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32.合同遠征2

「美味しいね、ノアちゃん」

「は、はい。リオット大尉」


 突然抱きかかえられて連れてこられた初等学校の中庭で、私達はポカポカとした小春日和の陽気の中、呑気にサンドイッチを食べていた。


「ハムと玉子、どっちが好き?」

「……玉子ですかね」

「俺はどっちも好き」

「それは……ちょっとズルくないですか?」

「あはは。そうかな? でも好きなものは好きだよ」


 そう言ってリオット大尉は屈託なく笑った。

 キラキラと陽に透ける金髪と、眩しそうに細めるグリーンの瞳がとても綺麗だ。


「眼鏡よく似合うよ。仮面よりずっといい。ミシェルのと似てるね」


「おんなじのにしてもらったんです。ミシェル様に買って頂いたから」


「ミシェルの下で働いていてどう? あいつ凄いだろ」


「はい、それはもう。事務仕事も速いですし、鍛錬はご自身で参加しながら部下を鍛えてますし。私はいっつもビリッケツで走ってますけど、最後まで声かけてくださいますし。第3部隊はみんなミシェル様を慕ってます。本当に凄いです」


「そうなんだよ。あいつさ、めっちゃ面倒見いいんだよね。仲間を絶対見捨てないっていうか。おまけに頭もいいし、根回しも上手いから上層部受けもいい。俺の自慢の友達なんだ」


「それは……初めて聞きました」


 リオット大尉は口の中にもぐもぐとサンドイッチを詰め込むと、水筒をごくごくと飲んで流し込んだ。


「うん。美味い。ノアちゃんてミシェルと付き合ってるの?」

「い、いいえ……」

「ん゙ん~~? でもミシェルはノアちゃんのこと好きだろ? あいつがあんなに女の子にべったりなの見たことねーもん。女の子近づけさせないしさ。もう告られた?」

「……あ……えーと」

「ふーん。でもまだ付き合ってはいないと。なんで? あいついい奴だろ? ちょっとしつこいとこあるけど」


 そんなの、私が知りたい。

 ミシェル様に伝えられた思いに答えを用意出来ていない。


 それは多分、私がミシェル様をどう思っているのかまだ分からないから。


「決めてないなら、俺にしてみない?」

「へ?」

「俺さ、『運命の恋人』ってやつ? あれ信じてるんだよね」


 ──おお、意外にロマンチストだな、この人。


「この間、廊下でノアちゃん見た時ね、珍しく心臓鷲掴みにされたみたいになって。ちょっと運命感じたんだ。俺、女の子とはよく話すけど、あーゆー事って以外と無いんだよね。だから、ちゃんと君と話したいなって思ってた。ミシェルと仲いいって噂だったから、早く確かめたくて……良かった」


 鷲掴み……ってどういうことだろう。

 私も最後のサンドイッチを口に入れてもぐもぐしてながら考えていると、じーっと顔をみられクスクスと笑われた。


「な、何ですか?」

「口に玉子がついてる」

「え、あ、ごめんなさい……」


 手鏡を出そうとしてポケットを漁っていると、唇スレスレの左頬をぺろりと舐められた。


「な……っ?!」


「おいしい。ノアちゃんの味がする」


 予想だにしてなかった事に慌てふためく私に、リオット大尉はまた楽しそうに笑い、私に「落ち着いて」と水筒を手渡してくれた。


 ──参ったな。

 ロベール先輩がリオット大尉を「女好き」と言っていたけど、これは……何も知らなければ女性側から好きになる人いると思う。

 こんな綺麗な容姿だし、こんなこと平気で言うし。


 多分凄く真っ直ぐに感情を伝える人なんだろうな。

 それに距離感が人のそれよりかなり近い。

 違和感無く入り込むあたり、これが彼の普通なのだろう。


 飾らないし、はっきりと言うし。

 ミシェル様は敢えてもってまわった言い回しをしたりするから、対照的な感じかする。


 でもミシェル様のことをちゃんと同じ魔法騎士団員として、ふざけながらも敬ってて……


 きっと彼等は素敵な友人関係を築いているのだろう。



 水筒をこくりと飲むと、冷たいお水が喉を潤した。

 もう一口、くちに含むと隣からリオット大尉が笑って言った。


「間接キスだね、ノアちゃん」


 聞いた瞬間、ブーっ!!と全部口から吐き出した。



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