試練の法則は快感を得ること?
「さて…次の試練は…。」
「ううっ〜…まだクラクラします…。」
「君はよく頑張ったよ。」
砂時計の石像による最初の試練、歴史の偉人の一人パレタクスとの戦いでニナが勝利を治めたが高速回転したためにまだ目が回っていた。
「とにかく何処かで座って休みなよ。」
「じゃあ、ここに…よいしょっと。」
「むっ!?お主!その石像に触れるでない!?」
立ってられないため座って一休みしようとして別の砂時計の石像にもたれかかるが、見ていたユウキュウが何かに気が付いて慌てて警告する。
「え?」
「あっ!砂時計がまた…!?」
主観的に見てユウキュウが何を警告しているか分からなかったが、客観的に見るとニナのもたれかかっている砂時計の石像が回転し、中の砂が落ち始めていたのだ。
「どうやら遅かったようじゃぞ…きっとこれは誰かが触ると発動する仕組みのようじゃな。」
「そうか、だからユウキュウやニナが触れると砂時計が動いたのか…。」
思い出してみれば最初の時もユウキュウが触れたからこそ砂時計が動き出していた。今度の場合もニナが触れたことで動き出したようだ。
「それって…また歴史上の誰かと戦うの?」
「…分からぬ。」
先程は獣人隷属が横行していた時代の人物と戦ったが、今度もまた歴史上の人物と戦うのかと訊ねるもユウキュウは答えられなかった。
「うおっ!?な…何だ…!?デッカイ木々が…!?」
「遠近感がおかしくないか…!?」
また誰かと戦うのかと思えば巨大な木々や草木があちこちから生えてくる。驚くべきなのはそのサイズだが、下手をすると人間の建築物なんか足元にも及ばない程に大きかったのだ。
「マンゾアスの密林やパンドラの森でもこんなの見なかったぞ…。」
「確かに巨大だ…でも大き過ぎるし、このサイズ感はもしかすると…。」
こんなに大きな木々は樹海のエリアとしては有名な二つのダンジョンでも見たことがなかったため驚くのは当然だが、メイナスは世界中の植物を見た訳でもないのにどうも周りの木々の存在を疑っていた。
「ん…何か来るぞ。」
『『『ギュルルル…。』』』
「な…何これぇ!?気持ち悪い!?」
すると周りの草木をブルドーザーのように掻き分けながら、クラゲの細長い触手を身体の周囲から生やした黄色いウミウシのようなモンスターが這いながら出現してくる。
「これはスタンラッグ…別名デンチウシとも言われるモンスターだけど…。」
このモンスターのこともメイナスは知っているようだが、知っているからこそとある違和感があった。
『ギュル!』
スタンラッグは身体の周囲に生えている触手をユラユラと海藻のように動かす。
「アメジス!危ない!?」
「きゃあっ!?」
這い回っているため動きはゆっくりかと思ったがビシュッと空気を裂くような音を響かせ、アメジスに向かって触手を鞭のように振り回しスザクが警告する。
「…!えい!?」
「あっ!スザクちゃん!?」
警告するも間に合わないと判断したスザクはアメジスの前に飛び出て触手の鞭を受け止める。
『ギュルルル…!』
「ひょああああ!?」
すると触手から電気が流れて来てスザクは雷に打たれたかのように感電してしまう。
「えっ!?どう言うこと!?」
「スタンラッグは捕食する際に触手から電撃攻撃を繰り出すモンスターなんだ。それと触手はもちろん、表面も触ると感電してしまうんだ。」
どうやら下手に触ったり、触られたりすると電撃を受けてしまうようだ。
『ギュルルル…!』
電撃を流して気絶したかと思い、スタンラッグは捕食しようと這い寄って来る。動かなくなったためわざわざ急いで捕食する必要はないはずだ。
「はあ…はあ…き…気持ち良い…♡」
『ギュル…!?』
ところが黒焦げになりながらも胴体を掴んできたスザクが、恍惚とした表情でこちらを見ていたためさすがのスタンラッグも面食らう。
