探し回って活動が過激になってるってな。」
ニナは人数分の弁当を買った帰り道に、列車の貨物を運んでいる駅員の話を小耳に挟む。
「長らくお待たせしました。『デザートエクスプレス』は間もなく発車致します。」
駅長のアナウンスがテレパシーで伝えられ、甲高い汽笛と共に列車がゆっくりと動き出しスピードを上げて線路の上を走り出す。
「海遊シーサペントって初めて食べるけど美味しいね。」
「海遊シーサペントは産卵のためにたくさん食べて丸々太るから今のシーズンはとても美味しいんだ。」
「ところで…デザードライキャニオンのことについて話をしたいんだけど…。」
ニナが買ってきた駅弁を食べながらメイナスはこれから向かうダンジョンの話を口にする。
「デザードライキャニオンではほとんど水がないから水筒は常備していてね。それと衣服も暑さにレジストがあるのに変えておいてね。」
「昨日買った奴だな。」
デザードライキャニオンに行くと言う話を聞いて、一同は暑さ対策のための装備を商業施設で購入していたのだ。
「それと蜃気楼に気を付けてね。」
「何じゃその新郎何とかと言うのは?」
「光の屈折によって見られる幻だよ。砂漠とかではよく見られる現象で、それに惑わされて帰らぬ人になった冒険者はたくさんいるんだから。」
砂漠のダンジョンで気を付けるべきなのは暑さやモンスターはもちろん、蜃気楼による幻によって彷徨ってしまうことだ。
「ふぁ〜…いつになったら着くんだ?」
機関車に揺られ暫く遠足気分に浸っていたが、退屈な感じでスザクが欠伸しながら目的地までの道のりを訊ねる。
「あと一時間ぐらいかな。今はカラカラ海って言うダンジョンを通り抜けてるからね。」
「ここら辺にはサンドシーサペントって言う、お弁当で食べたシーサペントの亜種がいるんだよ。」
「けど、走っても走っても砂ばかりじゃないか。」
目的地は砂と岩と渓谷に囲まれたダンジョンだが、既に列車は海のように広がる砂漠を走っていた。そのため窓から見える景色は常に砂ばかりで飽き飽きしていた。
「さすがに退屈だなぁ…。」
「退屈は死にも匹敵するとも言うからね。さすがの君でもどうにもならないみたいだね。」
「何じゃ?どう言う意味じゃ?」
ルアーネは含みのある視線を同じく退屈そうにしていたスザクに向けながら微笑む。しかし彼女をレイラとメイナスが引き寄せる。
「おい…どう言うつもりだ。」
「スザクのことを知らないのはユウキュウとミエナだけだけどこんな所でそんな思わせぶりな発言はしないでよ。」
スザクがフェニックスであることがバレないようにしているのに、ルアーネの思わせぶりな発言に二人は気が気でなかった。
「ははは、ごめんごめん。でもこの間ヤラれたお返しさ。」
少しからかったつもりではあるが、ルアーネはこの間のスザクからの猛反撃を多少なりとも根に持っていたようだ。
「あれはルアーネちゃんのせいでしょ。またお仕置きされたいの?」
幾ら死なないとは言えスザクにあんなことをさせたのだから当然の報いだし、まだ何かあるようならまたスザクにお仕置きさせるぞとにこやかだが内心穏やかではないアメジスが見つめてくる。
「そ…それは…。」
「先輩?」
「…も…もう少し…乱暴に…めちゃくちゃにしてくれてもぉ…♡」
アメジスの視線に思わず目を背けたかと思えば、ルアーネは人差し指を甘噛みしながらハートのハイライトを浮かべながら顔を赤らめていた。
「先輩、あれ以来どうしちゃったんですか?」
「えっと…スザクとアメジスが開いてしまったみたいなんだよね。ルアーネの変な扉を…。」
拷問大全集と言う本から出てきてからルアーネは被虐を好むような雰囲気を見せており、あの場合は仕方なかったとは言えアメジス達を止めずに悪い事をしたと思ってしまうメイナス。
「まあ…気を取り直して、暇ならこう言うのはどう?」
「読書か?あたしはそんなに本は…。」
収納ボックスからルアーネは本を取り出すのだが、明朗快活なスザクからすれば読書なんて余り興味のないことだった。
「ただの本じゃないよ。ほら。」
「モンスターの絵が立体になった。」
ルアーネが出したのはモンスターの本だったらしく、ページを開くとそこに描かれているモンスターの絵が立体的になったと思えば動き始める。
「これもボクのゴッドプレシャスのお陰さ。記録された物を…それが絵であってもこうやって自在に動かせるのさ。」
「なるほど、本の中に入れたのならこれくらいは当然ってことだね。」
前は本の中に入れたが今度はこうやって本に記された絵が立体的に、しかも動くところを見られるとなれば興味が唆られるだろう。
「お、ベロベロッグだぁ…♡こいつの舌に全身を舐められてぇ…♡マナミナを舐め取られたっけぇ…♡」
「ええ…♡その話を詳しく聞かせてぇ…♡」
