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21話

「ここは……？」

キョロキョロと周りを見渡すと知らない部屋で寝ていた。

「アイシャ！」

お祖父様がわたしを覗き込んで見つめた。

「お祖父様？」

「やっと目が覚めたか……守ってやれなくてすまなかった」

確か先輩達に囲まれて文句を言われて足を引っ掛けられて……お腹を蹴られて……髪の毛掴まれて……

う、ううっ……

思い出したらだんだん腹が立ってきた。

王子と仲がいい？

何処が？

会うたびに嫌味を言われるか馬鹿にしてくる。

この前なんか本投げつけられて怪我させられたし！

わたしがムスッとしていたのでお祖父様が勘違いして

「アイシャ、すまなかった。酷いことを言われてさらに暴力を振るわれて……あの者達は全てそれぞれの家に文書で伝えたが、今は牢に入れている」

「え？まだ12歳の子供なのに？」

わたしが驚くと

「だからと言って人に怪我をさせる程の暴力を振るっていいわけではない。きちんと取調べをしてこれからどうするか決めることにしている。

ただ、今回のことはあの馬鹿王子の仕業ではない。

女の子達が勝手にお前に対して行ったらしい」

「……そうなんですね………あっ！」

「どうした？」

「お祖父様が治してくれたんですね、ありがとうございます」

あれだけ蹴られたのにお腹の痛みがなくなってる。

癒しの魔法は誰でも出来るわけではない。

お母様は出来るけど、お祖父様は少しだけしか出来ないと言っていた。

なのにこんなに痛みがなくなっているから驚いた。

「あー、それはわたしではない。通りすがりの少年がお前を運んでくれたんだ、その子が癒しの魔法の保持者でお前の怪我を治療してくれたんだ」

「え？そうなんですね、お礼を言わないと………」

周りをキョロキョロ見渡したけど誰もいなかった。

「もう帰ったよ、わたしからお礼はしっかり言ったから大丈夫だ」

「……そうですか……でもわたしもお礼を言いたかったです」

「アイシャ、今回のことは初めてなのか？それともされたことはあるのか？」

「王子の取り巻きに陰口を言われたことはありますが暴力を振るわれたのは初めてです」

「……そうか、よく我慢したな、魔法を使ってやり返さなかったから偉かったぞ」

「だってわたしの魔法だとどうなるかわからないから、怖くて使えないもの、でもよくわからないんです。どうしてあんなに激しい憎しみをわたしに向けるのか……王子とわたしはそんなに仲良くありません」

「うーんそれはまぁ、あの馬鹿王子だから……周りにはダダ漏れなんだろう……」

「うん？」

お祖父様の言葉の意味がよく分からずキョトンとしていると

「まだお前には分からないかもしれないな」

と言いながらわたしの頭に手を置いて髪の毛をクシャクシャっとした。

「ロウトが外で待っている、屋敷に帰ろう」

あー、ここは学園の診療所ね。

見たことがない景色、シンプルでスッキリした部屋の理由がわかった。

「アイシャ様帰りましょう」

「うん、ロウトありがとう」

ロウトはわたしを抱き抱えて、馬車まで連れて行ってくれた。

今日わたしを取り囲んだ先輩達は、牢に入れられたと言っていた。

どうして捕まることがわかっているのにあんなことをしたのかしら？

屋敷に帰るとメリッサが一目散に走って抱えられているわたしのそばに来た。

「なんて痛々しいの…わたしの大事なアイシャ様に怪我をさせるなんて、許せない！」

学園の中は安全なので、学園では自由にさせてもらっている。

メリッサからすれば安全なはずの学園で怪我をするなんてと驚き怒っていた。