『ギュルルル…!』
「いぎぁん!?…い…良い…気持ち良い…♡」
今度は突き刺すように触手を振り下ろし、電撃を直接流して感電させるもスザクは変わらず…いや、先程よりも快感に満ちた顔をしていた。
『『ギュルルル…!』』
「あがっ!?あぎぃっ!?あがががが!?」
すると他のスタンラッグ達も集まって触手を突き刺して、電撃を流し込んでスザクの身体を一時的に黄色い光が包み込む。
「あががが…ひぎぃ…♡ま…ってぇ…待ってぇ…♡」
するとさすがにこれは堪えたのか、命乞いのような台詞を呟き始める。
「気…気持ち良過ぎいいぃぃ…!?♡こ…こんな…のぉ…♡…あ…頭が…ががが…ぶ…ぶぶ…吹っ飛んじゃいぞおおぉぉ…♡」
しかし電撃で柔らかな二つの果実と桃の実は呼応するようにブルブルと小刻みに震え、あまりの快感に鼻水や涙が出てきてグチャグチャとした笑顔でスタンラッグ達に縋り寄っていた。
「やっぱりあいつ楽しんでやがるな。」
「まあ、助けてくれた純粋さはあるみたいだけど…。」
アメジスを助けたスザクの思いは間違いないが、やっぱり彼女はスタンラッグの攻撃を受けて快楽を得ていた。
『『『ギュルルル!』』』
口では耐えられないだのと言っているが、まだまだ余裕の様子を見せるスザクにスタンラッグ達は全ての触手を総動員して黄色から青白い電撃を流す。
「あぎぐああああ♡ダメダメダメダメぇ!?♡」
青白い電撃は骨の髄まで痺れさせ、脳もポップコーンのように弾けるほどの過電圧を受けていた。しかしそれでも彼女は蕩けた顔で、舌を絶頂を示すかなように突き出してエクスタシーに浸っていた。
「うわわ…前から思ってたけど…これ大丈夫なの!?」
「電気椅子よりも迫力があるのう…。」
「見たことあるの?でもまあ、これは物凄いよね…。」
見たことがない電圧と電光に近寄ること出来ずスザクを見守っていた。彼女のドMっぷりはこれまでにも何度も見てきたが、即死してもおかしくない状況に事情を知らないミエナとユウキュウは唖然となる。
『『『…!ギュルルル!!』』』
「ぴぎぃっ!?」
これでもダメかと判断したスタンラッグは最後の手段だと、自らの触手を巻き込んでスザクの魅惑的な身体に纏わりついてくる。
「いいっ!?纏わりついて来た!あんなの気持ち悪くて耐えられないよ!?」
軟体動物が嫌いなのかミエナはその光景に心底嫌そうな顔を浮かべる。だが、彼女に限らずとも人を襲えるほどの軟体動物が身体に纏わりついて来たらかなりグロテスクだろう。
「ああああ♡止めてええぇぇぇ♡」
『『『ギュルルル…!』』』
さすがの彼女でも音を上げたと判断したのか、心なしかスタンラッグは満足した様子を見せた後に、一笑に付すように身体に力を込める。
『『『ギュルルル!』』』
「いやあああああぁぁぁ!?」
触手と全身から一気に放電しスザクの身体が見たことないほどに痙攣してその場を跳ね回り、聞いたことがないほどの絶叫を挙げる。
『ギュル!』
「ふぎぃ!?」
スタンラッグ達は勝利を確信して丸い口でスザクの身体を堪能するようにジュプリと言う湿った音と共に吸い込むように咥え込む。
『ギュルルル!』
「くうっ!?」
腕や脚はもちろん、味わうように魅惑的な果実や色っぽい桃を丸呑みにしてはジュプジュプと嫌らしい音を立てながらしゃぶり始める。
『『『ギュルルル…ギュルルル…!』』』
「ひあああぁぁぁ…た…食べられてるううぅぅ…♡」
手間を掛けさせた仕返しだと言わんばかりに彼女の色っぽい全身を吸い、しゃぶり、舐って、更にはその間に電撃を与え続け全身くまなく貪り食おうとする。
「あ…あああん…♡ダメぇ…♡そんなに激しく…くぅん♡味わっちゃったらぁ…♡」
しかしモンスターに食われているのにスザクは恐怖するどころか、快感を嫌と言う程に味わっていた。
