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物語終了課  作者: lachs ヤケザケ 
完結は歩いてこない、だ~けどゾンビはくるんだね
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第三十四話 ゾンビに襲われた時に行く場所

 すでにゾンビに蹂躙され尽くした後なのか、人っ子ひとり見当たらず、道路を走っている車も他にいない。

 本間はラジオを聞こうとしたが、どのチャンネルにも引っかからなかった。


(情報が少なすぎる。総当たりでゾンビに効きそうなものを書いていくか)

 それには安心して書ける場所と、もしものための武器が必要だ。

 都道が最初から用意している弾にも限りがある。

 車が最悪なところで止まる可能性がある以上、安全圏まで走るというのは甘い考えだ。

(ホラーだしな)

 

 本間は自分の知識の中のゾンビものを思い浮かべた。

「ゾンビに襲われた際に行く場所は、ホームセンターもしくはショッピングモール」

「アメリカならな」

 都道はそう返した。

「アメリカのホームセンターやショッピングモールなら、銃と弾が入手できる。だが、看板を見る限り舞台は日本だ」


「じゃあ、警察署か」

「警察署に行こう」

 至極当然というように、本間と都道は言葉を交わす。


 都道は遠足に行く前の子供のようにワクワクとした表情だ。

「警察署で十分な銃弾を手に入れたら、自衛隊を襲って自動小銃を手に入れ、米軍を襲う。あれだ。ゾンビ発生の原因は米軍の実験とかだろ。だいたい、米軍かナチスの残党が悪者だろ。それか製薬会社」

「それはそうだが。米軍を襲撃とか俺はやらんからな」

「えー」

(なにがえー、だ)

 超人でも、ターミネーターでもあるまいし。



 物語世界の地理はわからなかったが、道路の看板をたよりに警察署を見つけ車から降りる。

 待ってましたとばかりに、ゾンビがビルの影や道から出てきた。

 玄関の自動ドアを三人通ったことを確認し、動く扉の横のメンテナンス用の電源スイッチをオフにして、下部にある錠前をかける。


 ゾンビは扉に向かって頭突きをしたり、体当たりしてはいるが、ヒビすらつけることができないようだった。


「バリケードを張って、二階か三階にいって、防火扉を下す。時間稼ぎしている間にどうにかする」

 プランとしては悪くないはずだ。


「なんとかするってなんだよ」

 覆面男が当然の疑問を呈する。

「まあ、なんとかだよ」

 正確には物語を終わらせることだが、一般人には言えない。


 

 警察署内の机や椅子やらを玄関前に置いていく。

 その間に引っかかっていたことを本間は男に訊いた。

「その覆面はなんだ?」

 男は右往左往するのに、助け船を出したのは都道だった。

「まあまあまあ。このチンピラは恥ずかしがり屋なのだよ。なあ、チンピラ君」

 男はヘッドバンキングさながらに激しく首を縦に振る。


 本間はなおも納得しかねていたが、

「チンピラ君に構うより、ゾンビをどうするかだ」

 との都道の正論に顔をしかめながら頷いた。


「バリケードを張っても、玄関にゾンビが集中し過ぎている」

 死んでいるだけに、ゾンビは疲れを知らない。もう少し持つかと思っていたが、ひっきりなしの頭突きと体当たりでそうは安心できなくなってきた。


「分散させればいいだろ」

 事も無げに都道が言うが。

「どうやって?」 

「エサを別のところに吊り下げれば良いのだよ」

「エサ?」

 本間は首をひねる。


「エサ」 

 都道の視線の先には、チンピラがいた。 


 

****



「テメェえええらぁぁあぁ!! 覚えてろヨォォォ!!」


 ミノムシのごとく、縄でぐるぐる巻きにされて屋上から吊るされたチンピラが声の限り叫ぶ。もがいているためか、風もないのに揺れていた。

 その下をゾンビが天国からの糸を求めるように集まり、手を伸ばしてうごめいている。


「俺は何もやってないぞおお! 一緒にするなあ、チンピラぁぁ!」

 手でメガホンを作り、下へと本間は大声を出した。


「ジタバタすると、縄が抜けて落ちるぞチンピラぁぁ!」

 都道があんまりなアドバイスをする。


「チンピラ、チンピラうるせえ! オレにも名前があるぞ!」

 

「お名前、どうぞー!」

 都道はテレビの司会者のごとく明るくおどける。


「オレの名前は、オレの名前はだなあ!き」

 名前を言いかけたチンピラだったが、自分が強盗をしようとしていたことに気づいて、

「やっぱり、チンピラでぇす!」

 と言い直した。


「そうか、君の名前はキンピラなのだね!」

 

「食べ物じゃねえぇぇ!」



 偽名を言えばいいということに頭が回らない時点で、チンピラはアホであった。  


  

****



 本間は頭に手をやる。

「都道」

「オウ?」

「人間に戻らないと水族館に売り飛ばすぞ」

「おう」


 本間は深くため息をついた。

「都道、ちょっと。いや、ちょっとばかりでなくやりすぎ」

「これで本間君も心置きなく文章をかけるだろう。それにな、見ろ」

 都道はスーツの背広を開いて、銃を取り出して見せる。

「銃? それが?」

 警察である都道が銃を持っているところで、何がという気がする。


「参考にこちらが警察の使っている銃」

 と都道は両方の手のひらに銃をのせる。

 よく見ると全体の形が違う気がする。 


「こっちは警察の銃じゃない?」

「トカレフだよ。あのチンピラが持ってた」

 トカレフ。小説でも暴力団が使うことで有名な拳銃。


「……。それで、覆面。都道、早めに言ってくれ」

 本間はため息をつく。ため息つきっぱなしで幸せが逃げてるような気がしないでもない。 


「まあまあ。それより本間君、見て見て二丁拳銃」

 都道は映画俳優さながらに銃を両手に構え、ぐるぐると回転させた。手並みは西部劇のごとく華麗だが、目は子供がおもちゃをもらったようにキラキラしている。

 

「お前が楽しそうで、俺もとても嬉しいよ」

 若干、棒読み気味に本間は呟いた。


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