地の花の咲く場所で
コメディとグロテスクの融合を描いてみようと思いました。
グロテスクな話で盛り上がれる人じゃないと、みちゃいけません。
高校3年生の7月。ちょうど新穂宝が死んで一年だ
デスノートによると、また安部が性懲りもなく楓さんにコクったらしい。そして0.03秒で削除。
別に彼女の性格がきついわけじゃない。削除、削除、削除、削除、誰でも分け隔てなく削除する。
そんな彼女がモテないわけがない。彼女を敵に回すことは、この学校の男子生徒の約半数の命を守ることに直結する。
ん? 俺? 無論、その半数以外の中の一人だ。
さて、彼女、楓紅葉と俺の関係を整理しておこう。
ま ず俺、神様の幼馴染。違う幼稚園、違う小学校、そしてようやく同じ中学校。つまり現在。ん? 幼馴染とは言わないって? いいんだよ、俺の妄想ではそうな んだから。で、同じ中学校で同じ寮生で同じ部屋。つまり・・・。勿論俺と楓さんの間を邪魔するものはいない。唯一の悩みは、隣の花岡が毎晩誰かを血祭りに 上げるので楓さんと会話がしづらい、というかお互い笑う。と言うわけで、アルカイダのバリバリ過激派である俺は戦地で殺し、帰って帰宅部である楓さんの手 料理を食べ、適当に銀行を襲って寝る生活を続けている。
今 日もそろそろ就寝時間だ。銃器一式を広げ、楓さんは丁寧にそれをメンテし、俺は豪快に掛け布団の上に倒れこみ、楓さんが銃身を折りたたんでで電灯を消し た。さよなら。ちなみにこの銃は弾倉とスコープの設置が一体化しているという優れものだが、なくすとかなり不便になってしまう。
「そういえば、今度あなたのクラスに転入生が来るんですってね。それに傷跡が・・・。」
いえいえ。楓さん以外の標的なんて興味ないです。
「ねぇ、ツバキ君」
何だこら!
「私、文芸部に入ろうと思ってるの」
俺は楓さんに見えないよう、首をきるポーズをとった。
「これからもっとお世話になるわね」
さっさと死ね。
そう思いながら、俺は誰かに・・・殴ら・・・。
朝。誘拐中
あー、そういえば今日転入生が来るんだっけなーとか思いつつ、俺は車の中で目隠しをされていた。
基本俺は寝坊してしまうので、楓さんは朝ごはんを作って先に学校に行ってしまう。ごはん、何あれ?
と、門の前で男子たちがマシンガンを構えていた。1人だけじゃない。結構多い。
何してんだ?
1人に聞くと、こう答えた。
「ただの見張りだ」
自らフラグを立ててどうする。
俺は逃げるかそれともしぬか。俺は前者に決め、ポケットの中の拳銃のトリガーセーフティをはずして握った
そして見張りの顔面を削除して、俺は逃げて学校に入る。学校掲示板に新しく出来たアルカイダ勧誘のポスターが貼ってあった。今度楓さんと行こうかなとか考えていると、後ろで歓声が上がった。
後ろを向くと、男子が集団で走り、女の子にナイフを向けているそのままぶつかったら、間違いなく心臓を貫く。
と、1人が石か何かにつまずいて転んだ。それに引っかかり、その他の男子もばっさばっさと倒れ赤い液体が・・・。。馬鹿だなお前ら。
少女はそんな男子の遺体には目もくれず、ズカズカと歩いてき……俺の目の前で止まった。
「あなた、超むかつく」
はぁ?
「あなた、銀椿君ね。私は青葉葵。よろしく」
おいおい。てめえ何様だ?
「じゃあ、教室まで案内して」
了解しました姫君。……つーか、何調子にのってるの?しばくよ!?
「……私は、あなたの全てを知っている」
アブナイっていうよか、きもいな。
ま、俺も鬼じゃない。教室の位置も分からない転入生を拷問して死ぬ直前までいたぶり続ける気なんか毛頭ないね。じゃぁ、案内しますか。
俺はきもい少女を後ろに引き連れ、校内を堂々と歩いて行った。
「青葉葵と言います。なじめるかどうか不安ですが、もう友達が1人出来たのですぐ神になれそうです」
「友達とは?」
彼女は真っ直ぐ俺を指差した。
「銀椿君です」
クラスの男子全体が携帯している軍用ナイフの刃先が俺を向く
小柄で華奢な体なのに、彼女の視線は鋭かった。漆黒の黒い髪の中にはこれまた軍用ナイフが・・・。。
「じゃ、じゃあ皆死んでね☆」
はーいと、特に男子が大きな声で答えた。
さくっ・・・。
「銀・・・テメェ・・いつの間に・・・こいつを・・・ここ・・に・・・・・・。」
いまにも死にそう男子たちに、俺はさらに大きな声で叫び返す。負け犬が。 次の授業はすーがくなんだよ! さっさとしにやがれえ!!メロンパンを口にくわえたまま俺は教科書を相手に投げつけた。顔面削除。我ながらナイスボールだ。
と、そこでゆっくり青葉が近づいてきた。
「あの、ツバキ君……」
なぜさっさとしなないの? 余計ににらまれる羽目になった。
「今日って教科書どこからやるの?」
てめえに教える価値なんてねえよ。
「ありがとう」
なに勝手に妄想してるんだ。楓の笑顔の方が5千、いや1億分の一可愛い。しかしすごく興奮してた。
「そういえば、あなた文芸部なんだっけ」
? Pardon?
