表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/97

89話

キリアン様が目の前に現れるなんて思ってもみなかった。


お迎えは…一週間後だと手紙に書かれていたはず。


それもその横には、わたしは前世のアイシャの時の記憶でしか会っていない、お父様が立っていた。


「お父様ですよね?」

不思議に自然に話すことができた。


「わたしは……アイシャです。前世の記憶はありますが貴方の知るアイシャではありません」


わたしは素直に本当のことを伝えた。


お父様のわたしを見る目はとても優しかった。


ーーこの人はわたしの父親なんだ。

眠り続けていた時、前世のアイシャは再会していたがわたし自身は初めて。

なのに不思議にこの人を父親として認識してしまう。

本当のお父様だってわたしにとっては父親なのに……



お父様は優しく微笑んだ。

「アイシャ、よかった。目覚めたんだね?初めましてアイシャ、卒業おめでとう。

わたしもキリアンと一緒に迎えに来させてもらったんだ」


「ウィリアム様がどうしても一緒に来るって聞かないんだ。でもアイシャを驚かせるのに成功したから、まっ、いいか」


キリアン様は少し照れながら言った。


わたしがバナッシユ国でお世話になるのはお父様の屋敷。

手紙でやり取りはしていた。

だから、顔合わせのために連れて来てくれたのだろうと思った。


「これから卒業パーティーなんだろう?キリアンのエスコートで行ってきたらいい。わたしはウィリアム様と少し話をしたいからね」

お祖父様と一緒に行く予定だったのに、お祖父様はお父様と一緒に屋敷へと戻って行く。


「アイシャ、初めてエスコートさせて貰うね」

キリアン様はわたしのドレスに合わせて、しっかりと正装をしていた。


「アイシャ、行こう」


キリアン様は19歳でわたしと違って大人だと思う。

そっと腰に手を回して優しくエスコートをしてくれる。


そんな仕草にもドキドキして、耳まで赤くなってしまう。

初めて踊るキリアン様とのダンスはとても楽しかった。


キリアン様はダンスが得意でわたしをリードしてくれた。

続けて三曲も踊って、そのあとはヴィズと踊った。

そしてクラスメイト達とも踊る。


その中には、アリアやスピナもいた。


卒業パーティーなので、女の子同士でも気軽に踊った。


キリアン様はその間、学園の先生達と話をしていた。


キリアン様は、ルビラ王国でも筆頭魔術師の一人としての地位を賜っている。

そして、バナッシユ国では数人しかいない魔術師として国王に仕えているらしい。


前世の記憶でお会いしているジャン様が今は国王としてバナッシユ国を治めている。

ジャン陛下の元でキリアン様は常にお忙しくされているようだ。


「俺は使いっ走りなんだ」

と教えてくれたけど、キリアン様の実力はルビラ王国でもかなり優秀で、本当はお祖父様もイルマナ様もルビラ王国に残って欲しいと思っているようだった。


だから、キリアン様は学園の先生達にこぞって話しかけられるのだろう。


それに、最後だから友達と過ごす時間をわたしにくれたのだろう。


わたしはみんなとはしゃいで笑って楽しい時間を過ごした。


帰りの馬車でキリアン様と二人になった。


「アイシャ、楽しそうだったね」

にっこりと笑い優しくわたしに話しかける。


「はい、とても楽しかったです。キリアン様に気を遣わせてすみませんでした、ありがとうございました」


「全然。君が楽しそうにしている姿も見れたし俺も楽しかったよ」


「キリアン様は先生方からの人気が凄かったですね」


「なんとか俺をこの国に引き止めようとしてるんだ」


「やっぱり優秀な人は違いますね」


「それはアイシャのことも含めてなんだよ?俺がこの国に残ればアイシャも出て行かないだろう?彼らは俺とアイシャにこの国に残って欲しいんだよ」


「キリアン様ならまだしもわたしを引き止めてどうしたいのかしら?」


不思議に思いキリアン様に聞いた。


「アイシャは自分の価値をわかっていないんだね。リサ様はもう医者に見放されて死を待つしかなかった。そんな彼女の病気を治して、闇にのまれてしまったターナを助けたのもアイシャだろう?

君の実力はこの国のトップレベルなんだ、出て行ってほしくないに決まってるだろう?」


「わたしが治療できたのは、お祖父様とイルマナ様、キリアン様が助けてくれたからです。一人では出来なかった……」


「君の膨大な魔力と、光魔法、そして最近は繊細な技術も身につけたからね、ルビラ王国は君を大事にしなかった罰をこれから受けるかもね」


「………罰?」


「うん、災害や伝染病が起きた時に守ってくれるはずの聖女がいなくなるんだ」


「聖女?誰のことですか?」


「……誰のことだろうね?君が心配することはないよ」


キリアン様が笑みをこぼした。


わたしはそんなキリアン様にとりあえず微笑み返すしかなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