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フェニックスの伝説は蘇る

「むぅ〜…むぅ〜…!?」


アメジスは何か喋りたかったが卵から孵化した少女に押し倒され、その上で豊満な胸によって口を塞がれてしまい声が出せなかったのだ。


「ぷはっ!?苦しいってば!?」


何とか藻掻いて胸元に顎を当てる形で口を出して要求を述べるアメジス。


「ひゃん♪もう少しお願い〜、私の胸にあなたの吐息と顔が当たってモニュモニュと…♡」


そんなアメジスと違って藻掻くことで身体をまさぐられる感触に孵化した少女は恍惚とした表情を浮かべていた。


「ん〜…!?ぷは!?」


「あん…もっとぉ…。」


何とか振り解いたアメジスは距離が近過ぎる少女から慌てて距離を取る。それに対して少女は孵化したばかりか物欲しそうに上目遣いで見つめてくる。


「あなたは誰なの?名前は?」  


「…名前…何?」


何者かは分からないため名前を訊ねようとするもピンと来ないのかポヤッとした様子で首を傾げる。


「もしかして名前がないの?」


名前を聞かれてピンと来ないのはそもそも名前がなく、名前そのもの概念がないからではとアメジスは唖然となる。


「ここにフェニックスがいるってドラグングニル帝国の人達は言ってたけど…ガセだったのかしら…。」


軍事国家が動き出すほどならフェニックスの情報も間違いないと思っていた。しかしいたのはフェニックスではなく、謎の卵から孵化した謎の少女だけだった。


「フェニックス…それってあたしが見たあの綺麗な火の鳥のこと?」


「え…フェニックスを知ってるの?」


すると孵化した少女はフェニックスと聞いて、その特徴を口にし何か知っているのかとアメジスは聞き返す。


「フェニックス…えへへ…。」


「ど…どうしたの…?」


フェニックスのことを思い出した少女は途端に蕩けた顔をして涎を垂らすためアメジスも心配してしまう。


「初めて見たけど綺麗だったなぁ…翼が炎になってて太陽みたいに眩しく暖かい感じだったの…。」


「そうなんだ…じゃあやっぱりあなたはフェニックスのことを知ってるのね。」


初めてフェニックスを見て、その時の感動を率直に話す少女にアメジスはやはりフェニックスと何か関係のある人物だと目をつける。


「知ってるも何も…フェニックスにあたしの身体がジリジリ焼かれて…。」


「え?」


「ツンツンってあたしの身体を焦がしながらクチバシでつついてくれて…。」


「え?え?」


知っている辺り姿を目撃したか良くても謁見したかと思っていたが、どうも想像とはかけ離れた内容にアメジスは耳を疑う。


「最後は頭から呑まれてその炎で焼かれるような快感に溺れていったわぁ〜…♡」


「えええっ…!?」


極めつけはフェニックスに身体を焼かれた上に捕食されるも、そのことで快楽に溺れていたと聞きアメジスは目を回しながら驚いてしまう。


もしもそれが本当ならば彼女は既にフェニックスに食べられて亡き者になっているはずだ。それどころか卵から孵ってピンピンした様子と、食べられた時を思い出し快楽の余韻に浸っているなんて驚く要素が多過ぎる。


「それってつまりあなたはフェニックスに食べられたのよね?だったら何で卵から孵って生きてるの…?」


「そう言えば…でも卵から孵ったって?」


落ち着いて状況を整理したアメジスは彼女に今の状況を伝えるも、本人も何故なのかと首を傾げていた。


(この子はフェニックスに食べられて…今から百年前にフェニックスがいなくなった神殿にこの子の卵があった…偶然とは思えないけど…!)


結局、彼女が何者かは分からないが少なくともフェニックスの神殿にいると言うことは何か大きな意味があるはずだった。そのためアメジスもある決意をしたのだった。


「ねぇ、あなた行くところある?」


「行くところって…?」


唐突にアメジスは彼女に行く当てを訊ねるが、これもピンと来ないのか首を傾げていた。


「一緒に来ない?ここにいたらあなたを狙う酷い人達がここに来るわ。」


つまりは宿無し、帰るところもないと言うことになる。それなら好都合だし、このままだとドラグングニル帝国の人間にどんな目に遭わされるか分からないため彼女を助ける意味でも連れて行こうとする。


「酷いのはあんたの方でしょうがぁ!!」


「ひっ!?」


しかし恐れていた一番の事態が目の前で起きてしまう。マンドレームの群れをぶつけたのだが、パッシブスキルの『バーサーカー』を使用したラッカが広間の入り口に姿を現していたのだ。


「はあ…はあ…舐めたマネしやがって…!?」


Aランクモンスターを軽々倒したスキルを使用しているが、鎧には無数の傷跡がつけられ鎖かたびらもボロボロになっており、特徴的なポニーテールも解けて長い髪が背中まで伸びていた。