「もう…じ…あ…わ…あ…ぜええぇぇぇ♡」
『『『ギュルルル!?』』』
もう気持ち良過ぎてお腹いっぱいになったスザクは耐え切れずに炎を一気に噴出し、スタンラッグ達を火ダルマにするのだった。
「はひぃん…♡ごちそうさまでしたぁ…♡」
炎が止まると体内の水分が全部蒸発して黒い塊になったスタンラッグの成れの果てと、快感でお腹いっぱいの粘液に塗れたスザクが目に入った。
「…なんかエグい光景だったな…。」
「ちょっと後味が悪かったね…。」
勝ったは良いが、美少女が軟体動物に絡まれて粘液塗れになって捕食される光景は衝撃的な光景だったため勝っても何だか素直に喜べなかった。
「…でも、これで二つ目の砂時計の試練は完了だね。」
結果はどうであれ二つ目の砂時計の試練は終わり、空間が再び歪んで元の神殿に戻って来た。
「確か…触ると試練が発動するんだよね。」
「最初はコロシアム、次はやたらにデカいジャングル…次は何だよ?」
「とにかく次はもっと慎重にやろう。」
最初の内は発動条件は分からなかったが、誰かが触ることで試練が開始されるため下手に触れないように注意するべきだ。
「ああ…でもぉ…♡まだ物足りないよぉ…♡」
「わっ!?スザクちゃん!?お願いだからそのままで来ないで…!?」
あれだけの攻撃を受けて快感に浸っていたのに、スザクはまだ追い求めるようにこちらに近付いてくる。彼女は粘液で塗れているため、さすがのミエナも思わず距離を取ろうとして何かに触れてしまう。
「あ…。」
「お主…背中に何があるかよく見てみろ。砂時計があるじゃろうが…。」
真っ先に気が付いたのはミエナだが、もう彼女の背中は砂時計に触れてしまっており手遅れだった。
「わぁ〜!?皆ゴメンね〜!?」
「こ…今度は何だよ!?」
ミエナが謝っている内に空間が歪んで、また次の試練が始まろうとしていた。
「またジャングル…?でもさっきと比べると木々が普通に見える…。」
場面は先程と同じジャングルではあったが、木々や植物は通常のサイズであった。
「しかし暗いのう…。」
その代わり夜間なのか周りがやけに薄暗く、不気味さで言えば負けてはいなかった。
「ううっ…ここってまさか…。」
「何か知ってるのかい?」
森を見たミエナはオバケのような体質になれるゴッドプレシャスを持っているのに、オバケでも見たかのように震えて縮こまる。
「ここは…『スクリームキャニオン』にある森林なんだけど…。」
「スクリームキャニオン…不気味でホラーなダンジョンとして有名な場所じゃないか。」
どうやらこの薄気味悪い光景は心霊スポットとして有名なダンジョンが由来していた。
「ここで肝試しでもしろってのか。」
「ひああああ♡」
試練は試練でも肝試しかと思っていたら、スザクの喘ぎ声による悲鳴が聞こえてくる。
「言ってる側からあいつは…!?」
「ゴメンね!スザクちゃん!?」
「いや…スザクちゃんは多分…。」
もうオバケかそれに由来するモンスターに捕まったのかと思いミエナは謝罪する。
「きゃはははは!?いひひひひっ!?」
「ほら、笑ってる…。」
悲鳴はすぐに笑い声に変わり、スザクはモンスターからの攻めを笑顔で受けていた。
「いや…これは…。」
「うひひひひっ!?あははは!?何これぇ♡くしゅぐったいいいぃぃぃぃん♡」
「…くすぐられて笑ってるね。」
しかし笑い声も笑顔も、彼女が植物型モンスターの葉っぱや枝によるくすぐり攻撃を受けて強制的に笑顔にさせられ笑っていたからだ。
『ケケケ…!』
「人面植物…ですか?」
見た目は妙にニコニコした顔のある球根のようなモンスターだった。身体から蔓を伸ばしてスザクを捕らえてくすぐっていた。
「あれはティコティコラだね。人をくすぐることを生き甲斐とするモンスターだよ。」
「何だよその下らない生き甲斐は…。」
