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13話

わたしは早速朝食後から、ロウトを捕まえて練習を始めた。


「ロウト、ほんの少しだけ魔力を出すって思ったより難しいわ」


庭に出てミケランとロウトと魔法の練習を早速始めてみたのはいいけど、少し出したつもりなのにわたしがすると花の上に大雨が降り出してしまう。


ミケラン用のお皿には水が少し入るどころか水圧でお皿がもう何枚も割れてしまった。


「アイシャ様、いきなり出来たら天才ですよ。失敗しても大丈夫です」


「……だって、だって、悔しいもの!」


「はあ、その悔しいと思う気持ちをどうしてターナ様や殿下に向けないんだ」

ロウトが一人でボソボソと何か言っている。


わたしはロウトの独り言に関わると面倒くさそうなので知らん顔して、今度は庭にあった小さな小石に向けて魔力で持ち上げる練習を始めた。


すると、

「ボコっ」

庭園に埋め込まれた敷石が何個も浮いてしまった。


「ロウト!大変!い、石がいっぱい浮いてきてる!」


「はっ?な、何やっているんですか!」


「え?小石を浮かそうとしたら何故かいっぱい敷石が浮き始めたの?ど、どうしたらいいと思う?」


「どうするって……やさぁしく、やさぁしく、そおっと、置く感じで、集中して、優しくですよ!」


「わ、わ、わかった……やさぁしく、やさぁしく………そおっと………そおっと……」


宙に浮いていた敷石が少しずつ元の位置に戻り始めた。


(は、初めて、わたしの魔力をセーブ出来た!)


あと少し……


あ、あと……


「ロウト!あと、あと少し………」


「あ、ああああー」

ロウトがわたしを見ながら叫んだ。


「なんでアイシャ様最後で集中切らすんですか!」


「へ?だ、だって、嬉しかったんですもの」


「敷石が何個か割れてしまったじゃないですか!あと少しで全部元に戻るはずだったのに!」


わたしが嬉しくなってロウトに振り向いて話しかけた瞬間コントロールが乱れて、あと少しのところで敷石が何個か割れてしまった。


「ねえ、ロウト。なんとなくコツが掴めたわ。ミケランを浮かしてみようかしら?」


「はあ?なんでそこにいきなりミケランで試そうとするんですか?」


「え?猫なら落ちても自分で着地できるでしょ?猫って上手に木から降りられるじゃない?」


「ふぎやあ!」


ミケランは怒って何処かへ行ってしまった。


「ねえ、ロウト、やっぱりミケランって賢いと思わない?危険を察知してたわ」


「危険って……わかってるじゃないですか!」


「ふふ、冗談のつもりで言ったのよ」


「アイシャ様に笑顔が戻って良かったです」


「………うん、ありがとう、心配かけてごめんね」


ロウトとメリッサがとても心配していたことはもちろんわかっていた。


わたし自身もどうして王子があんなにわたしに会うたびに意地悪なことを言うのかよく分からない。


ターナはこの一年わたしに対しての態度が変わったと思う。

もともと我儘で自分の思い通りにならないと機嫌が悪くなるところはあったけど、あんなにわたしに対してあからさまな態度で接することはなかった。

わたしは、またあの家に帰ることを考えると憂鬱になり溜息が出た。

しばらくはお祖父様がこちらに居ていいと言ってくれたから、とりあえずゆっくりと過ごそう。


面倒なことは今は考えたくない。


でも………お父様とお母様はわたしが居なくなっても何にも思わないのね。


わたしは胸がチクっと痛んだが、もともと二人とも忙しくてあまり会えないので、諦めていた。


「お祖父様に夢の話をしたら何か一緒に考えてくれるかしら?」


一人部屋に戻りお昼までゆっくり過ごすことにした。


まだ昨日退院したばかりなのに魔力を使いすぎたので疲れた、身体がだるい。

ロウトに伝えたらぜったい怒られるので、バレないようにしばらく部屋にいることにしよう。


「アイシャ様、お荷物をこちらにお待ちしています。何か他に必要なものがありましたら言ってくださいね」


「メリッサ、ありがとう。今の所必要なものは特にないわ。……ねえ、お父様達は何も言ってなかったかしら?」


「今朝はお会いしていないので分かりませんが、侍女長から

『アイシャ様に必要なものがあればすぐに用意をします、ごゆっくりお過ごしください』

と伝言を言付かりました」


「そっかあ、お父様達はお仕事が忙しいもの……仕方がないわよね。黙ってお祖父様のところに来て怒っていないのならいいの」


お父様達がわたしのことを気にしていないみたいでちょっと寂しかったけど、メリッサの前では心配かけたくないので無理して微笑んだ。


するとメリッサがわたしの両手を握りしめて、


「そんな顔をしないで下さい。

旦那様達にお会いできていないだけです、アイシャ様のことを心配しているに決まっています」


と言いながら、メリッサの方が目に涙を滲ませていた。

「メリッサ、ありがとう、わたしの代わりに泣いてくれるのね」


メリッサの気持ちが嬉しくて、でもこれ以上心配かけたくないので、わたしはもう両親のことを尋ねるのはやめておこうと思った。


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