第七十一話 魔王は暴れる
馬鹿げたことを起こそうとしている。
普通に暮らしている人々が人を殺すように仕向けるのだという。平和な日常を変えるには劇的なパフォーマンスが必要だ。
人を殺さなければ、殺されるということを恐怖をもって知らしめなければならない。
金で雇われた身だが、白昼堂々と目立つように殺すというのは普段の仕事と逆だ。
男は、腰に下げた銃を服の上から確かめる。
人が多いところがいい。
今の時間帯なら、学校かスーパーか。
男は猫背になりながら、歩いていく。
と、タイヤが擦れる高い音がする。思わず、音のする方を振り返るとバイクが眼前に迫っていた。
衝撃と共に、体が浮いた―――。
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「お、銃だ。ビンゴ」
都道はバイクで跳ねた男の服を調べ、銃を奪ってご満悦であった。
主人公を殺すのに武器が必要だ。銃が好ましいが、それ以外でもあって困ることはない。
『主人公補正』で主人公というのは、銃が命中しにくいうえに死に難いらしい。ならば、それを上回る火力が必要だ。
銃はあと7発しかないトカレフ一丁だけ。休暇中の身で、警察の銃を持ってくるわけにもいかなかった。
そこで都道が考えたのが、物語世界での現地調達である。
自身のスマホに物語の文章を入れ、『武器』や『ナイフ』、『銃』といった単語で検索する。
引っかかった前後等の文章から、相手の特徴と位置を推察する。現地の地図も買った。
あとは、ぶちのめすのみ。
結果的に、物語世界の多くの人を救うことになるのだが、都道はただ武器が欲しかっただけである。




