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61話

「お父様、お兄様、お元気で過ごしてくださいね」


前世のアイシャとして会うのはもうこれが最後だろう。


わたしは二人と抱き合い、別れを惜しんだ。


マーシャリ様、アリーちゃん、ケビン君との別れもとても寂しい。


「アイシャお姉ちゃん、行かないで!」

ケビン君がわたしのドレスの裾をギュッと掴んで離さない。


「ありがとう、ケビン君。わたしもケビン君とアリーちゃんと仲良くなれて嬉しかったわ。次会う時はアイシャお姉ちゃんではなくてアイシャとして会いたい。その時はわたしと違って魔法が使える元気な女の子として現れると思うの。その時はまた仲良くしてね」


「……うん、でもアイシャお姉ちゃんのことは絶対に忘れない」


涙をポロポロ流しながらわたしに抱きつくケビン君が可愛くてわたしも抱きしめ返した。


アリーちゃんも、わたしの手を握りながら泣いてくれた。

「アイシャ様、またお会いしたいです」


わたしは約束はできないけど、「またいつか」とだけ答えた。


そして、数週間過ごした実家を後にした。



◇ ◇ ◇


1週間ほどエマ様とサラ様、ゴードン様達とゆっくりと過ごした。


ゴードン様から話があると呼ばれて執務室へ行った。

そこにはキリアン君とカイザ様がいた。


カイザ様はバナッシユ国にわざわざ来てくれていた。


「カイザ様お久しぶりです」


「まだお祖父様とは言ってもらえないのか」


「すみません、アイシャちゃんはまだ眠り続けています」


「そうだな……ずっとお祖父様と言われてきたアイシャに、カイザ様と言われるのはとても悲しいものだな」


「………すみません、わたしはお祖父様とは呼べません」

そう、わたしの中にいるアイシャちゃんとわたしは別なのだ。


◇ ◇ ◇



カイザ様の訪問はエレン夫人、いや、元王妃の話だった。


元王妃はクリス殿下とターナちゃんを使ってアイシャちゃんの精神を追い込んでいたらしい。

元々二人ともアイシャちゃんに対して思うことがあったのだろう。


それを助長させて二人はアイシャちゃんへ攻撃していたみたいだ。


そしてクリス殿下は強制的に辺境伯である王妃の叔父のところへ行き、今はそこで再教育が始まったと聞いた。

王妃も離宮で静かに過ごすことにされたらしい。


同じ王妃なのにここまで違うのか……


そしてターナちゃんは……


ターナは治験者として選ばれた。



そこは義父であるカイザ様の研究所。


魔法と医術を使った治療法を研究している。


カイザ様の時を止める魔法は、転生前のわたしのような心臓病の時に活躍する。

心臓だけ時を止めてその間に治療をするのだ。

これはかなり画期的な治療で我が国でしか出来ないことらしい。

そしてここで研究されているのが、「夢」の治療。


病んだ精神疾患の患者から怖い夢を取り除き楽しい夢を見せるのだ。

もちろん未だ研究段階である。


ターナちゃんにはターナちゃんが今までしてきたアイシャちゃんへの嫌がらせを本人に実体験してもらう。


それがターナちゃんへの罰だと聞かされた。


「ターナちゃんは自分が何をして何を言ったか気がつくのでしょうか?」

わたしはカイザ様に思ったことを口にしていた。


「……あの子の心はかなり歪んでいる。最終的には他のことも視野に入れている」


「他のこと?」


「それは最終だから、アイシャにはまだ話せない」


カイザ様の顔は少し怖かった。

これ以上聞いてはいけないのだと思った。


わたしの中で眠るアイシャちゃんはこの話を聞いているのだろうか?


そして、王妃と元王妃の話を詳しく聞いた。


「…………そんなことがあったんですね」


あまりにも三人の酷い態度にわたしは絶句した。

だから、二人は強制的に再教育を受けることになったのか……


「元王妃は今は?」


「今はルビラ王国の地下牢に入れて聴取をしているところだ、いずれはバナッシユ国に引き渡す予定だ。

まあ、その前に王妃殺害未遂でわが国でも裁く予定なので、どんな状態でこちらに引き渡すかは分かりませんが」


それを聞いて想像しただけでとても恐ろしかった。


「元王妃はせめて息だけはしている状態でこちらに引き渡していただきたいものだな」


ゴードン様が横から話しかけた。


「まあ、善処しますよ」

カイザ様は笑っていた。


二人の話を聞いてわたしはただ固まるしかなかった。












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