「まさかこんな大胆なことするなんて夢にも思わなかったぜ…。」


それに続いてシモンも到着するも、彼は頭から血を流しているが何とか立っており、装備も鎧もラッカ同様に傷んだり一部が欠けたりしていた。


「覚悟しな!あんたはボコボコにして魔力電池として魔力をスッカラカンになるまで吸ってやるから覚悟しな!」


バーサーカーを使ってることもあって、ラッカは鬼のような形相でアメジスに宣告する。


「ん…その子供は…?」


「まずは二度とこんなマネが出来ないように足を切り落としてやる!」


シモンはアメジスの側に見たことない紅い髪の全裸の少女がいたことに気が付くが、その前にラッカは斧を振り上げて走り出してしまう。


「危ない!?」


「え…?」


しかしラッカの凶刃がアメジスの足に当たろうとした矢先、孵化した彼女がアメジスを遠くに突き飛ばしたことでまず足を失うことはなかった。


「づあっ!?」


「ひいっ!?」


しかしながら代わりに彼女が凶刃を受けて両足を切り落とされ、血を辺りに撒き散らしながらアメジスの目の前に足が転がってきたために彼女は悲鳴を挙げる。


「ラッカ先輩なんてことを!?」


「何だい?友達だったのかい?気の毒に…こんな奴を守るために足を失うなんてさ!」


庇ったとは言え関係のない人間に大ケガを負わせたことにシモンは青ざめるも、当の本人のラッカは嘲笑うようにアメジスを見下す。


「だ…大丈夫…!?」


絶望した様子でアメジスは少女へと腰が抜けたあまり恐る恐る這い寄る。


「う…ううっ…。」


生まれた直後からこんな残酷極まりない上に耐え難い苦痛を与えられたがためにどれだけ辛いかは一目瞭然であった。


「ううっ…はあん…気持ち良い〜…♡」


「「「え…?」」」


しかしながら彼女の第一声は苦悶と激痛からなる悲鳴や叫び声ではなく、快感の余韻に浸る蕩けるような声だった。


「き…気持ち良い…?」


「あたしの足が…鋭く冷たい刃で…皮膚と肉と骨を裂いて…血がドクドクと出て血の気が引く感触…ああん〜♡どれを取っても最高〜♡」


聞き間違いかと思いきや、やはり彼女は悲鳴挙げたり涙を流したりするなどの苦痛を訴えるのではなく、肉体を損傷する激痛に快感し蕩けた顔で涎を垂らして快楽に溺れる様子を見せていた。


「な…何だこいつは……いっ!?」


『『『ギャギャギャギャー!』』』


普通の反応とは真逆の反応をする彼女にバーサーカーのスキルを使っているのに思わずドン引く。すると背後からマンドレームが四体押しかけてきたのだ。


「こいつら…まさかダゴンを突破して…!?」


『『『ギャギャギャギャー!』』』


斧で振り払おうとするがマンドレーム達はラッカとシモン達をすり抜けて、這った状態で唖然とするアメジスと快感に溺れる彼女に飛び掛かる。


「きゃあ!?止めてー!?」


『ギャッギャッギャッ!』


戦ってみてマンドレーム達はラッカ達を相手するよりも明らかに格下なアメジスを襲おうとし、引きずり寄せてスカートを破いていく。


マンドレームの生態は基本的には取り憑いているマンドレイクの球根が中心となっている。繁殖するためには種を、他生物の体に植え込んでその栄養を吸収することで増えていく。


『ギャッギャッギャッ!』


「や…止め…!?」


そして何処に植えるかと言うと無論、栄養を溜め込む体内になるがねじり込む穴があればそこへ入れれば問題ない。そのためこのマンドレームはアメジスの口や別の穴に種をねじり込もうとする。


『『『ギャッギャッギャッ!』』』


「あっ…ぐっ…がっ…!?」


他のマンドレーム達は何故だかは知らぬが孵化した少女にこれでもかと岩の拳による暴力によって袋叩きにする。 


「こりゃ…あいつらマンドレイクの苗床になるね…。」


「えげつないっすね…。」


幸い散々戦ったためにラッカ達には種をねじり込むことは出来ないと考えて近寄って来なかった。その代わりにアメジスと少女が犠牲になるのを目の当たりにして思わずラッカですら同情してしまうのだった。


