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31.合同遠征1

 2週間後、私達は第5部隊とともに北部にある山岳地帯に討伐遠征に向かった。 


 山の麓にある村でバグベアという魔物が子どもを狙って夜な夜な歩き回っているという。


 例年よりも数も多く、今はまだ孵化したばかり小さいがこのまま成体になると恐らく町まで行ってしまうため、今のうちに巣を叩いてしまおうということだった。


 そして今回のベースキャンプは麓の村の一角に作った訳だが……


「なんであなた達と一緒のテントになっているんですか」


 不満そうなミシェル様にやたら楽しそうにリオット大尉は肩を組んで笑った。


「えー? 何言ってんだよ。部下は4人一組のテントだろ? 俺等も4人でまとまろーぜ」


 前回と同じくミシェル様と私が同じテントで過ごす筈が、何故か4人タイプの将校用テントになっていた。


「……ちっ。まあいいです。ノア、私達は……」


「なる程! 使い魔ですか。私はいっつも1回きりの召喚で……」


「ノ、ノア……?」


 ミシェル様とリオット大尉が話し込んでいる間、私は第5部隊付のおじいちゃん魔導師ダルトワさんとお喋りに花を咲かせていた。


「使い魔はいいぞノアちゃん。手懐けるとあちこちいかせられるし、応用の幅が広いからのぉ」

「属性が異なる場所とか嫌がりませんか? 鉱山の中でウンディーネ呼んだら、後からすっごい文句言われて……」

「随分と高位精霊を呼び出しておるんじゃな。わしんとこは此奴のみでな」


 見せてくれたのはブルドッグの顔した犬の妖精だった。


「わああ! 犬妖精(クー・シー)だわ! 可愛い!」

「気に入ったかい? ボブというんじゃ」

「ボブぅ♡ かーわーいー♡」


 ガッと突然肩を掴まれ振り返ると、ミシェル様は眉間に皺を寄せていた。


「ダルトワさん……うちのノアをそろそろ返していただけますか」

「おお、すまんな。少佐」


 ダルトワさんは優しく手を振って見送ってくれたが、ミシェル様は私の手を握りしめたまましかめっ面で歩き始めた。


「ノア、ダルトワさんと何話してたんです?」

「召喚対象についてです! さすが魔導師の大先輩。色々知ってて楽しかったです」

「そうですか。でもいいですか? 犬だろうが老人だろうが男の前であんなとびきりの笑顔で動物と戯れてはいけません」

「だってボブ可愛かったんですよ。ダルトワさんのお話も面白かったし······私、他の魔導師とお話したことなかったから……」

「可愛いのは貴女ですよ……勉強になりましたか?」

「はい! またお話したいです」


「俺もノアちゃんとお話したい」


 ニュッと脇から顔を出したのはリオット大尉だった。


「団員には昼休憩取らせたから、ノアちゃんも食べにいこ? ミシェルも」


「ベルナール、私達は……」


「ほら、行こう!」


「ベルナール?!」


 リオット大尉はあっという間に私を抱きかかえると、もの凄い速さで走り出した。


「ミシェル様……!!」

「ノア!!」


 ミシェル様の名を呼んだ時には既に距離が離れて、あっという間に顔が見えなくなった。


「リオット大尉! 放してください……!」

「駄目だよ。こうでもしないと、ミシェルは君と話す機会をくれないだろ?」


 ベースキャンプを抜けて村の小麦畑近くまで走ると小さな学校らしきものが見えた。

 中庭の木陰のベンチまで来るとリオット大尉はようやく私を降ろしてくれ、ポケットから出したハンカチをベンチに敷くと、エスコートするように手を引いて座らせてくれた。


「はい、どうぞ」


 肩がけにしていたバックの中から出てきたのは、昼食のサンドイッチと水筒だった。



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