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物語終了課  作者: lachs ヤケザケ 
ホワイトデーのお返しは、バレンタインデーでもらったもの以上を要求される
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第九十九話 ファッションセンスが皆無の人に、服がいいかどうか訊いてはいけない

 様々な系統の服が広いスペースに並べられている。小さな店舗が多くある都内とは違って、区切られてもなく、壮観な眺め。

 

 その中、続は「自分は壁です」といった風に立っていた。夏美が移動すると、気配を消してついてくる。

 SPを雇った覚えはない。


 中学生から大人になるまでの間の続を、夏美は知らない。再会してから、女性の噂も聞いていないので、どういう人が好みかもわからない。

 その前に「どの服がいいと思う?」と続に訊いても、わからないと答えるだろうとは思った。

 義母にもけなされるファッションセンスの持ち主で、私服がダサいことは知っている。

 

 そこで、色々なタイプの服を着てみて、どれがいいか訊くということにした。

 まずは、清楚系のファッション。

 白いとろみブラウスに空色のシンプルなフレアスカート。

 クロークから出てくると、続は壁から分離してゆるゆると頬を緩ませた。

 

「とても似合っている」


 店員も「とてもお似合いですよ」とスマイルを浮かべる。


 次はスポーティなファッション。

 ダメージジーンズに大き目の柄物Tシャツを着る。


「とてもいいと思う」

 

 続の表情に先程との差異はほとんどない。


 ふわふわでフェミニンな淡いピンク色のワンピース。 

 

「とても合っていると思う」


 にこにことしているものの、変化はない。


 別系統かと、原宿系のビビットなカラーでまとめたコーデ。セクシー路線でオフショルダーの肩見せ、ミニスカートのコーデもしてみたものの、同じ反応。


 もしかしたらと思い、レインボーカラーのズボンに蛍光紫色のブルゾン、サングラスを合わせる。

 壊滅的なファッションに店員ですらも声をくぐもらせたものの……。


「その服はとても合っているね」


 にっこりと変わらずに続は言った。

 ほっぺたをつねる。


「いいいいいいぃぃ」


 わからないにもほどがある。続は頬を押さえて目をぱちくりとさせた。


「今までの中でどれが一番良かった?」


 一応、一応訊いてみる。

 

「どれも似合っていると思う」

「一つ選ぶとしたら?」


 続は腕を組み、あーとかうーとかうなった後、

「一番最初の服かな」

 と言う。


「そう! どこが良かった?」

 やっと出た明確な答えに、夏美は顏をパッと明るくさせた。それを見て、続もまた微笑んだ。


「着回しが楽そう」


 もう一度、夏美は続のほっぺたをつまみねじった。


「いいいいいい」




 という一幕があったものの、一番最初の服を続に買ってもらった。

 荷物は持つという続の声かけも断って、服が入った紙袋を大切に持つ。顏がほころんでいるのが自分でもわかる。


「せっかくアウトレットに来たのだから、続の服も買ったらいいじゃない。選んであげるわよ」


 だぼっとしてサイズが合わず、ごちゃごちゃした色が続の私服の駄目なところだ。

 ちゃんと体に合わせ、落ち着いた色に統一すれば、普通になる。

 夏美はグレーのズボンとネイビーのシャツを続に持たせる。


「こういう色味はスーツっぽくて……」

「迷彩色とか明るい色よりこっちの方がいいの。ね、着てみて」


 いまいちのり気じゃない続を、夏美はクロークに押し入れた。

 前から知っていたことだけれど、続は押しとお願いに弱い。


「うーん。どうなんだろう」


 弱気な声を出して、続がのっそりとクロークから出てきた。

 普段の私服からは見違えるくらいのいい出来。


「うん。かっこいい」

「ああ、ありがと。じゃあ」


 そそくさとクロークにリターンしようとする続の腕をとる。


「買おうね」

「ああ、うん」


 と、きちんとした服装になった続が急にモテ始めるじゃないかという考えが、夏美の脳裏によぎった。


「それは部屋着用ね」

 圧をかける。

「これは部屋着」

 コクコクと続が頷く。



 店員は「部屋着なの!? サメのトレーナーの方が部屋着じゃない!」と心の内で叫んだが、できる店員だったので声には出さなかった。



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