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物語終了課  作者: lachs ヤケザケ 
敵が味方になると弱くなるが、味方が敵になると厄介
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第七十三話 モブは魔王に恐れおののく

 上より予定を早めろとのことだった。同じ仕事を請け負った奴らが重傷を負ったり、連絡が取れなくなったらしい。


「けっ、大したことない連中だな」


 リーダーが言うことに二人の男は同意した。

 

「全身真っ黒でネクタイだけ赤い男に注意しろだとよ。そんなのどこにでもいるだろ」


 聞いている限り一人だ。こちらは三人。負けるはずがない。

 それに一番肝心なところを任されている。区役所の制圧とゲーム開始の宣言。一帯は無法地帯となる。警察は機能しない。何をしても咎められない。

 

 楽しいことになる。

 リーダーたる男は笑った。法と秩序で雁字搦めのクソみたいな日常におさらばだ。

 


 堂々と正面玄関から区役所に入っていく。

 銃を見とがめた警備員が警告を発して、下がっていく。警棒しか持たされない彼らは敵ではない。

 圧倒的に有利な状況に、口の端が歪んだ。銃を構える。


 ―パキッ


 植木鉢が隣の男の頭に降ってきた。陶器は割れ、こぼれたサボテンの針が倒れた男の上着に突き刺さる。


「はっ」


 そちらを向いた瞬間に、もう一人の仲間の下顎めがけて、足が飛ぶ。まるで格闘ゲームのように体が吹っ飛び、動かなくなった。

 銃を向けようとした手首を捻られ、落としてしまう。

 一連のことが、ほんの短時間で行われた。

 少し前まで、気配も音も殺気もなかった。気づけば、銃を突きつけられていた。


「全身真っ黒で赤いネクタイの男……」


 的確な表現だと絶望的に思う。

 上から下まで葬式に参列しているのかと思うくらいの漆黒で、シャツまで黒い。ただネクタイだけが鮮やかに赤い。


「うむ。植木鉢で殴打しても死なないとは、丈夫過ぎるな。人じゃないだけある」

「はあ?」


(何を言っているんだコイツは)


 言葉は理解できるのに、異星人と話しているかのような違和感に背中がざわつく。

 黒い男は地面に結束バンドの束を落とした。


「君には人質の手首と足首をこれで縛ってもらう」


 周りの人々は気配を押し殺すようにしている。怯えが伝わってくる。

 長年の経験からわかる、コイツは人を殺すことに罪悪感を覚えないタイプだ。それどころか……。


「ああ。反応が人らしいな。よくできている」


 目は子供のように純真でありながら、人の良さそうな笑みを浮かべながら、コイツは人を命あるものと思っていない。

 籠の中の虫、水槽の中の魚を見つめるように、いや、ロボットが人のように歩いた時、受け答えした時のように、『よくできている』という感想。

 そう直感した時、今まで感じたことのない恐怖が全身を襲った。

 毛穴という毛穴から汗が噴き出てくる。


「あ、あのもし、従わなければ」


 口の中がカラカラに乾く。舌が張りつくような感覚がする。


「そうだな。そうだ、君は頸動脈を切られたら、さすがに死ぬかな。試してみようと思うのだが」


 そう黒い男はくったくのない笑みを浮かべた。


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