「……私も、そう」
「何ィィィィ!!?」
周りの男子はもう息耐えたようだ。
「……これから、もっとよろしく」
ひとつ教えてやろう。お前の寿命はあと21日だ
図書室にて。
「えー、と言うわけで。今日から楓さんと青葉さんが新たに文芸部員として仲間入りです」
「イエーイ! パフパフパフー」
真島、という文芸部というかこの学校きってのエロマインドを誇る変態が無駄に盛り上げるため一人の少年を血祭りに上げた。部長は迷惑そうな表情だ。
「ありがとうございます」
「……」
楓さんは礼を返し、青葉は立ったまま銃の手入れをしている。全く、礼がなっとらん。礼が。人がお祝いとして銃を進呈しようとしたのにすでに持っているとはどういう了見だ。ん? 俺? 無論、my愛用銃 グロック17をお手入れしていた。
「じゃぁ、入部祝いで今度西日本銀行にでも乗り込む? もしくは、アルカイダの基地もありだよ」
「……いや、どこにも行かなくていい」
青葉はそう言った。
「そうですか。では私も結構です」
楓さんまで……楓さんに気を遣わせるとは、青葉め、どこまですげえんだ。
「でしたら、今度5人で食事でも」
「……それなら大丈夫です」
「OKです」
「俺、おごりますよ」
「きゅっきゅっ」
ずっと手入れしている俺に苛立ったのか、真島がトリガーセーフティをはずしたその時。
ひゅっ
「プシュー」
青葉が、真島のの頚動脈をナイフで引き裂いた。
「お前・・・、何しやがんだ・・。」
「やられる前にやる。当然のことよ。」
「ン・・・だとォ・・。ゴホッ・・・。」
という言葉を最後に真島は息絶えた。
他の文芸部員も不思議そうな顔をしている。
「いつの間に仲良くなったの?」
楓さんの言葉に俺が反論しようとしたその時。
「……そう。だって私たち付き合ってるから」
図書室が、薄気味の悪い、ジメジメした、そしていまにも俺が殺しそうな雰囲気に覆われた。
「へー……」
「そうだったんだ……」
「意外だなー……」
部長含む2人が、2人とも俺に銃を突きつけてそう言った。真島は首から血があふれているし、部長は口元がヒクヒクしてるし、何より楓さんは今にも笑い出しそうな表情だった。俺は今すぐこの場で首を吊りたくなった。
「ちょ、ちょっとまて、青葉。何でそういうことに」
「青葉、じゃなくて、葵でいい」
俺が猛反論しようとした時、周りからパンパンと銃声があった。興奮して周りの人間を片っ端から血祭りにあげているようだ。やめろ、やめてくれ!
帰りがけ、通学路。人通りの多い大通り。隣には崩壊寸前のテロ組織がある。
「どういうつもりだ?」
「どうこうもない。私たちが付き合わなかったら大変なことになる」
俺は呆れた。
「つまりあれですか。この銃は世界一でこれがないとこれから生きてけないっていうのと同じ発想か。ふざけ―」
俺は自転車に轢かれそうになった。突飛な表現で申し訳ない。これが筆者の表現力の限界だ。なぜなら、本当に突然だったから。リーゼントの男が乗った自転車が、俺に突っ込んできた。そして止まる。相手が振り向いた刹那、俺は相手の頚動脈をナイフで引き裂いた。
「てめえ、・・・何者だ。」
俺はむっとする。見る見る血の海が出来上がる。
「何だその目。ウゼエ」
俺はさらに相手の口の中に我が愛銃グロック17を押しこんだ。パン。バイバイ。
と、その時。
「ごみは後始末しないとね☆」
何? と、俺が青葉を見たとき。
ガラガッシャーン!!
男の死体の上空から、鉄骨が降って来た。
「なっ!?」
男 の死体は真下にいた。避けなければ直撃は確実。しかし、金縛りにでもあったかのように動かない。俺の体は反射的に反応していた。男を突き飛ばし、自分も鉄 骨の範囲から脱出する。ごみ始末は俺の仕事だ。あいつは車から子供を護ったんだけど。しかし、脱出し損ねた。やっぱ俺も死ぬか。
俺 の右足を鉄骨が捕らえかけた。頭の上からはもっと大きな鉄骨が降り注ぐ。その時、目の前に手が現れた。無我夢中でその手をつかむ。一気に引きずり出され た。そのままスライディングの格好を取り、左足でブレーキをかける。後ろから凄まじい轟音が聞こえた。周りに野次馬が集まってくる。俺は死体の下に手榴弾 を滑り込ませた。青葉は、俺の手をつかむと「行こう」とささやき、人ごみにまぎれた。その瞬間、後ろで爆音がした。野次馬が死体を確認しようと死体を持ち 上げ、手榴弾の安全ピンが外れたのだ。100人は死んだか。
「あなたの行動が理解できない。なぜあの男を始末したの?」
俺たちは路地裏に逃げ込んでいた。時折、黒猫がこちらをそっとのぞいてくる。
死体をみると、どうしても自分で周りも跡形なく消すのが俺の性分。我ながらクサい台詞だ。しかし、彼女はまだ疑問を浮かべている。まぁ、みんな死んでよかったじゃん。
青葉は俺の腹部を指差した。
「あなた、そこに穴あけられたい?」
あ、まぁ……俺はあわてて青葉に背を向ける。
でも、ありがとな。さっさと死ね☆
土壇場で見えた手は、青葉のものだった。
命の恩人が、まさか予知能力者+おなじアルカイダだとはねぇ。俺は笑いながら言った。
「あなた、信じてないでしょ?」
もちのロンだ。そう言うと、青葉は俺の背に一度は持ってみたい憧れのトカレフをつきつけた。
じっと人々の様子を見ていた青葉は、突然口を開いた。
「あそこ。マンションの上から下を覗き込んでいる人は5秒後に削除される」
まさか。
落ちた。頭からどさりと落ちた。赤黒い液体で小さな水溜りが形成されていく。
「……で、野次馬が吹っ飛ぶ」
俺の凍りついた表情を見て、青葉はそう付け加えた。その通りになった。ガス爆発のようだ。
「他にも、見える。例えば……」
彼女の予言はすべて当たった。(合計300人ぐらいが死亡)
ほん、とうに……
俺の体全体から変な汗が噴き出す。まさか、こいつあのデ○ノートを所持・・・してる・・・のか・・?
