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35.後悔と自己嫌悪

 夕食後、火の番の為私はジャージの上にカッパを羽織って外に出た。


 今日の当番は第5部隊の方と行う。

 簡単な自己紹介をすると、私は焚き火の前の簡易イスに座った。


 パチパチと爆ぜる火を見ながら、私はさっきリオット大尉から言われたことをずっと考えていた。


 ダルトワさんが間に入ってくれたけど、リオット大尉の言う事は事実だ。


 私は周りが見えていなかった。

 もしかしたらミシェル様も、大尉と同じように思っていたのかもしれない。優しいから口に出さなかっただけなのかも。


「私、ダメダメ魔導師だなあ……」


 思わずポツリとそう零した。


「ダメダメなんかじゃないよ」


 独り言に反応が返ってきたので、バッと顔を上げると火の前にいた第5部隊の団員がいない。


「こっちこっち」


 真横に首を振ると、ピッタリと簡易イスをくっつけたリオット大尉がいた。


「えぇ……っ?!」


 大尉は自分の唇の前に人差し指を立てた。


 ──あ、そうか。

 私が騒げば敵の襲来かと思い、皆慌ててしまう。


 ドキドキと早まった心臓を抑え、ぐっと悲鳴を飲み込んだ。


「ご、ごめんなさい……」

「ノアちゃんて素直だね。直ぐに顔に出ちゃうんだもん」


 ぐっと唇を噛んだ。

 ──ああ、情けない。

 私、失態だらけだ。


「第5部隊の火の番の方は……?」

「ノアちゃんが泣きそうな顔して火をみてる間に俺と変わってもらったよ」


 大尉はクスクスと笑った。

 夕食の時とは違い、随分と和やかな表情だ。


「すみません」

「謝ってばかりだね。君はそんな悪いことしたの?」

「悪いことっていうか……」

「さっきの話。まだ気にしてたんだね」


 なんと返答して良いか分からず、視線を燃える焚き火に戻し私は押し黙った。


 本降りは落ち着いたが、雨は未だ降り続けていた。

 私達の上にある雨避けのシートにはポツポツと音が響いている。

 私は黙ったまま薪を火にくべた。


「俺はさ、別に責めた訳じゃないんだよ。同じ任務の仲間だから、意見の擦り合わせをしただけ」

「はい……」

「君は君の魔導師としての方針に従った。それだけだろ? 俺も精霊のことなんかよく知らなかったから、ダルトワ爺さんがああいう話をして、なる程って思った」


 魔導師としての方針……。

 そんな大層なものじゃない。


「方針なんかじゃないんです……私、何も考えてなかった……お祖母様の教えをそのままやっただけ。だから、大尉の言う通りなんです。タイミングか違ったら皆を危険に晒してた。あんなに団員の皆が頑張っているの、毎日見てたのに……ミシェル様があんなに団員の皆のこと大事にしてるの目の前で見てた癖に」


「……ノアちゃん」


 涙が出るのをぐっと堪えた。

 目が凄く潤んで、喉の奥が痛くて、胸が苦しくて、泣いてしまいそうだったけど頭の中でミシェル様が囁いてる。


『──泣きたくなったらいつでも私の元に来てください』


 ──ミシェル様……


 そうだ。

 今、ここで泣いちゃいけない。

 怒られたとしても、嫌味を言われたとしても

 私に泣き場所をくれた人が待ってるから。


 泣くのはミシェル様のところに行くまで我慢しよう。


 きっとミシェル様は受け止めてくれる。

 あの広い胸で抱きとめてくれるから。


 パンっ!と両手で頬を叩いた。

 痛みで少し涙腺が引き締まる。


「ぐ……頑張れ私……!」


 自分に叱咤して深呼吸すると、少し落ち着いた。


「……ぷっ……あはは……あはははは!」


 私のおかしな自己激励を隣で見ていたリオット大尉は吹き出してしまった。


「君っておかしな子だね。素直に泣くかと思ったのに、何一人で変顔しながら自己解決してるの」


「……すみません」


「あははは! マジ、初めてだよ。君みたいなおかしな子」


 リオット大尉は楽しそうに笑い続けた。

 それを見ていたら、私までなんか可笑しくなって笑ってしまった。


「君のお祖母さんもこんな人だったのかな。ダルトワ爺さん、振られたんだろ?」

「そう仰ってましたけど……どうなんでしょう」

「オーギュスト少佐って君のお祖父さん?」

「そうです」

「魔法騎士団員と恋愛結婚したんだ。素敵だね」

「お母様もそうです。魔導師として魔法騎士団に来てお父様と会ったって」

「そう……じゃあ君も騎士団員と恋をするんだ?」

「いえ。別に私は……」


 すっと金色の髪が近づいた。。

 真横にあったのは、リオット大尉の整った顔。

 長い睫毛とグリーンの瞳が覗き込める程近い。


「泣いたら慰めようと思ってたのに。そんな風に笑顔になられると、また心臓鷲掴みにされちゃうじゃん」


「……えっ?!」


「ノアちゃん、可愛すぎるって。俺、君のこと本気で……」


 突然、背中から長い両腕が伸びてきて、私の身体は宙に浮かんだ。


「えっ……わああっ?!」


「おや、おかしいですね。今火の番は第5部隊のフォール君が担当の筈では?」


「ミ……ミシェル様?!」


 私を抱きかかえたのはミシェル様だった。

 いつも以上に冷えた笑顔で、若干瞳孔が開いている。


 何故か二人の先輩方まで、討伐前のようなピリピリした顔でミシェル様の後ろに控えていた。


「なる程なる程! リオット大尉はどうやら火の番がお好きなようだ。ロベール君! マシュー君! あと2時間はたっぷり3人で火の番をしてください!! 逃がすんじゃありませんよ!」


「サー! イエッサー!!」


「ちょ……おい! ミシェル?!」


 ミシェル様に抱きかかえられ、私はそのままテントに戻った。


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