21.討伐遠征1
ある日、朝礼でデュトワ少佐から厳しめの顔で「来週から討伐遠征に向かう」と全員に発表がされた。
みんなと一緒にでっかい声で「はい!!」って答えながら、初の遠征にウキウキワクワクが止まらない。
魔物の討伐。
魔法騎士団の本領発揮する場がついに来たのだ。
ロベール先輩に、どんな感じで討伐するのか聞いていると、少佐から声がかかった。
「ノア君、ちょっとこちらへ」
朝礼の後、デュトワ少佐に呼ばれて将校執務室に行くと、速攻で扉が閉められた。
「すみませんノア」
私は首を傾げたが、少佐はどうも私が魔物討伐を怖がっていると思っているらしい。
両肩に手を置かれ、苦悶の表情で謝罪された。
「貴女は私の真後ろに居てください。何が来ても私が傍にいれば……」
「何言っているんですか。私、魔導師ですよ? 仲間のフォローにまわるんですよね?」
「あ……あああ……でも、もし貴女の美しい肌に傷でも出来たら……」
「大丈夫ですよ。私召喚術使えますから。治癒の出来る妖精を喚べますし」
ぐっと唇を噛む少佐は酷く悔しそうだが、元々それをするために私は雇われているのだ。悔しがる要素など一つもない。
聞けば、魔導師が新人だったが為に、討伐遠征をずっと先延ばしにしてもらっていたとのこと。
「何の問題もありませんよ。それに私、初めての討伐遠征なので凄く楽しみなんです!」
元気いっぱいに答えたにも関わらず、少佐は私の頬に手を当てとても心配そうに見つめてきた。
出会って最初の頃は嫌な人だと思ったけど、影ではずっとこうして配慮してくださっていたのだろう。
「……無理だけはしないでください。何かあったら必ず私を頼ってください」
「有り難うございます」
「それと、テントのことですが……」
「テント?」
「一般の魔法騎士は、4人一組でテントを使います。ただ貴女の立場は魔導師です。だから……」
「だから?」
「私と……一緒です」
口元を押さえ、何故か顔を赤らめる少佐に私は言い返した。
「私みたいな入りたてのペーペーが将校と同じテントに入るだなんて出来ません。一人用のテントとかないのでしょうか?」
「一応安全の為に、現地では複数人での行動が厳守となります」
「なら私、他の団員達のテントに……」
「駄目です。昔から魔導師は将校と同じテントでしたから」
「でも……」
「駄目です。とにかく貴女は私と一緒なんです。他の団員とは同じテントにはさせません」
急に真顔で捲し立てる少佐に驚きつつも、取り敢えず素直に頷き受け入れた。
私みたいな新人だと少佐も心許ないだろうが、頑張らなきゃ!と気合いをいれる。
「あ、でも私、寝言とか煩いかもしれません。寝相もあまり良くないし……少佐の睡眠の邪魔をしてしまうかもしれません」
「……それは楽しみ……じゃなかった、大丈夫です。中央の休憩スペース以外寝室は別々ですから、あまり不安がることはありません」
「あ、そうなんですね。意外と広いのかな」
「広いですよ。魔導師団に作ってもらったテントですから。パッと見は小さいですが将校と魔導師用のテントなんかは中に入ると普通のルームシェアアパートメントと変わらないです」
「そうなんですか! なんか少佐と同じテント楽しみになってきました」
「……私も楽しみですよ」
こうして私達は一週間後、魔物討伐へと向かった。




