初対面3 アスカ
久しぶりの投稿です。お待たせしてすみません。
「お前の婚約者が決まったぞ。」
朝食をとっている最中唐突にそう言われた。言ったのは目の前の男である。皇族特有の銀色の髪におばあ様....つまり皇太后譲りの黄色い瞳を持った男は、わたしの、父だ。
父は、皇帝だ。そして私は皇太子。どんなわがままも許されるわけではない。常に国民のことを考えて行動しろ。それが父上の口癖で、私はそれが当たり前だと思って過ごしてきた。
そう、自分には選択肢なんてないのだ。
「はい。」
そんな自分を母である皇后が心配そうに見つめている。母上は、遠い国から一人で嫁いできた。
そのせいか父上の様子をいつも窺うようにしている。世間では、恋愛婚だと言われている。なぜなら、あの初代皇帝が始めたとされるプロポーズをしたからだ。
ちなみに同い年の弟はというと、そんな様子も知らずにのんきに好物であるデザートのプディングをほおばっていた。
それから何日かしたころだろうか。謁見の間に呼ばれた。いよいよ婚約者に会うことになるのだと思うと少しだけ緊張した。父上の隣に並ぶように座ると、婚約者が入ってきた。聖女の装束に身を包んだ女の子でどこか緊張したような面持ちでこちらにやってくる。
ベールをかぶっており、表情がよく見えない。しかしベールの隙間から見える金髪の美しい髪をたなびかせていた。
そんな彼女に父上は、やさしく話しかけた。
それから私を紹介した。
彼女は丁寧にあいさつしてきた。そんな彼女を父上はやさしい目で見つめていた、成長した娘を見るかのようなそんな目で。見たことのない父上の表情に驚きながらも自分の婚約者であるトキのほうを見た。彼女も緊張しているのか軽く震えていた。
そしてエスコートした後気まずい雰囲気をぶち壊して唐突に言われた。
自分の婚約者ぐらい自分で決めたらいい、と。
そんなことができるわけがない。自分は皇帝になる身で、国のために身を粉にして働かなければいけない。そのためには家族だって利用する。それではいけないのか。
そう思って返答するとなおも彼女は答えた。
それで幸せ?
考えてもなかったので返答につまった。しかし、それを無視して彼女は言った。
「...........それ何が楽しいんですか。皇帝になるんですから、民のことを考えるのは当たり前です。でも、伴侶くらいは。一生隣にいるんですから、選んでも罰は当たりません。...........それに、私は殿方と結婚なんて....。」
それにのあとが聞こえにくく、聞き返したが、彼女は何事もなかったかのように微笑んで、小指を差し出して指切りをした。太陽のようなまぶしい笑顔だった。
彼女が帰っていったあと、私は彼女とつないだ指がなんだか恋しく見えた気がした。