名前と生態は分かったが、どんな相手かと思えばただくすぐるだけなのかと拍子抜けする。
「『笑う人にはマナミナの恩恵がある』って諺にあるようにマナミナはくすぐられたり、笑ったりすると自然と外に漏れ出す性質があるんだけど…。」
「ティコティコラは根っこを獲物に張り付けて漏れ出たマナミナを吸い取るの…しかも相手が笑い死ぬまでくすぐり続けてマナミナを吸い取り続けるの…。」
笑うことでマナミナが放出されるのなら、その性質を利用して獲物のマナミナを摂取するティコティコラのやり方も異質だが理に適っていた。
「私も…うっかりスクリームキャニオンに迷い込んで、可愛い見た目だったからうっかり触ったら…捕まってくすぐり地獄を…。」
「はう…それは辛いですね…。」
くすぐりなんて可愛らしい攻撃にも思えるが、延々と強制的に笑わされれば呼吸困難や精神に異常をきたすとされており、拷問にも使われるため実際にはかなり辛いはずだ。
「まあ、スザクなら何ら問題は…。」
「ぎゃひひひひひっ!?やあああはははは!?」
いつものスザクなら余裕で耐えるどころか再び快感に溺れて炎を発しているかと思っていたが、予想に反して彼女はまだ責め苦を受けていた。
「いぎゃあはははは!?あああひひひひ!?」
「って、おいおい…スザクの奴…いつもより何か余裕がなさそうじゃねぇか?」
確かに笑ってはいるが顔を真っ赤にして涙を流しながらブンブンと首を横に振って身を捩っていて余裕がなさそうに見えた。
「珍しく苦しそうにしておるぞあやつは…。」
「こ…こんなのぉ…あぎぃひひひ!?…し、知らな…いひひひ!?きゃははははは!?」
「知らない…?……あ。」
スザクは笑いながら叫んだその台詞に、アメジスは違和感を覚えふとある考えに辿り着く。
「もしかして…殴ったり、斬られたりする強い攻撃は平気だけど…くすぐりとかの弱い攻撃は慣れてないから耐えられないってこと…?」
「「「ええっ!?」」」
これまでにも何度も死ぬような思いや激痛を伴うことは何度となくあったが、スザクに取ってくすぐりのような弱々しい責め方はされたことがなかったため耐性がなかったのだ。
「いひひひひ!?こ…これ…く…苦じい…!?うひひひ!?いやぁはははは!?」
珍しく何とかこの責め苦から逃れようと手足に力を込めるが、ティコティコラの蔓や根や葉が彼女の服の下に入り込み脇や鼠径部などあまり露出しない敏感な箇所を的確にくすぐってくる。
「やぁはははは!?止め…ち…力…は…ひひひひっ!?入らない…いひひひ!?そ…それに…何かチュウチュウ…吸われ…やひひひひひ!?」
くすぐりから抜け出したいのに強制的に笑わされて力が抜けてしまい、その上でマナミナは彼女の魅惑的な身体に貼り付いた根っこによって文字通り根こそぎ吸われてしまい脱出するのは不可能だった。
「ううっ…ひひひ…わ…私も…くすぐられたこと思い出して…いひひ…!?」
思い出し笑いなんて単語があるが、スザクがくすぐられているのを見てトラウマのあるミエナも笑い出してしまう。
「抜け出す時はどうしたの?」
「ティコティコラはモンスターだから…疲れる時が来るの…その時にファントムハートを使って…。」
一度苦しい思いをしたはずのミエナに訊ねると、相手が疲れるまで待つと言う意外にも単純な方法だった。
「それまではスザクには辛いだろうけど耐えて貰うしか…。」
しかしそうなるとティコティコラが疲れるまで耐えなければならないため、ここはスザクに我慢して貰う他ならなかった。
「いひひひぃん…♡息苦じい…♡はひぃひひひん…♡あん…♡こんなのぉ…知らない…ひひひ…♡けれども…これもぉ…♡」
ところがくすぐられて汗ばんだ身体はビクンビクンと魅惑的に揺れ踊り、顔も真っ赤に染まったスザクは別の意味で我慢出来なくなっていた。
