神殿と再会1
「明日、早速、神殿に行くぞ。娘が承諾してくれました。っと陛下と教皇様にも連絡しなければ。」忙しくなるぞと、こちらの意志を確認することもなく、お父様はそのまま立ち去った。
暇になって、ベッドでゴロゴロしているとコンコンとノックの音がして、メイドが言った。
「お嬢様。奥様とシャーロットお嬢様がいらっしゃております。」
「通しなさい。」
すると、常識を知らないのかお義母様と義妹はメイドの伝達を聞くことなく、そのまま入室してきた。イライラする。
「トキ元気にしてる?お義母様心配だったのよ。.........あのいたわしい顔をなさっている殿下に嫁ぐことになってしまうなんて。」
殿下は顔を見せないから、醜い顔って幼少期のときに噂されていたんだっけ。お義母さま、殿下はいたわしい顔なんてしていませんよ。むしろ、ゲームの攻略対象のなかでもすごい美貌の持ち主ですが?
なんて、言えるわけがなく。
「いえ、お義母様が心配なさることは何もないです。」
と返した。
なんてったってイケメンなんだもんね肝心の殿下が。
ただ、私が死なないためには、婚約破棄も絶対条件。長く続いても、ゲームのエンディングの年、つまり魔法学園の4年になるまでに婚約破棄と聖女のクビを穏便とこの家からの脱出を果たさなければならない。
「へぇ~。そう。おねぇさま頑張ってくださいねぇ。」
おほほほほほほほほほほほほほほほほと、高い声で笑いながら、去っていった。
本当に高笑いする人、私以外で初めて見たんだけど。
夢に見ていたはずの馬車にガタガタと揺られながら、私は大きくため息をついた。今私は、神殿に向かっている。
子供は親のものという法律のせいで、こっちは、親からの遺産を守るのにも必死だし、馬車にも同車することになってる.....。
ほんとイライラする。前世で、もっと勉強していたら、なにか変わっていただろうか?
窓の外に目を見やると、ほぼ同時にガタンと馬車が大きく揺れた。
「何事だ!侯爵であるこの私が乗っているのだぞ!!!」
と大声で、あいつが叫ぶ。それを聞いたあと、御者は馬車の扉を開け、恐縮したように、御者がかぶっていた帽子をとり、頭を下げた。
「も、申し訳ございません。急に子供が飛び出してきたもので。」
「子どもだと?.........切り捨てろ。」
はぁ~?鬼畜にもほどがある。貴族とはそういうものなのか。よくわからないが、とりあえず、人が死ぬのはよくない。
「お待ちください。ここでは、人々がみております。子供を保護するべきです。」
「では、あとで始末しよう。」
これ以上言い訳が出てこない。ぎゅっと手を握り、歯を食いしばる私に、唯一信頼できる侍女のエマが口を開いた。
「旦那様。それではいけません。聖女の家が子供を殺したことが、知られれば、醜聞ですし、聖女の自体にもなりかねません。ここは、保護して、お嬢様の従者にするべきかと。」
「うむ。おい。毛布を用意して、後ろの馬車にそいつをのせろ。」
「かしこまりました。」
なんとかなったことに、ほっとする。すると、アイツが私の肩を強くつかんだ。
「ッ!」
「お前も後ろに行って保護した子供の面倒見てこい。」
そういったアイツの顔はに歪んでいた。