「あの、私、あなたを殺そうとしたでしょ」
青葉は、少し、照れくさそうに言った。
だから、何だ。え、それでなにか、精神病院紹介してあげようか?
「その、これから、私のこと、葵って呼んでくれない?」
その体、というかお前が世界にいた痕跡すら消えるまで吹っ飛ばしてあげようか?。そう指摘すると、さらに赤くなった。
分かったよ。どうせあと20日の命だ。
「ありがとう」
そういって向けられた笑顔は、学校で見た薄っぺらいものじゃなかった。悪徳商法のCMにでてくる怪しいおじさんのあやしい笑顔そのものだった。
不覚。俺としたことが。この笑顔にトキメイちまった。
朝、起きると見慣れない部屋だった。誰の部屋だ? と、寝返りを打つと、そこには青葉……じゃなくて、おっさんがいた。こちらに銃口を向けニタリと笑っている。
……マジ、かよ。
おっ さんは削除した(いろんな意味で)。でも髪はすでに削除済だった。銃で人を殺しまくっても(記憶がたしかなら駆けつけた警官含め37人)、なぜか違和感が ない。というか、周りの生徒の「アレ? あいつの射撃ってあんなにうまかったの?」みたいな視線が痛い。楓さんと会った。俺にしては結構早いほうだと思っ ていると、俺の隣にいるタラちゃんを確認し、俺にそっと尋ねてきた。
「ちび?」
はい?
「さざえさんのサインは?」
ええ、まぁ……
次の瞬間、グリップで痛い一撃。せめてナイフの柄がいい。
「大丈夫?」
ちっ。誰のせいだと思ってやがる。しかし、本気で俺を狙ってる銃口もかわいい。俺は一晩でトカレフへの憧れは消えていた。俺は、青葉葵に本気で命を狙われていた。
俺が楓さんからきつい一撃を食らった日は、実は1学期の終了日だった。
葵に支えられ、教室に入る。瞬間、だれもいないことに気づく。全員殺したことに気づいた俺はこの場でもっと殺りたい。
「もうすぐ夏休みだね。銀君は青葉さんとどこか出かけるの?」
「福岡銀行とか行ったら? 青葉さんと一緒に」
「サザエさんの家に泊まったら?」
もう泊まったぞ。とは言えない。言ったら、0.03秒で削除されるに決まってる。
「そういや、この間新しく武器の店ができたらしいね。そこ行ったら? 青葉さんと」
……語尾、しつこい。
「だってそうじゃん。もうすぐミッション始まるんでしょ?」
「うん」
葵が勝手に返事した。そのまま俺の愛銃を取り上げる。俺を狙ってる。俺はこの場で核を打ちたい。
と、そこに楓さんが来た。ヤバイ。きもいオーラが出てる。楓さんは真っ直ぐ俺のところに来た。葵は銃のメンテセットに隠れて表情がよめない。
「椿君……」
気安くしゃべりかけんな
「最低」
またか。銃を向けなおしたときにはときすでに遅し。もう楓さんのナイフの柄が俺の腹を捕らえていた。吹き飛ぶ俺。あぁ、せめて平手打ちで勘弁してください。
俺は保健室に直行した。頬に冷たいシップを貼られる。保健の先生がきもくて削除した。葵はそんな俺の顔を下から見上げている。
「大丈夫?」
大丈夫なもんか。大体お前のせいでこんなことになったんだぞ。何で俺とお前が付き合ってることになってるんだ(早く殺したいけどね☆)。
「昨日、私の能力を見たでしょう?」
うん。NASAにいってら。
「全ては運命。決して捻じまげてはいけません」
……精神病院行き決定。
「それとツバキ君。文芸部部長さんが私とあなたのアルカイダの物語を夏休みに発表するって」
おいおい。一応非公開組織だぜ?
「じゃ、今度福岡銀行行こっか」
待ちな。三菱東京UFJのほうがいい。
「私、お金好きだから。特に福沢諭吉。」
お金はアルカイダに行けよ。つーか葵、俺お前の我がままにいちいち付き合わなくちゃいけないの?
