26話 カイザ編④
「アイシャとそろそろ話す時が来たんだな…まだ体調が落ち着いていない時だから、もう少し先でと思ったが、先延ばししてアイシャの心が傷付くならきちんと今向き合うべきなのかもしれないな」
わたしはアイシャと向き合うことにした。
リサ達との話し合いは喧嘩別れになった。
アイシャが我が家に家出してきた日のことを思い出す。
『お義父さん、アイシャが今何かを抱えていてそちらに行ったことは、わたし達夫婦があの子を分かってやれないことだと承知しています。
ターナのことはこれから様子を見ていきます。
アイシャを少しの間よろしくお願いします』
『そうか……アイシャに寄り添うことなくわたしに託すか。
わかったよ、君たちは親失格だ。アイシャをお前達に会わせることは二度とない』
『そんな……ただアイシャがそちらに行ったのなら少しだけ面倒をみて欲しかっただけなのに』
リサが青い顔をしてわたしをみた。
『リサ、以前のアイシャを思い出せ。あの子がなぜ死を選んだのか』
あの二人からは、あれから一切連絡すら来なくなった。
アイシャに対して愛情すらないのか……
様子を見る?
アイシャはここに居てお前達の前にいない。
そんなアイシャの何が見えるんだ。
ターナだって、アイシャがいる時に意地が悪いことをしていたんだ。
アイシャがいなければ何もしないだろう。
だったらターナの本質などどうやって見るのだ。
あの夫婦は忙しい。
人のため、領民のために働いているし、悪い奴らではない。
でも親には、なれていない。
全く成長していない。
口先だけで子育てをしてその場だけ可愛がっても、子ども達の心の中まで寄り添えていない。
表面だけ見て、二人が笑顔で良い子だからと安心しきっている。
都合の悪い事は、耳に入れようとしない。
目に見えても、目を逸らしている。
そんなの親ではない。
親になりきれない、クズだ。
ただ、あまりにもアイシャに伝えるには重すぎる話ばかりで、アイシャの心が救われるとは思えない。
いくらリサ達が実の親だとわかっても転生前の話を全て語るのはまだ避けるべきなのかもしれない。
リサ達のことだってどう伝えてもアイシャにとっては辛いだけだろう。
どこまで話すか……
悩み、考え、なんとか話を整理した。
メリッサとロウトに頼ることになるが、わたしも出来るだけアイシャと共に過ごそう。
アイシャは今この世界でみんなに愛されている、必要とされていることを伝えて、行動で示し、生きていることの幸せを噛み締めて欲しい。
本当はリサ達が家族としてアイシャに寄り添って守って欲しかった。
わたしはもう一度だけアイシャに伝える前にリサ達夫婦に会いに行くことにした。
これが最後だ。