初対面1
第一皇子というと、冷静で、似非の笑顔を浮かべる人で、お目通りした人は口をそろえて子供ではないと称することで有名だった。
男性(三次元)が嫌いなんですけど。二次元はかっこいいし好きなんだけどね。
恐怖症ということではない。ただ前世のクラスの男子が原因なのだ。偏見で申し訳ないが、男子と言うものはうるさく、それに暑苦しい。それから、信用できない。
これが私が、前世で恋もできず、男子が嫌いな理由。ただユリというわけではない。
恋をするのにしろ、男性(二次元)だから。
まぁとにかく、執事として、セイが共につきアレは、仕事が忙しく、来られなくなった。
謁見の間へと、案内され、立派な扉にはがっちり、装備している、騎士がならんでいる。こういうときに、ゲームの世界に入ったことを実感する。騎士が重そうな扉をいとも簡単にあけた。そして、私が中にはいたことを確認してまた、扉を閉めた。
「トキ・コーディー、ただいま参りました。」
そういって、聖女の服のスカートの部分を片手でつかみ、もう片方の手を胸に当て礼をした。
「面を上げて、もう少し近くに来なさい。」威厳があるが、優しく聞こえる声に、安心感が生まれる。
「かしこまりました。………お久しぶりでございます。陛下。」
「久しいな。ジーク。彼女はコーディー家の娘で、聖女に選ばれたトキ嬢だ。……………それから、トキ嬢、わたしの隣にいるのが息子だ。」
「初めまして、トキ・コーディー嬢。私は第一皇子、ジーク・ノア・アストラだ。よろしく頼む。」
子どもとは、思えないような完璧に作られた笑顔だ。しかし、そんな笑顔でも、ドキッとしてしまう。
「先ほど紹介賜りました。トキ・コーディーです。こちらこそ宜しくお願いいたします。」
ゲームで攻略してきた推しが目の前にいるそれだけで、緊張を覚える。
「う~む。どこから見ても絵になるなぁ。…後は、お若い二人で、散歩でも、してきたらどうかな?」
さっきの威厳はどこに行ったのか。のんきにそんなことを言い、陛下は腰を上げ、立ち去って行った。息子の恋愛事情を見て楽しんでる...。
ジークは、陛下が出ていくのを見送ると、私に手を差し出してきた。
「では、お手をどうぞ。トキ嬢。」
アレ以外の異性からのエスコートに、頬に熱が集まった。
「はい。」
顔を伏せつつ、そういうとジークは、ニコッと作り笑顔を浮かべつつゆっくりと、庭園に向かって行った。
その後ろのほうで、セイがニヤニヤしながらこちらを見ていることにも気が付かずに。