「うわ…スザクが二人いるよ…。」
「よく分からんが類は友を呼ぶと言うことじゃな。」
まるでエロ本を見つけた男子みたいに二人は図鑑のどのモンスターにどう攻められたいかと語り合っており、スザクで慣れていたとは言え一同もさすがに引いていた。
『『『ゲコココ…!』』』
その頃列車の貨物室で積み込まれた木箱が独りでに動いたかと思えば、ジュウジュウと煙を立てながらのっそりと何か出てきて這い回り始める。
「何か音がしなかったか?」
「何だろうな?」
列車内の安全と乗客を守る車掌の男性二人は、貨物室から妙な音がすると乗客からの苦情を聞いて様子を見に来ていた。
「開けるぞ?」
車掌二人は剣や槍などの武器を構え、意を決して中へと踏み込む。
「…誰もいないぞ。」
「何かの聞き違いだったのか?」
ところが中には誰もおらず単なる気の所為かと思い肩を落とす。
「ん…お前、屁をこいたか?何か臭いぞ。」
「俺じゃないぞ…って、あの木箱は何だ?」
卵が腐ったような匂いがして辺りを探っていると溶解した木箱が目に入った。
「何だこの液体?これのせいで溶けてるぞ。」
「薬品か?」
木箱には白煙のような気体を発する液体が付着しており、これが原因で溶解したのではと考える。
『『『ゲコココ…。』』』
しかし二人がその木箱に注意が向いている間に扉が独りでに開いて何かが通り抜けて行くのだった。
「ん?何か聞こえませんでしたか?」
「何がだよ。」
「よくは分からんが喧騒らしき音がのう。」
獣人であるためニナとユウキュウは穏やかではない物音を聞きつけ警戒していた。
「わあああ!?」
「きゃああ!?」
「助けてくれぇ!?」
警戒した矢先、後続車両から乗客が何かから逃げるかのように慌てた様子で駆けてくる。
「おい、何があったんだ?」
「モンスターだよ!モンスターが乗り込みやがったんだ!」
逃げてきた乗客を捕まえてレイラが訊ねるとモンスターが列車内に現れたと知らされる。
「何で列車の中にモンスターが?」
「妙だな。列車の外側には大抵のモンスターが嫌がる忌避剤や『アンチ』の魔法が使われているのに…。」
安全性を確保するために機関車や特定の乗り物などにはモンスターが嫌がる忌避剤やモンスター除けの魔法を付与することが義務付けられているため、よほど強いランクでなければ外からモンスターが乗り込む心配はないはずだ。
「ならば強いモンスターの生息域なのかのう?」
「それならこんな所に線路は敷かないさ。」
敷かれた線路の上を走ることしか出来ない機関車のルート上に、魔法や忌避剤を跳ね除けるほどのモンスターが生息しているのならば設置の際にはそこを避ける必要がある。
「じゃあ、このモンスターの騒ぎは何なんだよ?」
「考えるとすれば、外から侵入したと言うよりも中…モンスターを列車に持ち込んだ可能性があるね。」
以上のことから分かるのはモンスターが何らかの理由で列車の中に持ち込まれ騒ぎを起こしていることだ。
「だけどおかしいな。列車強盗みたいなきな臭いことをする輩のために、車掌には元冒険者や実力者が選ばれることが多いのに騒ぎを鎮圧出来ないなんて…。」
「もしかして強いモンスターが運び込まれたとか?」
治安を守る職務には元々は冒険者として危険な冒険や実践を積んだ実力者が抜擢されることが多い。車掌もまた実力者であることが多いが、それでも騒ぎが大きくなる辺り事態はかなり大事のようだ。
「そんな強いモンスターが何で列車に乗り込んでるんだ?」
「目的は分からないけど、ボクらが何とかしないとね。」
スザクの疑問も最もだがルアーネの言うように冒険者としてはこんな事態は見過ごすことが出来ず、一同はモンスターがいるであろう避難する人々とは真逆の方向に足を進める。
「こりゃあ…派手に荒らしたな。」
「台風でも通った後みたいだね。」
人だかりが疎らになっていくと同時に荒らされた車輌に辿り着く。
そこはバーを併設する食堂車になっており豪華な造りのテーブルや椅子や、高価そうな酒の瓶や皿が割れていて食材と酒の匂いが充満していた。
「食堂車を荒らすとは一端のモンスターらしい行動だね。お腹でも空いてるんだろうね。」
「何が暴れたか分かりますか?」
「これだけではまだ何とも…。」
モンスターだってお腹が空けば食べ物を求めて暴れるだろうが、これだけではどんなモンスターがいたかは分からなかった。
「きゃっ!?」
「アメジス、大丈夫かぁ…?」
「うん…何かに躓いたみたいだけど…。」
足に何かが引っ掛かって転んでしまったアメジスだが、足元を見ても躓くような物体は何もなかった。
「あれ、スザクちゃん顔が赤いけどどうしたの?」
「ほえ…?そう言えば…何かポカポカするようなぁ…?」
