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64話

「わたしは……アイシャを愛している。なぜなんだ?家族を愛してみんなで幸せになりたい、なのにどうして君がいると家族の輪が壊れてしまうんだ?」


「ふふ、それが本音なんですね?」

ハイド様の言葉がわたしの中のアイシャちゃんに伝わってきた。


「……お……と…う……ま………わた……ごめ……い…」


ーーこんな酷い言葉で目覚めるなんて……わたしはアイシャちゃんの中に入っていく……

アイシャちゃん、ごめんなさい、守れなかった、守ってあげたかったのに……



ーーアイシャ、わたしのために悲しんでくれてありがとう


ーーお願い、アイシャちゃん、この世界はあなたにとって幸せな場所なの。忘れないで、わたしはあなたをずっと見守っているから


ーー大丈夫。わたし、強くなる。アイシャがずっとわたしと一緒にいてくれるから……ありがとう




ずっとずっと眠り続けていた。


もう辛いことなんてイヤ、要らない。

そう思っていた。なのにもう一人のアイシャがわたしの代わりに頑張って生きようとしてくれた。

わたしをずっと守ってくれた。


心の中がずっとあったかくて、嬉しくて、でも庇って生きようとしてくれることが切なくて……


目覚めなければいけないのに、怖くて……



わたし達は一つになった。





「お父様……」


「え?」

わたしの言葉に反応したお父様……


「ごめん…な…さい」

わたしはお父様を見つめ頭を下げた。


「……わたしが生まれてしまったことが……お父様とお母様を不幸にしていたんですね」


「ち、違うんだ……思わず言ってしまっただけだ……アイシャのことが大切なんだ、それは本当だ」


「アイシャ、目覚めたの?」

横からキリアン様が話しかけてきた。


「キリアン様、ずっとわたしを見守ってくれていてありがとうございました」


「よかった……」


「アイシャ、おかえり」

お祖父様がわたしを抱きしめた。


そして……


「もうお前はあの家庭に帰る必要はない。わたしの元でずっと暮らせばいい」


「お祖父様……ありがとうございます」

少し困った顔をしながらわたしが微笑むと


「アイシャ、アレは父親ではない。赤の他人だ。気にするな」

お祖父様はお父様を部屋から追い出した。


「アイシャ、アイシャ、わたしが言った言葉は撤回する、お願いだ、君はわたしの大事な娘なんだ」


「いいから連れ出せ!もう二度とお前達の顔は見たくない」

お祖父様は吐き捨てるように言った。


「長い間ご心配をおかけしました」


「いや、うん……心配したぞ」


「ずっとずっともう一人のアイシャがわたしを包み込んで守ってくれていました」


「そうか」


「はい、おかげでわたしの心は回復して、さっきのお父様の言葉にも傷つくことはありません」


「大丈夫なのか?」


「平気です、もう一人のアイシャの記憶とわたしの辛かった日々がわたしの心を壊してしまったけど、眠り続けている間アイシャがわたしを守ってくれたんです、すっごくあったかくて……もうお父様達のことくらいで傷つくことはありません」


「……そうか、お前は乗り越えたのか」


「……はい」


そしてキリアン様の顔を見た。


「キリアン様、きちんとお会いするのは初めてだと思います。もう一人のアイシャの間ずっと一緒にいてくれてありがとうございました、そして……前世の家族に会えたこととても幸せでした」


「……アイシャお姉ちゃんは?」


「大丈夫です、わたしの中で………一つになってアイシャとしての記憶も全て覚えています、なんだか自分なのに自分ではないみたい、……新しく生まれ変わった気分です」


「わたし、メリッサとロウト、ミケランに会いたいです」


「分かった、呼んでこよう」

お祖父様が急ぎ呼び出してくれた。


「メリッサ、ロウト、心配かけてごめんなさい」


「アイシャ様ですか?」


「アイシャ様……お帰りなさい」


二人がわたしを見て嬉しそうに笑った。


そしてメリッサと抱き合った。


「ずっとそばにいてくれてありがとう」


わたしがメリッサと抱き合っているとミケランがわたしの足元で「ミャーミャー」と鳴きながら顔をスリスリとしてきた。


「ミケラン、心配かけてごめんね。ただいま」


わたしが抱き上げるとミケランは怒っているのか前足をわたしの顔に近づけて、ポコポコと叩いてくる。

肉球が顔に当たる。


ーーミケランの肉球が気持ちいい

久しぶりの感触に癒された。


みんなの笑顔にホッとした。

眠り続けている間、意識は微かにあった。


でも怖かった、この世界に戻ってくるのが……


お父様とお母様、ターナとの関係は壊れてしまった。

いつか元には戻れなくても、分かり合える日がくるのかしら?

今はなぜか気持ちがスッキリとしている。


わたしは家族に捨てられた?


なのに……






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