「勿論。それがアルカイダ同士というもの」
ま ず俺とお前アルカイダ同士じゃないし(っていわないとアルカイダの幹部昇進の夢が・・・。)。そう言ったら葵は泣きそうな顔をした。結局、俺はトカレフに 弱いのか。仕方なくOKする。葵はこの間見せてくれたあの笑顔をした。命名:対like a 野口英世向けキラースマイル。その笑顔を見れるだけでも俺は幹部になってお前を削除する。
そのときだった
何者かが僕の後頭部に硬いものを突きつけた。
「さて、やっとみつけた」
「その声は・・・新穂?」
「君に殺されかけてからは本当に君の事しか頭になかったよ。さあそろそろ君も出発の時間だ」
ああ・・やっとか。これまで何人殺してきたのだろう。
でもこれで僕にも償いができる
もしかしたら僕は今日のこのときのために生きてきたのかもしれない・・・。でもやっぱり死にたくない
「お願いだ助けてくれ!」
しかし、時既に遅し。乾いた音が虚空を引き裂いた。
「・・・パン・・・。」
(これまでの死亡者 947人)
(青葉葵 余命19日)
これは俺、新穂宝が高校2年生の7月、つまりちょうど一年前の話だ。
俺はその日、近所の有名ラーメン店「ろくの家」に銀椿と一緒に行っていた。その日は俺がおごるといっていたので調子に乗って椿は
「替え玉、硬めで一個」×11回という悲惨な結末となり、俺は給料をすっからかんにされた
店を出たあと思わず
「ふざけんな」と言うと
もう、いい。死ね
という言葉を最後に俺の世界はフラッシュバック。
気付いたら病院で寝てた。
そしてバイトを探していたらなんと、防衛省情報局、通称DAISなるところの保安要員にならないかとおっさんにふっかけられた。
特別あてもなく、給料もよかったので二つ返事で承諾した。
するとそこは殺しの毎日。しかし、その中で銀椿という男がアルカイダの下の中でも大躍進をしているという話を聞いた。
これは運命なのか?そう思い、アルカイダ殲滅作戦に入って銀椿を殺して現在に至った。
そして考えた。書類の中ではアルカイダの人間がもう一人いると聞いたな。その瞬間、まるで頭の中のジグソーパズルのピースがはまったようにDAISに連絡した。
「照会たのむ。EEX#ZRチャーリー26GES977。状況はE」
「Eですね。了解しました。当直につなぎます」
「工作用マスクを頼む。写真は転送する。」
「わかった。今日中に届けさせる」
ということで俺は今日から銀椿としての生活を歩み始めた。
1ヶ月ぐらいたって、全員抹殺可能な日が取れた。ミッション中だけど。今日は文芸部総勢で食事だ。ファミレスなどの外食は楓紅葉や青葉葵に失礼ということでご飯を5人で作ろうということになった。
「で、何で俺の家?」
スーパーの袋を両手に抱え、俺は呟く。他の4人もそれぞれ消音器を手に食い込ませている。
「……私、AKー47が大好き」
「だから何で俺の家に」
「勝手に葵さんに手を出したんだ。銀、落とし前付けさせな!」
「さりげなく葵って呼ぶな。だから何で俺の」
「部長として由々しき事態です。一体どうしたものか」
「だから何で」
「……………………………………」
この葵とかいうのがアルカイダのもう一人の目標か。俺に止めを刺したのは楓紅葉の沈黙。俺は折れた。分かりましたよ。俺は自宅のインターホンを押す。かね出せと、暴力団がさけぶ。ちょっと待っててと俺は言い、二人の人間をこの世から削除した。すると母が帰ってきた
「あら、久々に帰ってきたと思ったら、いい銃器ばっかり買ってきて。いい就職先でも見つけた?」
アンタそれでも俺の義母か。殺されかけていることすら察せないのか。
「ほら、『お母さん』もそう言っている」
青葉がわざとらしく『お母さん』といった事で、各文芸部員たちは臨戦体制(銃口をこちらに向けた)に突入した。ヤバイ。迂闊な行為は死を招く。俺がそう思ったとき、青葉葵は禁句を口にした。
「私、今日は泊まっていきます」
………………………………………………………………………………やったーーーーーー。いきなり殺しのチャンス。
俺は自分が三点リーダ生産機にでもなってしまったのかと思った。俺の半径300m圏内に俺の味方はいない。文芸部員(もしくはアルカイダの工作員)が俺をこの世から削除する準備でもしているんだろうか?
あー、そういや今日殺しのマニュアルに関する映画があったなー。どうする? 5人で見る?
「2人がいい」
青葉はMY愛銃。グロック17を離さない。撃とうか?
「へー。じゃ、僕らはお邪魔だね」
「確かに」
「それじゃ、私帰りましょうか?」
「あ。お母さん深夜殺しの依頼があるの忘れてた」
やめろ……やめてくれ!! 俺の叫びに、冷たい鉄の塊が答え、母は仰向けに倒れた。まさかこの青葉葵とか言うのが・・・?
