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33.合同遠征3

 リオット大尉と共にベースキャンプに戻った時には、ミシェル様は例のごとくブリザードスマイルになっていたが、午後からは予定どおりバグベアの巣探しが始まった。


 私は当初樹木精霊を召喚して巣のありかを聞こうと思ったが、同じ魔導師のダルトワさんが魔力ダウジング法というものを提案してくれた。


「魔力は出来るだけ温存しときなされ。ノアちゃんは底抜けに魔力値が高いから気にしとらんようだが、戦争になれば涙一粒の魔力が勝敗をわけることもあるんじゃよ」


「……確かに……私にもやり方教えてください!」


 今回はダルトワさんの案に従いミシェル様とリオット大尉が作戦を立てて動いた。


 振り子の先に特殊な魔石をぶら下げ、魔法により位置を把握していく。魔石にはバグベアの残した魔力痕を染み込ませているから、魔力と魔力が引き合う力を利用して巣を探すらしい。


 バグベアの巣は1時間程山を登った先の森の中、山を少し上がったところの森の中にあった。


「でっかい……」


 巨木を中心に周囲の土を掘り起こしたようなバグベアの巣の周辺には真っ黒な毛むくじゃらのバグベアの幼体がうようよと歩いていた。


 凄い数だ。

 これが成体になったら村が大混乱になる。


「ノア、私の後ろにいなさい」


 少しだけ振り向いて笑うミシェル様はとても頼もしく見えた。


「氷結魔法・アンティエグラセ!」


 ドンっ!とミシェル様が、剣を地中に突き刺すと、バシッバシッ!と音がが響き、あちこちに氷の柱が立ち並んだ。

 辺り一面見える限り、全てのバグベアが氷の塊になった。


 カッチカチになったバグベア達を見届けると、リオット大尉が声を上げる。


「総員、突撃!」


 ワアァ!と声をあげ、団員は一斉にバグベアに向かったが、木から木へピョンピョンと足場を移し、目にも止まらぬ速さで、ザシュっ! ザシュっ! とバグベアを切り裂いていくリオット大尉に目が釘付けになる。


「動かねー的はつまんねーな……!」


 一番大きなバグベアの氷ノ塊の前まで行くと、驚異のジャンプ力で飛び上がり、片手で剣を振り下ろした瞬間バグベアは真っ二つに割れ、その場に崩れた。


「す、凄い……っ」


 びしゃっと血を払い、クルクルと剣を回してから鞘に収める様はまるで芸術みたいに美しい。


 じっと見入っているとリオット大尉と目が合った。


「ノアちゃん。俺、かっこいいっしょ?」


 ウインクされ、思わずコクリと頷いてしまった。


「……ちっ」


 側でミシェル様の舌打ちが聞こえたが、魔法騎士団は無事バグベアの殲滅に成功した。


「やったあ!! 皆凄い!」


 私も手を上げて喜んでいると、後ろからシャアァァ……と聞き慣れない音が聞こえ振り向いた。


 真っ黒で毛むくじゃらのバグベアの成体だった。


「きゃああ!!」


 悲鳴を上げた瞬間、ミシェル様がスルリと私の前に身体を移し、大きなバグベアを剣でズバっ······!!と切り裂いた。


 血飛沫が空に舞う。

 毒々しい黒に似た赤い魔物の血。


 だけど、私の目を捉えたのソレじゃなかった。


 ラベンダー色の長い髪。

 裾が広がった濃紺の団服。

 私を守るように立つ、広く逞しい背中。



 空に舞う血の中で、その雄々しくも美しい姿に、私はただ口を開けて見ていた。


 ゆっくりと振り返るミシェル様のお顔には沢山の血がついていて、まだ厳しさの残る金色の瞳が私の姿を捉えた瞬間、ドクンと心臓が動いたがした。


「ノア……大丈夫ですか?」


「……大丈夫……です」


 差し出された手に触れると、何故か胸がきゅっと締め付けられた。


 血のついたミシェル様の顔を、自分から背伸びしてハンカチで拭っていたのは無意識からだった。





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