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物語終了課  作者: lachs ヤケザケ 
完結は歩いてこない、だ~けどゾンビはくるんだね
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第三十二話 完結は歩いてこない、だ~けどゾンビはくるんだね

 その男はお金に困っていた。

 なので、手っ取り早くお金を手に入れることにした。

 つまり、銀行強盗である。


 本物の銃を入手したその男は気が大きくなっていた。なんでもできるような力を手にした気分になっていたのだった。

 

 目出し帽を被り、銀行に入っていく。

 顔を隠した男は懐から銃を取り出し、脅しのために天井を撃とうとした。


 ―りーん


 場違いな鈴の音が響く。

 一陣の風が吹いて、男の周囲を洪水のような文字が取り囲む。それが反転したかと思うと世界が変わった。


 男にとって不幸だったのは、銀行の金庫に預けられていた未完の映画の脚本を取りに来たのが都道と本間であったこと。本間だけであったなら、まだましだっただろう。

 脚本の内容がゾンビものだったこと。

 その未完の暴走に居合わせてしまったことだった。



【完結は歩いてこない、だ~けどゾンビはくるんだね】

 


「とどぉ――!!」


 本間は叱責を込めて叫んだ。

(一般人を巻き込みやがった!)


 本間からはその男の銃は見えてなかったため、都道がわざと物語の暴走に引き込むために男に触れたように見えたのである。


「私はトドでもオタリアでもアシカでもないぞ。鼻先でボールをキャッチできたり、バウンドさせたり、輪くぐりできるけど、トドでもオタリアでもアシカでもないぞ。オウオウオウ」


「しゃーしぃわぁ――!!」

 

 そうやり取りしながらも、都道はゾンビに確実にヘッドショットを決めていき、本間は近くまで来てしまったゾンビを刀でなぎ倒していく。

 廊下のそこここから、わらわらと虫のようにゾンビが出てくる。

 青白い肌に生気のない目、ところどころ飛び散った赤い血、捻りのないスタンダードなゾンビさん達である。

 ある程度大きな建物の中だとのことはわかるが、それ以外はわからない。


「都道、外に出て車を探すぞ! 武器調達と現状把握しないと」


「楽しいね。ピストル撃ち放題だし、何より弾を数えなくていい。素晴らしいね」


「良かったなあ。このトリガーハッピーめえええ!」


(こちらはそれどころじゃない)

 物語補正のためか、日本刀の切れ味は劣ることがないが、斬るのは骨が折れる。

 幸いなのは、ゾンビが人型でありながらグロテスクで人と感じさせないことだ。


「こういうの週に一回くらいはやりたいね。リアルバイオハザード」


「やりたかないわぁ! 多いわあ!」


(人生に一回でいい。いや、一回もいらない)

 本間は毒づきながら、ゾンビの胴体を真っ二つにする。

 悔しいが、有り難いことに都道の射撃の腕がいいおかげで、負担が少ない。現実でも物語補正と主人公補正がダブルで掛かっているような男である。銃は確実に当たる。チートとも言う。


「そっちの課に入りたくなってきた」


「おい、やめろ。それだけは、やめろ!」


 絶対に物語を終了させるのではなく、暴走させて自分が楽しむようにする未来しか見えない。地獄だ。



 そうこうするうちに、ゾンビの波が落ち着く。

 怒涛の展開に茫然自失状態だった覆面の男は、二人に向かって言った。

「なんなんだテメェら」


 都道と本間は一瞬、顔を見合わせて答える。

『公務員』


「そんな公務員いてたまるかよおおおおお!!」



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