ぐつぐつと牛肉が煮込まれている。俺の部屋では5人の男女が虎視眈々と鍋の中身(主に人肉)を狙っていた。テレビではアメリカとどっかの国が戦争を始めアルカイダが活躍しているとか言っているが、それどころではない。
「あっ」
青葉の言葉に俺は反応し、顔を上げた。何かあったのかと思ったのだ。しかし、その行動は大きなミスだった。合計4膳の箸が鍋に突っ込まれ、肉をかっさらっていく。その水ならぬ煮汁しぶきが俺の顔を直撃。あつっ。
「もう弾がない。買ってきて」
「ふざけるな」
青葉の提案を俺は全力で拒絶する。
「弾のない銃なんてルーのないカレーと同じ」
「いや、もうそれカレーじゃないし」
俺がそう言っている間に他のメンバーは牛肉をとき卵につけて食べながら、警戒してるのか、片方の手で合計4丁の拳銃が部屋を漂っていた。
「ジャーンケーン」
青葉の突然の行動に俺は反射的に手を出した。俺はパー、葵はチョキ。
「あなたがパーを出すことは分かっていた。私には全て見える」
ちっ。反則だろ、それ。
「そういうことで、ゴー」
俺はため息をつく。ここで行かなかったら文芸部員から公開処刑(手榴弾での削除)されるだろう。そして楓紅葉の中で俺への評価も大暴落だ。すると作戦の続行が困難になる。前者はともかく、後者だけはなんとしても避けなければならない。というわけで俺は武器店「ALL GUN SHOP」への道を走るのだった。
オマケ:とある少女の考察記録
彼を見て、お告げで見えた男性だと一目で分かった。今は嫌がっているが、はやく消えてほしい。
私と彼が付き合ってると宣言するのは2度目。彼を他の女に取られ削除されないようにするには最も効率のいい方法。そうお告げであった。
でも、何だろう、この感じ。純粋に、殺りたい☆。他の人たちが、私たち以外のみんな。けど、あなたは嬉しくなさそう。
信じられない。その男はあなたに暴力を振るったのに。なぜか、と聞くとこう言ってくれた。
「失われかけた命をみると、どうしても自分で周りも跡形なく消すのが俺の性分。」
その言葉は私の心の中に大事にしまわれた。あなたを殺したい。こんな感情、初めて。でも、私は感情を露にすることはできない。感情は拘束されてる。アルカイダの手で。そうだ。日記をつけよう。私の気持ちを記録しよう。私が削除された後に、あなたが日記(みんなはデス○ートっていうけど)を見つけてくれますように。
「…………」
えっと、これってすき焼きパーティー(殺し合い)だったんだよな、一応。俺はもう人肉の『じ』の字もない鍋に買ってきたネギをぶち込む。ネギが暖まる間に、残っていたご飯にとき卵をかけ、熱々のネギをのせる。これで即席ネギ卵丼の完成だ。
そして俺は俺部長、床で臭い寝息を立てる楓紅葉を見た。全員爆睡中だ.殺れるかも。しかし、青葉葵の姿が見当たらない。逃げられたか?ベッドの下、タンスの後ろ、天井。部屋の中はくまなく探したが、女の姿は出てこない。どこ行った?
と、俺はそのとき信じられないものを見た。安っぽい即席玉子ネギ丼の上に、ちょこんと、まるで冥府からの使者のように、スーパーの特売であった牛肉が熱々の状態で乗っていた。誰かが俺のために取っておいて、俺のご飯の上に置いてくれたらしい。文芸部のメンバーは眠りこけているし、母さんは近くの雑居ビルで狙撃している。となると答えはひとつ。
(……青葉葵か)
毒入りか?
俺は辺りを見回した。もちろん彼女の姿はない。あるはずもない。出会って1ヶ月ぐらいしかたっていない俺が言うのも何だが、青葉葵はそういう奴なのだ。皆の前にその闇は出てこない。そしてやさしいふりをして、罠に引っかかった人間の命を貪り食う。青葉葵とは、そんな奴なのだ。よってゴミ箱行き決定。
俺は夜の公園に出ていた。無論、青葉を探すために。橙色の街灯が公園を照らす。なぜか、人の血の色にも見えた。
「……何、してるの?」
俺はその時、後ろから聞こえた葵の声にサッと銃を構える。なぜか? 知るか。しかし、それと同時に変な違和感も覚えた。いつもと違う。さっきまでいた青葉葵とは何か違う……なぜか? 知るか。
「全く、どこにいたんだよ。あお・・・。」
違った。誰だ?
「お前が、銀椿か」
きもくて、きもくて、きもくて、きもくて、きもくて、きもい声。
青葉、青葉は? 俺は辺りを見回したが、残念ながら少女の姿は目に飛び込んではこなかった。かわりに、スーツを着た男の姿が見える。
「あぁ、さっきの声か。あれは俺が出したんだよ。君に恨みはないけど、主からの命令だ。悪いけど削除させてもらうよ☆」
冗談じゃない。37行前ではまだすき焼きパーティーをしていたんだぞ。しかしこの男、口調は飄々としているが何も言い返させない凄まじいキモサがあった。
「なんで?」
俺は気楽にいう。しかしキモさでうまく発音できない。
「俺は堕天使。君たちの世界での呼び名だけどね」
な……! 予知能力者の次は堕天使、俺の周りには障害者がごろごろしている
「まぁ、君がこれから削除される理由ぐらい、教えてあげてもいいかな」
男……ではなく、天使でもなく、精神障害者は銃を構えている俺に近寄ってくると、目線を合わせてこう言い放った。
「簡単に言うと、自業自得なんだよね」
何……? 男、ではなく天使はこう言う。
「実は君も気付いてないんだけどさ、」
俺は何も口を挟めない。この天使、口調は飄々としているが何も反論させないキモさが全身から溢れ出ていた。
「青葉葵って、君が殺したでしょ」
は……? まだ殺してねえぞ。俺は笑って言い返そうとした。天使の言葉を覆そうとした。だって、さっきまで、俺は青葉葵と触れ合っていたんだから。
「神は、5年に1人、人を超えし人を創り出す。ちょうど3年ぐらい前、青葉葵は神に選ばれた」
俺は心臓がこの男に握りつぶされたのかと思った。呼吸が止まる。選ばれたから、何だよ?お前も削除するよ?
