第五十五話 レベル1では何の役にも立たない
嫌な予感はしていた。
都道が作ったキャラクターである。
ネットカフェへ行き、VRMMO専用マシンに必要情報を打ち込み終わった時にキャラクターの情報が画面に出ていた。
キツネの耳に尻尾、赤いチャイナドレスでナイスバディの女性。
「ふざけんな!」
飛び出た声は凛とした女性の声だった。
本間 続はケモ耳女性になっていた。プレイヤーとキャラの性別が一致すべきとは思わないが、男でやりたかった。
(帰りたい)
即行、帰りたい。
木漏れ日が射しており、景観的にはとてもいい森であり、お散歩したいほどの陽気ではあるが。
帰りたい。
ちょっと遠くにスライムも見え、木のモンスターらしきものがドタドタと行ったり来たりしている。
帰りたい。
自分の手には白木の杖があり、杖の先には青い宝石の原石のようなものが付いている。おそらく、魔法使いという役割なのだろう。
だがしかし、帰りたい。
左端に四角い画面が表示されていて、体力ゲージを示しているバーが見えた。HPと書いてある。106しかない。更に上にレベルが1と書かれていた。どうしろと。
レベル1でどうしろと。
(都道め、物語の暴走をなんとかするという目的じゃなく、ただ単に恥ずかしめるために俺を呼んだだろ!)
タシタシと音が聞こえる。
本間は周りを見渡したが、特に何もない。
(その手には乗らん。都道に会わずに現実世界に帰ってやる!)
タシタシとまた音が聞こえる。
ん?と後ろを見ると、自分の尻尾が地面を叩いていた。
(尾―!!)
思わず尾っぽを抱える。パンを焼いたようなこんがりとした小麦色。尾の先だけが白い。
クセになりそうな手触り感のある毛が手のひらに触れた。
キツネの毛はコートやマフラーになるくらいである。それはいいだろう。
自分のでなければ。
(ちくしょう)
ちょうど足元にあった石を蹴っ飛ばす。
石は先程から動いていた木のモンスターにコツンと当たった。
「あ」
わっさわっさと木の実を落として、木のモンスターは臨戦体勢になった。モンスターの下の方に体力ゲージとレベルが見える。
レベル10と表示されていた。
(あああああああ!!)