「あああああ!?♡もう…きゃはははは!?笑い過ぎてぇ…気持ち良くてぇ…いやああああぁぁぁ♡」
『ゲゲゲ!?』
味わったことのなかったくすぐりによる責め苦は、結局の所スザクを二重の意味で強制的に笑顔にさせており、絶頂と共に放たれた炎によってティコティコラは一瞬で消し炭になる。
「はひぃ…はひぃ…もう…死にそう…♡」
「いや!既に逝ってねぇか!?しかもそんな物欲しそうな蕩けた顔をしやがって!?」
口ではそんなことを言っているが、スザクはもうくすぐられてもいないのに、蕩けたグチャグチャの笑顔を浮かべながら別の意味で昇天していた。
「それにしても…最初は偉人だったけど、さっきから出ているのは全部モンスター…おまけにティコティコラはミエナには見覚えのあるモンスターだった…。」
ここまで砂時計の試練は三つクリアした。残すは一つだけとなるがこれまでのパターンを考えるもイマイチ法則性がなかった。
「けっ、今更躊躇ってしょうがねぇよ!もうとっとと終わらせようぜ!」
ここまで来たのなら見えぬ法則を考慮するよりも、先に行動すべきだとレイラは残る砂時計の台に触れる。
「熱い…今度は火山地帯?」
「もはや驚きはせんぞ。次は鬼が出るか蛇が出るか…。」
もはや慣れた様子で成り行きを見ていたが、今度の空間は煙を吹く火の山が見える火山地帯だった。
「ここは…嫌な所を思い出させるな…。」
「思い出させる…?」
ミエナに続いて今度はレイラが嫌な記憶を見るかのように怪訝な顔を浮かべる。すると地面から何かが這い出てきた。
『シャアアア!』
「スコルヒート!Bランクの危険なモンスターだ!」
トカゲのような見た目だが、目は四つあり、脚はハサミのような形をした前脚だけで、蕾状の尻尾を持ったモンスターが立ち塞がる。どうやらこのモンスターが最後の試練の相手のようだ。
『シャアアア!』
「アメジス!相手は火属性のモンスターだ!水を!」
「うん!水魔法『ウォーター』・ショット!」
スコルヒートは口から炎をこれ見よがしに吐き出すが、アメジスが水流を拡散状に放って炎を消火する。
「もっと行くよ!水魔法『アクア』・ボール!」
続けて巨大な水の球を作り出し、それをスコルヒートの上から落とし、水風船のように破裂させて大量の水を浴びせる。
『ギシャアアア!?』
「良いぞ…弱ってる。」
大量の水を浴びるとジュウジュウと音を立てて表面が炭のように黒く焦げ付いていく。
「こいつは本当にBランクなのかのう?アメジスの魔法で何とかなるならさほど強くはなかろうな。」
Bランクとは言っていたのにCランクであるアメジスの攻撃が効いていることに間違いじゃないのかとユウキュウは疑う。
「いや、これまでの戦いでアメジスも皆も、それなりに実力は身に着けている。何ら不思議じゃないさ。」
Cランクに昇格してからアンロスの街で色々あったために、もう既に申し分ないほどに実力が身についているはずだとメイナスは告げる。
『ギシャア…!』
「ううん…?」
スコルヒートはふと先程絶頂してフラフラした足取りをしているスザクを目にする。
『ギシャアアア!』
「うぶっ!?」
蕾状の尻尾が花弁状に開いたかと思えば、スザクを頭から丸呑みにする。
「スザクちゃん!?」
「しまった!?スコルヒートは尻尾からマナミナや炎のエレメントを吸収するんだ!?」
『ギシャアアア…!』
「ひょわああああ!?」
スザクは叫び声を挙げると同時に、スコルヒートの尻尾がドクンドクンと躍動し彼女のマナミナと炎のエレメントを吸収していく。
「ほ、本当にエレメントを吸収してる…。」
「それだけじゃない!見て!」
『ギシャア…!』
マナミナと炎のエレメントを吸収したスコルヒートは徐々に身体が赤熱していく。
「吸い取ったスザクのマナミナとエレメントで回復しているんだ!」
「そんなことさせない!『アクア』・ボール!」