「神は……まず、青葉葵の存在を滅した」
青葉葵の存在を滅した。その言葉は俺の心に突き刺さり、心を深くえぐりとった。(きみの心も臓もえぐりりとろうか?)男はなおも続ける。
「青葉葵……葵は、元々明るくて活発な少女だった。神殿に彼女が連れてこられたときは心臓が止まるかと思ったよ……そういえば、もう止まってたな」
男は自虐的に笑った。俺の頭に1つの推測が浮かぶ。アンタ、まさか……俺の標的を・・・。
「神は、葵の心に傷をつけ、肉体を消去した。そして新たに創った彼女のレプリカにその心を入れた。そして神としての力の一部を一緒に入れた。予知能力だ。俺はずっと眺めてたよ。そう。足掻こうともせず、叫ぼうともせず、ただ、眺めてるだけ……」
そう言うと天使は自分の唇を噛んだ。途中からまるで、楽しんでいるかのような口調だ。俺の推測は1つの確信に変わった。
「しかし、君と葵が出会ってから、神にも予測できないような現象が起こった。全て君のせいだ。彼女の中に宿る力が暴走しているんだ。予言は神でなく、彼女がしている。本来彼女はこの世を破壊するためだけに生まれてきた。なのに、予言が外れると、彼女から溢れ出した力が世界を勝手に改変している。テレビで見たろ? アメリカは独裁政治に変わり、ヨーロッパは核開発を始め、北朝鮮は麻生太郎を滅ぼし、アルカイダが世界を救った。全て彼女が世界に与えた罰なんだ! このままでは、彼女自身に危害が及ぶかもしれないんだぞ!」
俺の呼吸は途中で止まっていた。普通、物語の主人公ならここで『お前らはFAMASのことしか考えてない』と糾弾するところだが、今の俺にそんなことはできない。こいつは、本当にきもすぎる。俺の数万、いや、数億分の一、きもくて、うざい。どうしてそんなことが分かるのかって? 根拠は、ない。それだけでDAISの先生から怒られそうな意見だが、今の俺は確信としていた。
「お前、生きてたころアイツと殺しあったろ?」
堕天使は、それこそ死神のような笑顔でうなずいた。その全てを包み込むようなそのナイフは、まさしく、・・・斧だ。
「じゃ、名前は?」
堕天使はゆっくりと答えた。
「……焔龍」
そっか、と俺は小さく笑った。俺はこの男の名前を忘れない。(標的の名前は覚えないとね。)
「多分、なんだけど、お前と葵って殺しあってただろ?」
焔は黙って頷いた。
「お前、何で死んだんだ?」
我ながら奇妙奇天烈な質問だ。しかし焔は迷うことなく答えた。
「DAISの工作員に殺された。」
俺は自分でこいつを削除しミンチにしたかった。こいつは、目の前にいる男は、すべてを殺して先に逝き、堕天使となった。しかしこいつが見たのは、かつての敵。さらに自分のことを忘れている。俺だったらどうしたろうか。ひょっとしたら、あくまでひょっとしたらの話だが、世界中のひとを削除していたかもしれない。しかしこいつは、それでも、青葉葵を護り抜く。俺は、今まで何も葵にしてやれてないのに、平然と、当たり前のように少女の隣にいる自分が気持ち悪い。
堕天使は聞く。
「じゃあ聞くぞ。お前は、青葉葵を愛しているか?」
答えは、ノーだった。
そうか、と焔は言った。少し悲しげにも見えるその顔。そこに刻まれていたのは。
「じゃあ、さようならだ」
そういって天使は俺の首を締め上げる。嫉妬でも狂気でもない、本物の殺意がそこにはあった。
確かに、俺を殺せば世界が変革することもなくなるかもしれない。でも、俺はあいつを残して(殺さず)死ぬ気はさらさらない。
「てめえが死ね☆」
俺は必死の抵抗を試みる。いわゆる殺人拳。と、左足が堕天使のみぞおちに入った。天使は体をくの字に曲げて呼吸困難を起こす。今のうちだ。俺は転がるように脱出する。
「くっ……」
堕天使は俺に殴りかかる。俺は天使と距離をとろうとし……気付いた。堕天使の後ろに、突然現れた姿に。青葉葵の存在に。ゆっくりと手を地面と水平にあげ、握った我が愛銃を焔の体に向け、そして。
ニコリと笑った
銃声が響く。その音が虚空を引き裂く。
堕天使が倒れる。いつも思うが呆気なかった。
後ろに人が立っている。青葉だった。
俺は……堕天使の体が、冷たい地面に倒れ、その亡骸をDAISに処理してもらうことしかできない。そう、俺にはこれぐらいしかできない。いつだって、他人のサポート役。そんな俺でも、消したい存在がある。こいつと同じものを、俺は消したい。いや、消してみせる。この気持ちは、こいつも同じだったはずだ。なのに。なのに……
「、あ」
俺は痛烈に悟った。今ならこの世を削除できるかもしれない。
こいつは撃たれても死なない。それもそうだ。だって、こいつは堕天使なんだから。
けど、今、こいつは死ぬ。なぜか。それは……
青葉が、こいつが死ぬことを望んだから。こいつは青葉の言うことを遂行する。言ったことを訊くだから、こいつは死ぬ。もはや決定事項。
だから? 俺にどうしろって?