手を引いて貰って立ち上がるとスザクの顔が赤くなっており、それに伴って彼女は熱でもあるのかようなポワポワとした色っぽい表情を見せていた。
「まさか酔ってるのかい?」
「酔ってるっへぇ…?」
「ここにあるお酒…飲み物を飲んだりとかした?」
「…うんにゃあ〜、飲んでないよぉ…へもぉ…この部屋に入って…何かポワポワして…気持ち良い…♡」
今のスザクは恐らくほろ酔い状態であり、バーにある酒を誤って飲んでしまったかと訊ねるも彼女は部屋に入った瞬間にこうなったと言う。
「スザクちゃんって、もしかしてお酒に弱いの?匂いだけでこうなるなんて。」
酔って艶やかなスザクにアメジスは思わず息を呑むも、匂いを嗅いだだけで酔ってしまうほどに酒に弱いのかと疑問に思う。
「教会で飲酒は禁止されてるし、僕らもそんな年齢じゃないからね。」
「とにかくそこら辺に寝かせておけ。これじゃあ立つこともままならないだろ。」
「あへぇ〜…♡」
ほろ酔い気分で蕩けた顔をするスザクはフラフラしていて、絶頂した時みたいにすぐには戦えそうになかった。
「にゃっ!?だ…誰ですか?私のお尻を触ったのは?」
「は?何言ってんだよ?」
お尻を触られた感触にニナは飛び上がっていた。しかしそれだけで終わらなかった。
「ニナ、スカートどうしたの?何か溶けてない?」
「はにゃ!本当です…恥ずかしい!?」
なんとニナのスカートがジュウジュウと溶けており、彼女の縞々模様の下着が露わになってしまった。
「うげっ!?おい、誰だよ今背中を叩いたのは!」
「今度はレイラ?」
「って、うおっ!あたしの服まで…!?」
レイラは背中を強い力で叩かれ、ニナのスカートのように上着がジュウジュウと溶けていた。
「これは…見えない何かがいて私達を攻撃してるみたい。」
「姿を消せるモンスターか。厄介じゃのう。」
透明になれるミエナは一連の騒動は同じく姿を消せるモンスターが原因なのではと突き止める。
「でも任せて!こう言う時はこれを…。」
「それはコショウかい?」
「これを…こうして、こうして、こうするの!」
食堂車と言うこともあって調味料のコショウを手にしたミエナはそれを辺り一面に撒き散らす。
「はっくしゅん!?」
「くしゅん!?」
「ぶえっくしゅん!?何してんだよ!?」
コショウと言ったらクシャミであり、撒き散らされたことで食堂車にいる者達は立て続けにクシャミが止まらなくなる。
『ゲコ!?ゲココ!?』
『ゲココ!?』
「いた!あれだよ!はっくしゅん!?」
それは透明になっていたモンスターも例外ではないらしく、クシャミの余り変色スキルが解除されたようだ。
「あれはBランクモンスターのニジドクカメレオン!」
姿を現したのはドギツい色彩を放つカメレオンのような姿で、アメジスはスザクと出会ったパンドラの森で出会ったことがあるモンスターだった。
「ニジドクカメレオンだって?あれはBランクと言うこともあるけど色彩によって複雑な毒素を持つため、特定の生息域に隔離する必要があるモンスターなはず。」
ニジドクカメレオンは複雑な七種類の色彩と毒素を持っており、色が混ざり合う度に体内の毒素が混じり合い危険度が変動するため隔離指定がされる程だ。
「何でそんな危険なモンスターが乗り込んでおるのじゃ。」
「乗り込んだじゃないよ。ここら辺はニジドクカメレオンの生息域でも隔離しているエリアでもない…逃げ出していると言うことは、きっと誰かが許可もなく持ち込んだんだ!」
モンスターの持ち込みや運搬には国や都市部からの許可が必要なのだが、危険度の低いFランクのモンスターならば同伴はほぼ可能である。
逆にニジドクカメレオンのような危険なモンスターの場合は許可や審査が厳しい上に、運搬する際は厳重に隔離する必要があるのだが…。
「ニジドクカメレオンが逃げるような杜撰な管理体制をして運搬していたと言うことは、ニジドクカメレオンを密輸する密猟者である可能性があるよ。」
「それでこんな騒ぎになったのか。はた迷惑な。」
許可を取るにも手順や手数料が掛かるため密輸が、そもそも捕獲や狩猟をギルドを仲介せずに行う密猟、そして非合法な素材や危険なモンスターを売り買いする密売が後を絶たないのだ。
このニジドクカメレオンもギルドを仲介しないで密猟され、モンスターの生態を知らない素人が杜撰な運搬や管理体制に置いたために脱走を招いたのだ。
「どっちにしてもBランクモンスターがいたら列車は大変なことになるよ!」
「僕らでここで食い止めよう!」
「相手はBランクモンスター…パンドラの森では逃げるだけだったけど!」
成り行きとは言え相手はBランクモンスターでありこのままにして置く訳にはいかなかった。アメジスに取っては最初逃げるべき相手だったが、今や逃げている乗客のために戦うべき相手だった。