「一気にトドメを刺すぜ!『瞬足』!」
「そうじゃのう…爆炎魔法『ボム』!」
このまま好き勝手はさせないとアメジスが水魔法を放った後に、レイラが接近し、ユウキュウが爆弾を投げつけて時間差攻撃を仕掛ける。
『…!ギシャア!!』
「熱いっ!?」
ところがスコルヒートは熱気を放ち水を蒸発させると同時にその水蒸気でレイラを攻撃する。
「む?儂の爆弾は?」
「って、足元!足元〜!?」
爆弾も水蒸気で吹き飛んでおり、ミエナの指摘で慌てて逃げ出した途端に爆発するのだった。
「スザクちゃんのマナミナと炎のエレメントを吸収して体力と熱を回復してるの?」
「そうだよ。火山地帯では熱を無尽蔵に補給出来るから結構手強いんだ。しかも溶岩の中でも生きられる特殊な生態をしているんだ。」
最も熱い物質と知られる溶岩の中でも生きられるとするのなら、確かにBランクと言うのも伊達ではないのかもしれない。
「ん…んん…♡そんなに…激しく吸っちゃぁ…♡」
花弁状の尻尾に丸呑みにされたスザクは、尻尾の肉壁によって柔らかくて魅惑的な身体をギュウギュウと締め付けられると同時にマナミナとエレメントを吸われる感触にうっとりした表情を浮かべる。
「良い…気持ち良いのぉ…♡もっとぉ…吸ってぇ…♡」
『ギシャア…!』
「はううぅぅん…♡き…気持ち良いぃ…♡」
お望み通りと言わんばかりにスコルヒートはスザクの魅惑的な身体のラインに合わせるように尻尾の肉壁の締め付けを強くしつつも、更に彼女の身体からマナミナとエレメントを吸い出していく。
「スザクちゃん!メイナス兄さん、スコルヒートをたおすにはどうしたらいいの?」
「体内を急激に冷やすとかなりのダメージになるはずだよ。」
「と言うことは口か尻尾の中に水や氷を使えば…。」
スザクは問題ないだろうが戦っているこちら側からすれば一刻も早くスコルヒートを倒したかった。そのためには口か尻尾の中に水か氷のエレメントを流し込む必要があった。
「水魔法『ウォーター』・ガン!」
『ギシャア!』
手っ取り早く口を目掛けて水流を勢いよく杖から放つアメジスだったが、スコルヒートはハサミのような前脚でガードする。
しかし水魔法が通用しなかった訳ではなかった。水が当たって冷えたことで、ハサミは黒焦げたような見た目になる。
『…!ギシャア!!』
「はひぃん♡またそんな…激しく…吸い出しちゃぁ…♡やあぁ…♡」
しかしスコルヒートは尻尾のスザクから再びマナミナと炎のエレメントを吸い出し体力を回復すると同時にハサミを赤熱させる。
「やっぱり簡単には狙わせてくれないか…それにダメージを受けてもすぐにスザクからマナミナを吸い取って回復するか…。」
「どうしますか?」
「まずは回復手段を断ち切らないとイタチごっこだ。」
ダメージを与えてもすぐに回復されてはイタチごっこなため、まずは相手の回復手段を奪うことにする。
「それってスザクちゃんを取り返すってこと?でもどうやって丸呑みにされたスザクを引きずり出すの?」
「いいや、ミエナ。君は役に立てなかったとかそんなことを言ってたけど…皆が言うようにそんなことはないさ。君の出番がいよいよ来たんだ。」
ミエナに訊ねられたメイナスには何か考えがあるのか彼女を見ながら名誉挽回のチャンスが来たと告げる。
「まずは僕らで奴らの気を引くんだ!」
「よく分かんねぇけど…分かったぜ!」
「ほれ、こっちじゃ。」
まずはスコルヒートの注意を引くために散り散りになって挑発をする。
「アメジス!水魔法を奴の表面に!」
「え…でも、すぐに回復されるんじゃ…それに狙うなら口の中じゃ…。」
今度はアメジスに水魔法を使わせようとするが、アメジス本人はやってもすぐに回復されるのではと心配し、その上狙うのは口の中のはずなのに表面で良いのかと訊ねる。
「大丈夫!やってみて!」
