12.露見
──どうしよう、誰か来た……!
ドックン、ドックンと響く心音に手が震え、必死に持っていたバスタオルで身体を隠した。
魔法灯を消そうと手を伸ばす。
その時バンっ!!と、ドアが突然全開に開かれ、現れたのはデュトワ少佐だった。
「何者だ貴様!! こんな夜中に何をやっている!」
「……っ!」
少佐は手に剣を持ち、剣先からは一瞬電流が走っているのが見えた。
──魔法剣だわ……! どうしよう
「手を挙げろ!」
ぼんやりとした魔法灯の薄明りの中、怒鳴り声でさらに手足は震え、せっかく留めたバスタオルも外れかけた。
「何をしている! 早く手を挙げろ!」
──挙げられないよ! だってタオルが……
「手を挙げなければ、害意があるとみなす!」
「ま、待っ……!」
「覚悟しろ!」
「きゃああっ!!」
言い返す前に剣が勢いよく向かってきて、私はその場に崩れたが、そのまま上から取り押さえられダンっと音を立てて両手首を取られた。
衝撃でぶつかって、棚から落ちた魔法灯が緩やかに辺りを照らしながら転がってきた。
目をうっすらと開けると、とても怖い顔をしたデュトワ少佐が私に馬乗りになり、頭上で両手首を強く押さえ、もう片方の手で剣を喉近くまで押し付けて来た。
ゆらゆらと転がる灯りで上手く見えない。
光が2人を照らす度に視線がかち合う。
裸のまま拘束されて動けない身体。
デュトワ少佐の怖い顔。
限界だった。
「……っ やだぁ……助けて……っ」
ボロボロと涙が溢れ怖くて怖くてたまらない。
「……え? 女?」
「ごめんなさい……っ 謝るから……」
「ちょ、ちょっと待て……お前……」
「怖い……怒らないで……デュトワ少佐……!」
「…………お前…………ノア君か?」
「怖い……っ やだぁ……!!」
私の声と啜り泣く音だけがこだました脱衣所で、直ぐに私の拘束は外された。
ヒックヒックと何時までも泣き続ける私に、濃紺の軍服がそっと掛けられた。