表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/97

32話

お祖父様に夢の話をした今夜はとても心が軽くなってぐっすり眠れそう。


メリッサが洗った髪を乾かして綺麗に梳かしてくれた。


「アイシャ様、電気を消しますね」


メリッサに促されてベッドへ行くとミケランはもう随分前からわたしのベッドの上で寝ていた。


「ミケラン、おやすみなさい」


もちろんミケランはわたしのことなど無視してぐっすり寝ていた。


「ふふ、可愛い!」

ミケランの可愛い寝顔を見ていたらわたしもそのまま眠りに落ちた。


あの不思議な男の子がまた夢に出てきた。


男の子を抱っこする女性……


見たことがない人だった。


他にももう一人……

二人の女性は母娘かしら?


この小さな男の子は女性の息子?


三人がわたしを見てニコニコと笑っている。


わたしのことを知っているの?


貴女達は誰?


どうしてそんなに優しい瞳でわたしを見るの?





◇ ◇ ◇



お祖父様に夢の話をしてからのわたしは不思議なことが起こり出した。


そう、わたしにとって夢だった魔力の制御ができ始めたのだ。


あんなに苦労してどんなに努力しても時間をかけても難しかった制御が今はとても楽にできる。


そして、水を操ることも火を操ることも土を操ることもできるようになった。

まあ、まだ下手くそだけど。

最近は庭の枯れ始めた木に優しく魔力を注ぎ、元気にさせる訓練を始めた。


これがとても面白くて庭師のバイセンからの頼まれごとが増えた。


「アイシャ様、ここの土が固くて掘れないので柔らかくして欲しい」

とか

「水捌けの悪い土の改良を頼みたい」

とか

「最近雨が降らないので水撒きをして欲しい」

とか……


「ねえ、バイセン、それってわたしの魔法の練習になっているのかしら?なんだかいいように使われている気しかしないのだけど?」


「アイシャ様、知っていますか?

一石二鳥という言葉を」


「なあに?その言葉?」


「一つの行為から二つの利益を得ることが出来るってことです。アイシャ様もわたしも得するということですよ」


「ふうん、わたしの練習がバイセンにも得になるって言うことね。なんだか納得いかないけどわかったわ」


大人に丸め込まれた気がするけど、練習は楽しいしまあ、いいかな。


「バイセン、次は何をしたらいいかしら?」


「アイシャ様は枝を切るなんて出来ますか?」


「木を丸裸にすればいいのね、やってみるわ」

わたしは木に向かって魔力を放……「だ、駄目です!やめて!」


「え?」


バイセンが焦って大声を出したので、わたしは魔法を放つのをやめた。


「どうして止めるの?」


「いらない枝を私の指示したところだけ切ってください」


「え?そうだったの?細かい魔法のコントロールの練習ね、頑張るわ」


わたしとバイセンの会話を聞いていたロウトがお腹を抱えて笑い出した。


「アッハッハッハ!

バイセンさん、アイシャ様にはきちんと説明しないと駄目ですよ」


「ロウト失礼ね、ちゃんと理解できるわよ!」


「いや、普通木を丸裸にはしませんよ」


「未遂だったじゃない!」


久しぶりに大きな声でみんなで笑った気がする。


悪夢はもういなくなったのかもしれない。


あんな怖い夢がもし現実だったらわたしの心は壊れていたかもしれない。


よかった!夢はやっぱり夢でしかないのよね。


練習が終わってロウトとわたしの部屋へ帰ってからメリッサとロウトと久しぶりに三人でお茶を飲んだ。


わたしはお祖父様に話した夢のことを二人にも初めて伝えた。


お祖父様に話してから不思議と心も体もが軽くなり、魔力のコントロールが出来るようになったことを話した。


「あんな怖い夢がもし現実だったらわたし生きているのも辛いかもしれないわ、お父様もお母様も会いにはきてくれないけど……わたしは嫌われているわけではないし大事にされているもの、お祖父様もロウトもメリッサもいてくれる。それにアリアとスピナ、ヴィズもいてくれるわ。

あんな怖いこと、夢でよかった」


わたしがそう言うと二人が、何故かぎこちなく笑った。


「アイシャ様はもうその怖い夢は見ないのですか?」


「うん、お祖父様の屋敷に来た最初の頃は見ていたけど最近は見なくなったの。代わりに小さな男の子の夢を見るのよ」


「小さな男の子?」


「そうなの、でもね名前が出てこないの。まぁ夢だから名前なんてないよね、その子の夢を見た日はとても心が穏やかになってホッとして温かいの。

わたしの守り神なのかしら?」


わたしがそう言って微笑むと二人が

「いい夢を見られて良かったですね」

と言ってくれた。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