7.浴室侵入
私の右目にある魔法陣のリスクを考慮し、真実を話すのを諦めた私は取り敢えずこのまま男子のフリをすることにした。
この目の魔法陣はなかなか厄介なのだ。
影響を受けた相手は町中で大絶叫したり、暴れ回ったりとご近所のご迷惑にしかならない。
この作用が発覚した最初の相手は我が家の愛猫ライラだった。
メス猫だったにも関わらず私相手に求愛行動を起こし、あげく大工棟梁のルドルフおじさんの顔面をバリバリに引っ掻いた。
初等学校で近所のパン屋の息子ルネ君に魔法陣を見られた際はさらに厄介だった。小1にしてかなりの酩酊状態に陥ったルネ君はお酒を盗み飲みしたと勘違いされ親からめちゃくちゃ怒られ、以降私は眼帯やら仮面やらお祖母様による厳重な対策が施されてきたのだ。
私の魔導師団員としての当面の仕事は1年間の就労だけだ。
後任が見つかるまで取り敢えず1年、と言われているのでそもそも長期で働くつもりはない。
1年我慢すればここからどのみち離れるので、あまり余計な騒ぎを立てるべきではないだろう。
となると当面の問題はお風呂だけである。
ロベールさんから聞いた話では、第3部隊の脇にある更衣室の中にシャワー室があるらしい。
但しここは、朝練などでも結構使うようなので、男性とのバッティング率が高そうなのだ。
それともう一つ、第3部隊室大部屋の奥に、管理者たる将校専用の執務室や仮眠室、浴室等があるそうだ。
私はこれに目をつけた。
デュトワ少佐は怖い。
まったく目が笑っていない笑顔で口角だけが上がるあの人は本当に怖いのだが、あそこが一番誰かとの遭遇率が低いと思う。
ものの5分で入り終われば、あとはシルキーに任せれば水滴ひとつ無く掃除完了だ。
夕方や夜は残業をするものがいるかも知れない。
ということで私は、朝早くに職場に向かうことにした。
まだ陽が昇るか昇らないかぐらいの時間帯、私は第3部隊室に入り込んだ。
ここのいいところはセキュリティが全て魔法であることだ。
出入認証は魔法による指紋認証だけなので、時間外でも入り込める。
第3部隊室にはいり荷物を机に置くと、お風呂セットを一式もって、私は奥の管理者浴室へと入った。
「はー……サイッコー……」
お湯は良い。
シャワーを浴びるだけで生き返る。
昨日の夜は水で絞った手拭いで身体を拭いたけど、なんだが身体が冷えて上手く寝れなかったし。
本当は湯船にも浸かりたかったけどあまり長湯出来ないし、仕方ない。我慢しよう。
身体をピカピカに洗い上げると急いで着替え私はシルキーを喚び出した。
流石家事妖精。
あっという間に水滴一つないシャワー室にしてくれた。
そのままポカポカの身体で風魔法で髪を乾かし、何食わぬ顔で第3部隊室へ戻った。




