20話
「アイシャ！」
僕は蹲り怪我をして動けなくなったアイシャをたまたま見つけた。
「あ、貴方は誰ですか？」
アイシャの友人二人が僕を見て睨んできた。
「僕は……昔の知り合いだ。それよりもアイシャが大怪我をしている、早く治療をしなければ！退いて！」
二人を振り払い急ぎ彼女を抱えて医務室へ運んだ。
「先生、怪我をしている子がいます。僕が治療してもいいですか？」
「どうした？」
先生がアイシャの怪我を診ている。
膝から血が出ていた。
さらにお腹を何度も蹴られてあざができていた。
そして頭を打ったようで、意識がない。
「何人かの生徒から蹴られたりしたんです、倒れる時に頭も打って、蹴られたんです……」
「助けようとしたのに押さえつけられて助けられなかった……」
二人の女子生徒が泣きながら先生に訴えていた。
アイシャは至る所にアザができていた。
僕は物凄い形相だったらしく、先生が
「君が治療するといい。『癒し』の魔法を使ってやってくれ。このまま放っておくと痕が残ってしまうだろう、まだ若いから少しでも傷は残らない方がいい、それにお腹にかなりの痛みがあるようだ」
先生の言葉を聞いてすぐに彼女の怪我に両手を当てて治していった。
たくさんの魔力を使い治療するとまだ子どものアイシャには負担がかかる。
数日に分けて治療する方がいい。
でも少しでも治してやりたい。
ギリギリのところまで治してあとはカイザ様に任せよう。
「先生、アイシャはカイザ様の孫です。あとは屋敷に連れ帰りカイザ様が治療をしてくれると思います」
僕はそれだけを言うと、診療所を離れた。
まだアイシャには会えない。
会って僕を思い出し、苦しむかもしれない。
カイザ様と約束している。
カイザ様がアイシャに時期を見て話す。
それまでは会わないで欲しいと言われている。
アイシャに記憶がないのなら、あの辛い日々を思い出すのはただ苦しいだけだろう。
でも、リサ様に似ていないアイシャが苦しんでいるのも事実。
隠し続けるのもそろそろ難しい。
どこまで話すか見極めるのも難しい。
僕は今イルマナ様のところで医術と魔法を習っている。
そして今日はイルマナ様に頼まれて、学園の診療所にいる先生に届け物を持ってきて帰るところだった。
たまたま女の子が倒れているところに通りかかって助けようとしたら、アイシャだった。
また、アイシャは、今世でも辛い思いをしているのか……
僕は腹が立った。
『生きるのが辛い…死にたい』と言って死んだアイシャ。
幼い僕の記憶には何故かアイシャと過ごした日々がずっと残っていた。
そしてルビラ王国に来て、アイシャが転生していることを知った。
彼女を見た瞬間、幼い頃の記憶が白黒から鮮やかな色に変わった。
忘れられない思い出。
ずっとずっと忘れられなかった。
でもアイシャは僕のことを覚えていない。
それでも……
僕はカイザ様に連絡を取った。
返事は「待って欲しい」だった。
だから会わずにいるのに、アイシャはリサ様の屋敷でも辛い思いをしていると聞いた。
それでもカイザ様が守っているから、僕は爆発しそうな気持ちを抑えているのに、何故またアイシャがあんな思いをしているんだ。
「くそぉ！」