まぁ、俺にできたことは、焔の体を下に下ろして、拳銃を構えたままの青葉の頬に思いっきりナイフで刺すことだった。しかしあっさり払われる。かなり上位ランクか?しかし俺も死神の異名をもつ男だ。だって、青葉が後ろに吹き飛ぶほど思いっきり引っ叩いたんだからな。
俺は倒れたまま信じられないようにこちらを見上げてくる少女に対し、命令するように言った。
「逝け」
どこに(Where)? 冥府に。いつ(When)? 今すぐ。どうやって(How)? 逝け。なぜ(Why)? 俺の知ったことじゃない。とにかく逝け。
そう言うと彼女は俺の脅しに恐れをなしたのか、おとなしく焔のそばにちょこんと座った。
そして次の瞬間、とんでもない行動をとった。焔を手榴弾で削除した。洋梨だ、とつぶやいて・・・。俺はとっさに後ろを向いたが、鏡で見たら初日の出みたいに真っ赤だろう。(焔の返り血)
しばらくして、俺はチラッと青葉の方を見た。まだ笑っている。さすが精神障害者。再び後ろを向く俺。……とまぁ、そんな感じのことを数百回ぐらい繰り返すうちに夜が明けた。一体こいつ、いつまで笑ってるつもりだ? 見てるこっちがきもくなる。
と、腕時計で時刻を確認し、今日自分は一睡もせずに午前6時を迎えたのだと確認した俺は再び向き直る。笑うのはそんな長くするものじゃないぞ、と青葉に教えようとしたのだが、後ろを見て俺は凍りついた。
焔の体は消えていた。ついでにいえばオルフェノクのように灰化したわけでもない。ただ、純粋な意味で消えていた。(肉片がなくなっていた)
なるほど、このタイミングでプリンセステンコーの真似事か。一般人の理解力をなめるんじゃない。天使の死体がどうなるかなんて、『吹き飛ばされた』の一言で終わるだろう。葬式も告別式もすっ飛ばして。
「……で、」
俺は質問する。
「お前は、あいつが死ぬのを望んだのか?」
青葉は黙ってうなずく。その動作を眼球を通して俺の脳が理解するのに0.0000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000001秒はかかるかと思った。
「な、んで?」
俺の言葉は、あまりに貧弱で脆弱すぎ、青葉の元まで届かなかった。俺がもう一度絞りかすのような声を出す前に、青葉が口を開く。
「……彼は私のことを『葵』と呼んだ。つまり、彼と私は―――」
「あぁ、そうだよ。青葉。お前とあいつは敵同士だった」
言葉を途中で引き取り、俺は続ける。
「お前、自分が何したかわかってんのか? もっとぐちゃぐちゃのミンチにしろよ。お前は、」
「かつての大切な人を殺した。……けど、なぜあなたが泣くの? この場合、泣くのは普通私」
そう言われて、俺は自分の目から流れ出る熱い水(血)に気付いた。迂闊。流れが流れといえ女の子に男が赤い涙を見せてしまうとは……
「なんで、あいつを殺したんだ」
俺は震える声で訊ねた。全く情けない。でも、青葉は答えた。
「彼が、あなたを殺そうとしたから」
うわー、余計なおせっかい。俺はその後のことを詳しく覚えてない。気付いたら、起きた文芸部メンバーの照準を全て弾き飛ばして、力なくベッドの毛布に潜り込んでいた。しかし、いつもはすぐ襲ってくる睡魔が今日は旅行中らしい。全く眠れない。ただ、血を隠すように俯き、俺の前を通り過ぎる青葉の姿が浮かんでは消え、ただ、震える声で青葉の声がエンドレスで流れ続けるだけだった。
オマケ:とある少女の詳細な日記
8月7日
私はこの日を忘れない。彼が殺されそうになったから、私は助けた。拳銃(トカレフ TT-33)は、気付いたら持っていた。
私は、彼を殺そうとしてる奴を削除した。だって私が狙っているから。すると彼は、私を思いっきり刺そうとした。何で? どうして?お前みたいなくずが? 彼によると、私とこの男は敵だったらしい。彼は私に、その男の傍に行けと言った。私は従った。というより、体が勝手に動いた。その男は信じられないことを言った。「爆破して」私は笑った。でもその瞬間、私の中の『何か』が勝手に体を動かした。私は彼を爆破していた。爆破した瞬間、私の中に久々の快感が迸った。見慣れない制服を着た私が、目の前にいる男と並んで歩いてる。それは、すごくきもい時間だけど、もう二度と戻ってこない時間。
彼は、龍君が光になった後私になんで龍君を殺したのか聞いてきた。もちろん、あなたを殺したいから。あなたを殺ろうと、私は龍君を……どうして泣くの? なんであなたがきもがるの? でも、私もきもい。あなたがきもくなった後、つられるようにきもくなった。優しいきもさだった。私は言ってしまった。
「あなたをミンチにする」
そう、私はあなたを殺りたい。お告げなんて関係なく、あなたを殺したい。あなたは信じられないようなきもさで、言った。
「お前なんでこの世にいるの?」
あなたはそれしか言わなかった。ひょっとして、事態の急展開に思考が付いて行ってなかったのかもしれない。でも、私の存在価値で流そうとするのは酷すぎる。私はさらにきもくなった。さっきとは違い、残酷なきもさだった。私は彼に涙を見られないよう俯きながら、彼の前を通り過ぎた。彼は自体のきもさに気付いたのか、表情が凍りつく。
「もう、いい」
そう、もういい。私は、口が滑っただけ。気持ちを伝えたかっただけ。答えは要らない。彼は呆然とその場に立ち尽くしたままだった。
俺が起きた時、体中が一斉にギシギシと軋んだ。身体的な疲れか、精神的な疲れか。答えはどっちもだろう。まあミッションの後おなじみの疲れだ。あの後50人はなんとなくという理由で殺したもんな。