「…!分かった!水魔法『ウォーター』・レーザー!」
こうなれば信じてやるしかないとアメジスは水魔法の水流を勢いよく発射してスコルヒートの表面を抉るように射抜くのだった。
『ギシャア!?…ギシャア!』
「ああん…♡またぁ…♡」
さすがに今のは堪えたのか多少のダメージを受けるものの、スコルヒートは再びスザクからマナミナと炎のエレメントを吸い出そうとする。
「今だよ!」
「え〜い!?」
メイナスは合図すると同時に目を逸らし、その途端にミエナが全裸で半透明になりながらスコルヒートの尻尾に向かってジャンプする。
「スザクちゃん…見っけ!」
「おおっ…!?」
『ギシャア!?』
ミエナの半透明な生まれたままの姿はスコルヒートの尻尾の皮膚をすり抜け、中で尻尾の肉壁に包まれていたスザクを外へと引きずり出した。
「あう!?あちちっ!?」
「ううん…ミエナ…?」
尻尾をすり抜けた二人はそのままミエナが覆い被さるようにスザクを押し倒すのだが、スザクはこれまでのことで服が燃えて全裸で、ミエナも言わずもがな全裸となっていた。
「ミエナぁ…気持ち良かったぞぉ…♡」
「…ひゃあ!?恥ずかしいよ!?それにスザクちゃん熱い!?」
端から見ると二人の色っぽい美少女が裸で重なり合う姿は百合の花が咲きそうな雰囲気だった。特に片方は絶頂し蕩けた顔をしているため同性でもドキッとしてしまうほどだ。
「ミエナちゃん…羨まし…でもこれはこれで…!?」
「アメジスちゃん…鼻血が…。」
それを見て久々にアメジスは鼻血を出しており、ミエナに対して羨望の眼差しを向けていた。
『ギシャア!?』
「わっ!?スザクちゃん!?今はここから…!?」
そんな百合の花園を踏み荒らすかのように、スコルヒートはせっかくの上物の獲物を横取りするなとスザクはもちろんミエナごと尻尾で丸呑みにしようとする。
「氷魔法『アイス』・ウェーブ!」
『ギシャア…!?』
ところが尻尾は二人を呑み込む前に凍りつき、しかも無防備となっている部分に冷気の波が入り込みダメージを与える。
「邪魔しないでね♪」
「笑顔が怖いのう…しかしまあ、ほれ。」
鼻血を流しつつも笑顔で杖を構えるアメジスを見て戦慄するユウキュウはついでにと、凍った尻尾の中に何か放り込む。
「代わりにこれを食うが良い…爆炎魔法『ボム』!」
『ギシャアアア!?』
その何かとは説明するまでもなく爆弾であり、凍った尻尾の口腔の奥に転がっていき、タイミングを見てユウキュウが爆発させる。
幾ら炎のエレメントを吸収出来るとは言え、食べた瞬間に中で爆発したらさすがにスコルヒートでも耐えられない。
『ギシャアアア…っ!?』
「これでトドメ!『アイス』・ニードル!」
尻尾が中から爆発して苦しむスコルヒートの口にアメジスの杖が押し込まれる。その直後にスコルヒートの身体の中から氷柱が突き破るように飛び出て来て絶命するのだった。
「ふむ…メイナスの言う通り、回復手段を失くせばあっさりと勝てたのう。しかし勝てたのは…。」
「ほらね、活躍出来たでしょ?」
「うん!ありがとう!」
勝てたのはメイナスの指示もだが、スコルヒートの尻尾からスザクを助けれるのはミエナしかいなかった。仲間達から称賛されてミエナも汚名返上が出来たことに喜んでいた。
「これで砂時計の試練は終わりだけど次は…。」
「あー、多分なぁ…。」
四つの砂時計の試練が終わったことでは次は何が起こるかと思っていたが、もう慣れたため妙な浮遊感と足の裏にあるはずの地面の感触が失くなったことに誰も驚かなかった。
「やっぱり〜!?」
「もっとマシな案内しやがれぇ〜!?」
「きゃあああはははは!!」
またしても次の試練の場所に強制的に案内するかのように地面に穴が開き、そこから一気に下の階層へと落下していく一同。果たして次は何が待ち受けるのか…?




