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第8話  

久しぶりの自分の部屋なのに病室より落ち着かない。


わたしは、ベッドに入り横になっているとミケランがひょいっとベッドに上がってきて、ゴロゴロ言いながら体をわたしにすり寄せてきた。


「ミケラン、ただいま。ふふ、甘えん坊さんね」


わたしがミケランを撫でていると、手にポタポタっと涙が落ちてきた。


泣きたくないのに……

ずっと我慢していたのに……


涙が止まらない。


屋敷の使用人はやはりわたしを貰い子だと思っているみたいだ。


ターナと一緒にわたしを嘲り、馬鹿にしていた。


わたしはミケランを籠に入れて、少しのお金だけを持ちこっそり屋敷を出た。


表と裏の門にはレオンバルド家お抱えの騎士達が常に見張っている。


なのでわたしは、出入り業者が出入りする門の近くに隠れて、業者の馬車の荷台にこっそり乗り隠れて外に抜け出した。


街に着くとこっそり荷台から降りて、わたしはミケランの入った籠を抱えて、街の貸し馬車に頼んで、お祖父様の屋敷へ向かってもらった。




「止まりなさい!」


お祖父様の屋敷も元王弟で公爵家なのでかなり広くて大きなお屋敷だ。


「アイシャです、通ってもいいかしら?」


わたしが馬車の窓から顔を出すと、門にいた騎士が驚いていた。


「アイシャ様?どうされたのですか?」


「お祖父様に会いたくてきたの。いらっしゃるかしら?」


「は、はい。本日はお屋敷にいらっしゃいます」


「よかった。では通してください」


「どうぞ」


騎士の人達は我が家の馬車で来ていないし一人っきりだったので疑っていたが、わたしの顔を知っているので入れてくれた。


貸し馬車の御者さんは恐る恐るわたしを屋敷の玄関の前まで送ってくれた。


そして使用人達はわたしの顔を知っているのですぐに屋敷の中に招き入れてくれたのだが、まだ退院してきたばかりなので体力が落ちているのか、少しフラっとしてしまう。


「アイシャ!どうしたんだ!突然来て!それに顔色が真っ青だぞ」


お祖父様はわたしの顔色を見て急ぎベッドに寝かせてくれた。


そしてわたしの体に手を翳してくれた。


「少しだが癒しの治療をしておいた。アイシャ落ち着いたら話を聞かせてくれ」


お祖父様はわたしの髪をそっと優しく撫でると

「今はとにかくゆっくり寝なさい」

と言って何も聞かないでくれたので、わたしはゆっくり眠ることにした。





お祖父様は魔術師だ。


前国王の弟で公爵でもあるが、それよりも魔術師としての力が強くいざという時に国のために動く人でもある。

お母様もお祖父様と共に国のために働いていたらしい。


今はお母様は癒しの魔法を使い、医師として王宮に勤めるようになった。

お祖父様は引退して屋敷でゆっくり過ごすことが多い。でも有事の時はすぐに駆けつけられるように今も魔法の鍛錬は続けている。

わたしも制御ができないのでお祖父様のところに来てたまに教わっている。



ああ、また、夢を見る。


嫌だ、一人は寂しい。


どうしていつも一人でいるんだろう?


どう見てもわたしより年上の……わたし。


怖い女性に叱られて折檻される。


使用人達に罵倒されて食事を抜かれる。


ああ、また鞭で叩かれる。


夢なのにあの痛みが何度も思い出される。


死にたい、なんでわたしは生きているのだろう。


夢なのに、夢のはずなのに、どうしようもなく辛くて悲しくて死んでしまいたくなる。





「………………アイ…シャ……アイシャ」


ハッ。


誰かがわたしを呼んでいる。


目が覚めるとお祖父様がわたしを抱っこして心配そうに顔を覗き込んでいた。


「…………お祖父様?」

わたしが寝ぼけながらキョトンとすると


「魘されて泣いていたぞ。怖い夢を見ていたのか?」


「…あ、う、うん……よく覚えて……いません………」

わたしはいつも見る夢の話は誰にもした事がない。


言ってはいけない気がする。


よくわからないけどこの夢は誰にも伝えてはいけない。

だってわたしは明るいアイシャでいつも幸せな顔をしていないといけないから。


「お祖父様……突然来て申し訳ありません。しばらく入院をしていて体が鈍ってしまって……お医者様に駄目って言われたからこっそりやって来ました。魔法の制御早く出来るようになりたいの、じっとしてると体も鈍っちゃうし!」


わたしは魘された話を逸らすかのように明るくお祖父様におねだりした。


「入院?知らなかった。大丈夫なのか?」


「うん、ちょっと転んで怪我したの。お母様が治療してくれたからもう平気なの。それよりも早く魔法のお勉強したいの」


「アイシャ、お前の体の様子を見てからにしよう。学園はどうするんだ?」


「しばらく……ここから通いたいな」


「…………わかった、リサにはわたしから連絡しておこう」


















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