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12話

朝起きるとメリッサが着替えの服を出してくれた。


「メリッサありがとう。自分で着替えるのであとは大丈夫よ」


わたしがベッドから起きあがろうとすると、ミケランが「ミャーッ」と鳴きながらわたしの体に擦り寄ってゴロゴロと甘えて来た。


「ちょっと着替えるから待っててね」


「ミャー」

ミケランの可愛い返事にわたしは笑顔になり、急いで着替えると、部屋のベランダから出られる庭にミケランを連れて出た。


「ミケラン、少しお散歩しておいで。おトイレに行きたいでしょう?」

ミケランはとても賢い。


たまにしか来ないお祖父様の屋敷でも自分でトイレに行ってわたしのいる部屋にちゃんと戻って来てくれる。


わたしはお祖父様の所のお庭が大好きだ。


お花が綺麗なのはもちろんだけど、ここには薔薇園がある。


中に入ると薔薇のアーチがずっと続いていてとても素敵だ。

まるで絵本の中に入ったみたいでワクワクしてしまう。


アーチの先には白い可愛いベンチとテーブルがあって、そこでお茶をするとお姫様になった気分になる。


わたしは少しの間ベンチに座って朝の美味しい空気をいっぱい吸い込んでいた。


最近は入院したりターナや王子に意地悪なことを言われたりして、結構落ち込んでいたけどここに居るともうどうでもよくなってきた。


お父様もお母様も大好きなのにどうして三人の中に入れないのか自分でもよく分からない。


ターナに対しては妹だし意地悪だけどやっぱりターナがもし泣いたり病気をしたら心配だし嫌いにはなれない。

でも今は三人に会いたくない気分。


たぶん……やっぱり誕生日も何もしてもらえなかったし入院中もお父様は会いにきてくれなかったし、お母様もお仕事が忙しそうでなかなか会えなかった。

ターナはもちろんお見舞いになんか来てくれるわけもなく、やっぱり拗ねてしまっているの……かも。


お父様は今お仕事が大変だとお母様が言ってたし、我儘は言ってはダメなのもわかってる。

でもほんのちょっとでいいから来て欲しかった。


それもやっぱり我儘なのかな……





「………アイシャ様………シャ様」


「え?」


振り向くとメリッサがわたしに声をかけていた。


「ごめんなさい。考え事をしていたみたい。

ミケラン!ミケラン!部屋に帰るわよ!」


わたしが大きな声を出すと


「フミャァ」

と、ミケランが面倒くさそうに返事をして鳴いた。


私の足下に来て、顔をスリスリさせながら、「ミャア」と鳴いて今度は抱っこを強請ってきた。


「ミケラン、おいで」

わたしが手を出すとミケランはサッと自分からわたしにジャンプして抱っこされた。


「アイシャ様、カイザ様がお待ちになっております」


「はあいメリッサ、ミケランのごはんお願いしてもいいかしら?」


「もう用意しております」


「ありがとう、じゃあお祖父様のところへ行ってくるわ」


わたしは急いでお祖父様が待つ食堂へと急いだ。


部屋に入るとお祖父様が食事を摂らずに待っていてくれた。

「お待たせして申し訳ありません」


「アイシャ、顔色が良くなったな。ゆっくり眠れたか?」


「はい、おかげさまで」


(あっ……そう言えば今日はスッキリと久しぶりに目が覚めたわ……いつもの悪夢がなかった……)


「体調が落ち着いたらここから学園に通うといい」


「ありがとうございます」


わたしはお祖父様と友達の話をしたりミケランの可愛さについて語ったりしながら朝食を食べた。


「アイシャが早く魔法の制御をしたいなら、いつもの練習ではなくて反対のやり方でやってみようと思っているんだ」


「反対?」


「魔力を普通に出して制御するのではなくて、最初から少しだけ魔力を出して使うんだ」


「少しだけ?そんな少しでどんな魔法が出来るのかしら?」


「そうだな、最初はランプに火をつけるとか庭の花壇に水をあげるとか、ミケランが飲む水を皿に入れるとか。あ!でも火に関してはわたしがいる時以外厳禁だ!火事になったら困るからな」


「……わかりました。火の魔法は一人では使いません。とにかく少しだけ魔力を出す練習ですね。

なんだか楽しそう!いつも全力で出してそれを抑えて制御してたから、少しずつの感覚を覚えるのが大変だけどやる気が出てきました」


「アイシャ、わたしはお前のその楽しそうに魔法に対して努力する姿が大好きだよ、わたしも時間がある時は一緒に教える。普段はロウトにそばに居てもらいなさい。ロウトは普段は騎士だが魔法も得意だからお前の助けになるだろう」


「え?ロウトって魔力があったの?」


「知らなかったのか……アレはお前の前では出し惜しみしてたんだな」


そうか……じゃあ、後で早速ロウトと練習してみよう。








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