ちんさくキレる!
キーンコーンカーンコーン♪
珍香桜が転校してきて初めての昼休み、彼女の席の周りにはすぐに人だかりが出来た。
「ちんさくさん、 何でこの学校にきたの?」 学級委員長の鈴木もあかがきいた。
「親の都合で……」
「ちんさくちゃん! 何でそんなに美人なの? 何を食べたらそんなに肌がきれいになるの?」 岡波路メロがきいた。
「うーん……水をたくさん飲むようにしてるから……かな……」
「ちんさくちゃん! 一緒に写真を撮ってもいいですか?」 今田久がきいた。
「それは事務所的にちょっと……」
「じゃあちんさくちゃんだけ撮ってもいい?」 古川ヨシオがきいた。
「それもちょっと……」
「すげえ! めっちゃカワイイ!」 丹翔が言った。
「ありがとう……」
「いい匂いがするよぉ~」 耳川実鈴が言った。
「ありが…」
「お人形さんみたいね!」「ちんさくちゃん!どんなプロテイン飲んでるの?」
「足のサイズいくつですか?」「ちんさくちゃん、握手してください!」「ちんさくさん! サインください!」
「ちょ…」
「シャンプー何使ってるの?」「俺の事どう思います?」「私ちんさくちゃんのインスタスタスみてました!」
「まっ…」
「諸星流くんとはまだ付き合ってるんですか?」「整形してないってホントですか?」
「俺のミーチューブチャンネルにゲスト出演してくれませんか?」「ちんさくちゃん、リップは何使ってるの?」
「総入れ歯って本当?」「ビンタしてもらってもいいですか?」「好きなアニメは何ですか?」
「最近テレビでみないけど何してたの?」「不倫が原因で干されたって本当?」
「もし無人島に何か一つだけ持っていくとしたら何にする?」「座右の銘は?」
ガタン!
ちんさくが勢いよく立ち上がった!
「おまえらそこに一列に並べーっ!! そして歯を食いしばれっ!!」
全身全霊で叫ぶちんさくのただならない様子にとまどうクラスメイト達。
「どうしたんだ、急に……」
「怒って、る?……」
「ちんさくちゃん……だいじょうぶ?……」 耳川が恐る恐るきくと
「いやあああああああああああーーー!!!」
ちんさくは奇声を発しながら頭をかきむしって教室を飛び出して行ってしまった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
キーンコーンカーンコーン♪
6時限目の授業が終わり、だら~んと椅子にもたれかかった丹翔が鼻の穴を人差し指でほじっている。
「ちんさくちゃん結局もどってこなかったなぁ~、どこまで行ったのかな~」
古川ヨシオが鞄に教科書をつめながら思い出してニヤニヤする。
「ちんさくちゃん可愛かったな~、やっぱ女優はかわいさのレベルが違うっていうかなんて言うか」
のんきに天井を見上げながら、もう片方の鼻の穴にも人差し指を入れて、ダブルで鼻をほじる丹翔。
「どうしちゃったのかな~、何か怒ってたよな? ちんさくちゃん」
「怒ってても可愛かったな~」
田中洋介が水筒の蓋にお茶を注ぎながら思い出してニヤニヤした。
そんな会話を最前列の席から聞いていた学級委員長の鈴木もあかが丹翔たちのほうを振り返って言った。
「あなたたちが失礼な事を言ったりするからでしょう」
「俺は言ってねえよ、可愛いって言っただけだし! 失礼なのはお前らだよ、お前ら全員」
丹翔がみんなを指さす。
「「「ええー」」」
「僕は何も言って無い!」 副学級委員長の長井紀央が席を立ち上がって興奮気味に否定する。
「転校生が教室を飛び出していったのってこれで2回目じゃん? ウチら初対面でいきなりグイグイいきすぎなんじゃね?」
手鏡とにらめっこしてヘアスタイルを気にしている岡波路メロが言った。
「そうかもな、次から気をつけようぜ!」
「うん!」(耳川) 「「おおーー!!」」 「気を付けるぜ!」(ヨシオ)
丹翔の一言にクラスのみんなも拳をあげて同意した。
「ま、新しく転校生がきたらの話だけどな、あははは!」
「「あはは!」」
「「あはははは!!」」
※ ※ ※ ※ ※ ※
一方、学校を飛び出した珍香桜は、近くのスタボコーヒーで深めに帽子をかぶりサングラスをして、
ギャラクティックレインボーペガサスフラペチーノにたっぷり盛られたホイップクリームをストローでつつきながら何やらぶつぶつ言っていた。
「あいつら……パンピー以下の下等生物のくせに……ちょっと親切に接してあげたら調子に乗りやがって……これだから下級国民のゴミどもは……」
ホイップに刺さっていた翼のような形の2枚のホワイトチョコを引き抜いてパリパリと食べながら、まだぶつぶつ言っている。
「……転校したら何もかも忘れて新しく始められるかもって期待した私もバカだ……世の中にはどんだけ良い人ぶっててもゲスとアホしかいないんだ……」




