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25.噂

 夕食後、焚き火を囲んで暫く仲間で宴会になった。


 討伐は一応これで完了なので、軽い打ち上げも兼ねて皆でわいわいと他愛もない話で盛り上がる。


 私もジュースで参加しているが、こうして一仕事終えた後皆で笑い合うと、仲間っていいなと心から思えた。


 このまま私は次の交代まで2時間程火の番をする役割なので、宴も一段落すると各々のテントに戻る仲間に手を振りつつ、薪を足しながら同じ当番のマシュー先輩とロベール先輩と一緒に会話を楽しんでいた。


「どうだった初討伐は?」


 ロベール先輩は焼いたマシュマロを手渡しながら聞いた。


「びっくりしました。香を焚いても生きてるなんて反則です」

「あはは。魔物も生死がかかってるからね。必死だよ」


 確かに。

 向こうにしたら、私達人間の方が侵略者であり敵なのだ。そりゃあ必死にもなる。


「それよりさあ、デュトワ少佐が変なこと言ってたな。指一本だけ握れとか……」


 マシュー先輩がお酒を飲みながら不思議そうに話す。


「少佐って敵には異常に厳しいけど真面目だし、部下に優しいじゃん? なんか理由があったのかなあ」


「確かにね。そういえばデュトワ少佐最近ノア君にあまり嫌味言わなくなったね。前はさ、毎日ノア君に何か言ってたから僕ハラハラしちゃって」


 確かに言われてた。

 立場も上だし口もよく回るから、何にも言い返せなかったけど。


「逆に最近すげーノア君と一緒にいない? 打ち解けたんだね!」


 マシュー先輩もマシュマロを火にかけながら嬉しそうに笑った。


「う、打ち解けた……んですかね。どうでしょう」


「たまに将校執務室に連れて行かれてるけど、また何か言われてるの? 大丈夫?」


「大丈夫です。私立場上一応魔導師だし。役に立ってないけど。少佐には色々相談に乗ってもらってて」


「ノア君は役に立ってるよ。俺達助けられてるもん。団員の命を召喚術で救ってくれたし。今日も転移術で皆を運んでくれた。大助かりだよ」


 ロベール先輩にそう言われ、じんと熱いものがこみ上げた。

 思えば、右も左も分からなかった時からロベール先輩は助けてくれた。彼はずっと優しかった。


「おいロベール。ノア君泣いてる」

「ええっ? ノア君ごめん! 僕なんか言ったかな」


 グスグスと鼻をすする私にロベールさんは頭を下げた。


「違うんです。ロベール先輩、優しいから。私が来たばっかりで、毎日少佐に怒られてた時もずっと優しかったから、なんか胸が熱くて」


 へへ、と涙を拭いて笑うと、ロベール先輩も笑った。


「ノア君てさ、ちょっと女の子みたいだよね」

「……え?」


 ドキッとした。

 私、いま白猫の仮面つけてるよね?

 とれてないよね?


「俺もちょっとそれ思ってた。ノア君、なんかいい匂いするし」

「うん。今日の転移の時さ、手繋いで一緒に移動したじゃん? ノア君の髪からお花みたいな匂いするから女の子と居るみたいでちょっと動揺しちゃったよ〜」


 いや、動揺してるのは私の方!

 焦りで冷や汗がでる。


「ノア君が女の子だったら狙う奴多かったんじゃないかなあ。てゆーか、今も狙われているかもしれない」


「え?! 男が男を狙うんですか?!」


 マシュー先輩の発言に私は青くなった。

 白猫の仮面をしている間はそういう対象からは外れていると思い込んでいたから。


「そう。ノア君、共同浴室に来ないだろ? だから他の部隊で変な妄想立ててた奴がいたんだよ」


「僕も聞いた。第5部隊の奴だろ。あの派手な金髪のベルナール・リオット大尉だ。将校なのに共同浴室くるなんて、あの人の方が変だよ」


「デュトワ少佐の同期だろ? 魔法騎士団で一番の剣士だ」


「なんていうか凄くチャラいイメージある人だよな。妹さんも大尉もデュトワ少佐と仲いいから、以前はしょっちゅう第3部隊に来ていたけど……あんな真面目な少佐の友人とは思えないぐらい」


 ──どうしよう。

 まさか知らない人に狙われているとは思わなかった。

 変な妄想ってなんだろう。


「あの人には気を付けてねノア君。直接の繋がり無いけど女遊びが激しいって聞いたから、なんかからかってくるかもしれない」


「何かあったら相談に乗るからね」


 優しい先輩達に囲まれながらも、一抹の不安を持ち私は火に薪をくべた。



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