俺は夜の間に答えを用意していた。多分、俺の勘だが青葉は今日いなくなる。なぜかって? 今日は、青葉の誕生日だからだ。神様がどうたらこうたら言っていたが、知るか、そんなもん。青葉を無理やり連れて行こうとするんだったら、神様だろうと仏様だろうとマー君だろうと山田太郎だろうとぶん殴ってやるさ。最後に変なの入ったけど。
予想通り、その日青葉はそわそわとしていた。俺が席に着いた瞬間、席を立ち教室から出て行く。
(俺と同じ空間に居たくないのか)
絶望的な考えが頭をよぎる。(殺るチャンスが・・・。)しかし、諦めるわけには行かない。
放課後、俺は青葉を屋上に続く階段の踊り場に呼び出した。呼び出しというよりは連れ出しだが、ぶっちゃけ、この時点で俺はまさしく『特攻精神』に基づいた行動をとっていた。
「なぁ、少し話があるんだが」
青葉は答えない。どうやらまだ殺したいらしい。
「昨日のことだ」
そう言うと青葉は瞬時に天国への階段を降り始めた。
「! 青葉!」
俺は必死に呼び止めた。動きが早すぎて捕まえられなかったのだ。(さすがアルカイダの上位ランク)
彼女は階段の真ん中ぐらいで止まった。
「正直に言う」
俺は精一杯に叫んだ。
「俺はお前を絶対爆破する」
―――これからも狙うさ。
「沢山殺った」
―――これからも殺るさ。
「楽しい生活が続いた」
―――これからも続ける。
「友情を憎しみに変えて、日常が急激に変化するのを俺は恐れたんだ」
―――つまり、逃げたんだ。真正面から突撃しなかったんだ。
「俺はもう逃げない」
―――お前は精一杯殺ってきた。なら、俺もぶつける。
「今ならはっきり言える」
―――俺は、
「お前を――――――」
次の瞬間、風のように動いた青葉のナイフが俺の頚動脈に引き寄せる。
「!?」
俺は驚愕の色を隠せない。急にこんなことをされたのもあるが、目前に近づいた青葉の目に、血液が溜まっていたのが一番でかい。
青葉は顔を離す。鏡? もう1年間ぐらいみたくない。だって今の俺なら、ゆで人間のようになってるだろうから。
「死んでください」
その言葉が俺の耳に聞こえるまで0.0000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000002秒かかるかと思った。
「私はあなたと一緒に死ねない」
俺は瞬時にナイフを払いのけながら呆然と青葉を見た。分かってた。分かってたのに。
「堕天使を殺した、から?」
それが、俺がベッドの中で考えに考え出した結論だった。青葉は頷く。そっか。
「あと、1分30秒」
あと1分30秒で青葉葵はこの世から消える。(今日がデス○ートの寿命だった)俺はもうその時間で一生分の勇気を使ったね。なにせ、冷徹な表情で血をボロボロ流す青葉の頭をその場で思いっきり打ち抜いたから。
青葉の心臓の最後の鼓動が直に伝わってくる。全く、こんな時にどうしちまったんだろう? 血が一滴も出ない。前に居る女の子は号血してるのに。と、俺の警戒心が警告ブザーを鳴らしだした。見ると、青葉の足に炎が寄生していってる。しかし青葉の位置は動かない。まるで浮かんでるみたいだ。
「消えろ、跡形もなく」
握力38kgの掌が手榴弾をつかむ。けど、そしてピンと音がして安全ピンが外れる。感触も同時に消えていく。カランと音がして地面に落ちる。
ついに、あと四秒。血でべっとりの青葉を見て、俺は急激な喜びがあふれる。
「じゃ、さよなら☆」
言葉は途中で途切れた。俺は非難した。俺は意を決して青葉を見た。ちょうど、あと0.001秒。
俺は閃光と共に地面と肉が抉り取られるのを見ながら・・・。
笑った。
とにかく笑った。我ながら不謹慎だ。何に笑ったのか。
今とさっきのギャップに。
さっきまで話していた人は、ミンチになった。そいつはもう居ない。ついに殺った
と、その頭痛に何か別のものが加わった。頭の中に何かが勝手に入ってくる。
「だ、大丈夫か!?」
誰の声だ? 部長だ。と、部長が突然倒れた。こけたのかと思ったら、違う。突然、呼吸が止まった。俺も同様に、その場に倒れた。想像を絶する苦痛にPardonの一言しか言えない。
いやだ。俺はその言葉だけ呟き続けた。いやだ。あいつをもう一度殺したい。あいつだけは、死ぬまで覚えておきたい。
しかし、唐突に、テレビの電源を切るように。
俺の視界に、闇が降りた。
俺は、青葉葵を、忘れ……
起きた時、保健室に俺は居た。横に座っているのは女子。俺の知り合い。そして今、最も見たかった人。
「……死ぬ?」
楓紅葉。
俺は楓さんに手を握られていることに気付き、赤面する。
「あなた放課後、階段の踊り場で倒れて嘔吐したのよ」
それは俺だけですか?
「ううん。私も。というか、皆一斉に気を失ったらしいの。けど、あなたが一番重症」
俺はそうですか、と答えた。楓さんはまた来ると言って保健室から出て行った。
一人になった後、俺は首をひねる。
(……何か、殺し忘れてねぇか?)
でも、心当たりはない。
合計3人の文芸部。それが俺の部活。部長は古典オタク、俺は暇つぶし(DAIS工作員)、楓さんは一番まじめな詩人。
(……けど、)
何か殺し足りない。
この考えは正しいと思う。けど、なんだろう。この感覚。そう思いながら、俺は楓紅葉にまた殴られて倒れたのだった。
オマケ:とある少女の物語
私はデス○ートを書いた。彼が死んでくれれば幸いだ。
原稿はデス○ートと一緒に隠した。場所は、アルカイダの情報漏えい阻止のため書かない。
けど、これが世界を変える鍵。私の、世界を。
お願い。あなただけが頼り。この日記と、実写版トランスフォーマー並みにぐちゃぐちゃなデス○ートを見つけて。
そして、私を……
ここまでの死亡者 1024人
青葉葵の余命 -1日
どうでしょうか。
訳わからなかったでしょう?
それは、あなたが普通の人だからです。
これで、ゲラゲラ笑った人は、そう、アブナイ人です。
みんなもそんな人には気をつけてねW