「あん…硬い岩の拳が…あたしの身体をこれでもかとボロボロの傷だらけに…こんなの…んむ…!?」


足を切断された時と同じように少女は恍惚とした様子で色っぽい声を出していたが、マンドレームが彼女の口に種をねじり込んで植え込むのだった。


「んんん〜…♡」


『『『ギャッギャッギャッ!』』』


「あいつ…あれでも幸せそうにしてやがる…。」


少なくとも死ぬその時まで苦しまずにいられるようだが、種を植えられてはその先は死ぬまで栄養をマンドレイクの種に搾られるだろう。


「た…助けて…!?」


『ギャッギャッ!』


助けを乞うアメジスを嘲笑うようにマンドレームは彼女の口以外の穴に種を植え込もうとする。


「んん〜…!んんんん〜♡」


『『『ギャッ!?』』』


口が塞がているため何と言ったかは不明だが彼女は快楽に溺れていると思われる声を出し、緋色の瞳にピンク色のハートのハイライトが灯った瞬間にマンドレーム達は炎上して植物の部分はあっという間に灰になる。


「お前達!そっちにマンドレーム達が数体…っ!?」


遅れてダゴンが広間に合流するのだが、ラッカ達の目の前で取り逃したマンドレーム達が燃えていることに何事かと唖然となる。


「あああっ…あああっ…!」


「何だ?人が燃えているのか…!?」 


状況は分からないが少なくとも誰かが火ダルマになっていることは明白であり、何があったのか聞こうとする。


「そ…それが…。」


「分かんねぇよ…あいつ何者かすら…。」


しかしシモン達もアメジスと一緒にいた少女がマンドレームに襲われて苗床になるかと思えば炎上しているのだから何が起こっているかは分からなかった。


「あああっ…ああん…♡最高に…気持ち良い〜♡」


『ギャギャ!?』


残されたマンドレームも唖然となっていたが、少女が快感の雄叫びと共に周りの炎が意志を持つかのようにに広がって、残された一体も焼き払って灰へと変えてしまうのだった。


「炎がまるで生き物のように…まさか…!?『鑑定』!?」


一部始終を見ていたダゴンは彼女の周りの炎が単なる炎ではないと考えて鑑定のパッシブスキルを使用して調べる。


「んんん〜♡」


「炎の…翼…!?」


腕が猛禽類の逞しい炎の翼へと変異しながら広がり、解放感からなる爽快感からより恍惚とした表情を浮かべる。


「あああんっ…もう…最高おおぉぉぉ♡」


「きゃっ!?これは…。」


快感の絶頂から少女の身体は炎に包まれて、クジャクのような身体と尾羽根、扇状に広がる炎のようなトサカを持つ猛禽類のような逞しく荘厳な頭部へと変わっていく。


『ケエエエエン!』


「フェニックス…!あの子がフェニックスだったの!?」


目の前にいるのはここにいる誰もが探し求めていた不老不死の象徴たる幻獣…不死鳥こと『フェニックス』だった!


『ケエエエエン…!』


全てを解放し絶頂の余韻に満足したかのように、フェニックスはその姿を人間の姿へと変貌させていく。


「あふん…気持ち良かった〜…♡」


あまりの快感に少女はその場に横たわり身体をクネクネさせてまだ余韻に浸っていた。


「ど…どうなってんだよこれ…!?」


「どう見ても今のはフェニックスっすよね?でも今は女の子に…!?」


訳が分からないがフェニックスは確かに目の前にいた。しかしながら今はその姿は見る影もなくなり、女の子となってその場に横たわっているだけだった。


「これは驚いたな。彼女は紛れもなくフェニックスだ。確かに幻獣や聖獣には人に化けたりする個体もいるが…フェニックスが人になるのは初めてだ…。」


ダゴンの鑑定で目の前にいるのはフェニックスであり、どう言う訳か人の姿をしているようだった。


「おい、あんたの鑑定を疑う訳じゃないが…本当にあいつがフェニックスなのか?何かの幻とかじゃなくてか?」


「少なくとも幻でマンドレームは倒されないっすよ…それにラッカ先輩が切り落とした足が元通りになってるっすよ…。」


幻だけではBランクモンスターを消し炭にすることは出来ないし、何よりも少女の切り落とされた足やマンドレームに付けられた傷も痣も綺麗になくなっていた。


「どうします?」


「目的は変わらん…フェニックスを捕獲する!」


見た目や様相はかなり変わっているが、フェニックスに変わりはないため捕獲しようと乗り出す。


「…!」


「そこを退くのだ。これは任務妨害罪に当たるぞ。例えば瀕死の重傷の人間の搬送を邪魔するぐらいの罪深さだ。」


横たわるフェニックスの少女の前にアメジスは胸元を布切れで覆ったパンツ姿で立ち塞がる。それを前にしてもダゴンは冷静に諭す。


「あ…あなた達に私達の国が荒らされた上に…この子の運命まで左右させようだなんて…絶対に許さない!?」


本当は逃げ出したいくらいに怖かった。それでも先程フェニックスの少女は何のつもりかは知らないが自分を二度も助けてくれたのだ。


それにフェニックスと出会えたことに運命を感じたアメジスは、このまま彼らに彼女を好きにはさせないと奮い立つのだった。

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