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45話

「ふふ、ターナったら、そんなこと言うものではないわ。アイシャが捨て子だなんて……ただ転生してわたしのお腹に入った子よ。死んだのに未練を残してまた生き返った哀れな子なのよ」


ああ、二人の言葉にアイシャちゃんの悲しみが辛さが、全身を駆け抜ける。


痛い……心が壊れそう。


わたしは必死でアイシャちゃんの心を抱きしめた。


アイシャちゃん、聞いてはダメ!

こんな人達の言葉なんか聞かなくていいの!


わたしはやっと絞り出すように声を出した。


「リサ様、確かにわたしは死を選びました。でも転生を望んだわけではありません……リサ様はアイシャちゃんが生まれ変わったことを哀れだと思っているのですね?前世のわたしと今世のアイシャちゃんは同じだけど別人格です。アイシャちゃんは貴女の娘ですよ?」


リサ様は驚愕した目でわたしを見た。


「え?アイシャではなく……前世のアイシャ?」


「はい、リサ様……あの時は助けて頂いたのに死を選びました、わたしの死はそんなに哀れでしたか?アイシャちゃんは貴女にとって蔑み娘としても見られないほど酷い娘なのですか?」


リサ様は青い顔をしてわたしを見ながら震えていた。


「アイシャは?アイシャはどこに消えたの?」


「アイシャちゃんはリサ様とターナちゃん達からの酷い態度と前世でのわたしの記憶が蘇ったせいで、眠り続けることを選びました。もうここにはいません、だから安心してください、貴女の娘だったアイシャちゃんはもういません」


わたしはリサ様に優しく微笑んだ。


「アイシャがいない?」

リサ様はどうしたのだろう?


嫌いなんでしょう?

憎んでいるようにも見えた。

いなくなって清々したのではないの?


「リサ様?喜ばないのですか?」

わたしはコテンと首を傾げた。


「喜ぶ?アイシャがいなくなったのに?」


リサ様は天井をじっと見つめていた。

その横にいるターナちゃんは、そんなリサ様を見つめていた。


わたしはターナちゃんにも聞いてみた。


「ターナちゃんはお姉ちゃんがいなくなって嬉しいでしょう?」


「お姉様?何を言ってるのですか?」


「わたしはターナちゃんのお姉様ではないわ、アイシャちゃんはこのまま眠り続けてたぶんもうすぐ消えてしまうと思うわ」


「アイシャが消える?」

リサ様は震えが止まらない。


ハイド様はわたしを見る目が怖い。


「アイシャが消える?何故?どうして死んだはずの君が現れたんだ?アイシャの体を乗っ取ったのか?」


「違います、アイシャちゃんが自ら眠り続けているんです、もう心が壊れかけているんです、壊したのはあなた達でしょう?」

わたしは三人を見つめた。


リサ様は真っ青な顔をして突然言い訳をしだした。


「わたしはアイシャを愛しているわ、アイシャのためにと思って厳しくしてあげたの、アイシャは甘えているから少しキツく躾けたのよ?アイシャは、アイシャは……魔力がものすごくあるの、なのにコントロールが下手で制御ができないの、属性もわからないし周りの人たちから笑われる子なの、だから、だから、わたしが厳しいことを言わないと……だって笑って誤魔化して……いつも笑顔なの……笑っているの、だから傷つかないと思っていたの、そうでしょう?悲しそうな顔なんて見たことないのよ?アイシャはいい子で笑顔が可愛くて、とても聡明で自慢の娘なの……アイシャがいなくなる?消えてなくなる?」


リサ様はガタガタと震え出した。


「いやよ!嫌あ!アイシャを元に戻して!アイシャ、私のアイシャを返しなさい!」


リサ様はわたしの肩を掴んで叫び出した。


「やめなさい!リサ!」

その声はカイザ様だった。


ずっと黙ってわたし達の話を聞き続けていたカイザ様の声はとても怖かった。


「リサ、ターナ、お前達はアイシャを見下し蔑み心を壊した。お前達にアイシャと話すことを禁じる」


その途端二人はわたしに向かって話そうとしても、口をパクパクさせるだけだった。


「カイザ様……」

わたしがカイザ様に振り向くと、カイザ様は深々と頭を下げた。


「アイシャ、すまなかった。ここまで酷いとは思わなかった。この二人の教育はわたしが責任を持って行う」


わたしは、「許します」とも「大丈夫です」とも言わなかった。


「アイシャちゃんはこのままでは消えてなくなるでしょう」


そう言ってわたしはみんなに出て行ってもらいたいと態度で示すつもりで毛布を頭から被って横を向いた。


「アイシャわたしは君をちゃんと見ていなかった。今さら言い訳はしないよ、いや、してはいけない。

でも消えないで、生きて欲しい。我々を捨ててくれていい、憎んでくれてもいい、生きてさえいてくれればいいんだ、消えないで、生きて……」

ハイド様はそう言うと、二人を連れて出ていった。


リサ様は

「……………」

口をパクパクさせながらアイシャであるわたしの姿を泣きながら振り返っていた。


リサ様は今何を思っているのだろう?


アイシャちゃんがいなくなって驚いているけど、落ち着いた頃に感じる感情は………


後悔?安堵?それともアイシャちゃんへの怒り?


カイザ様は、アイシャちゃんに向かって語りかけた。


「アイシャ、生きろ!辛いことがあるなら大きな声で文句を言って、わたし達を罵れ!

何も言わずに眠り続けるな!

まだ諦めるな!

お前を思って待っているロウトとメリッサのことを考えろ!お前の友達も意識がない間、何度も会いにきているんだ!

頼むからわたし達の声に耳を傾けてくれ!」







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